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『アイカツ!』の氷上スミレに見る美人の演出について(2020/3/24 24話分追加)

101話で星宮いちごとその仲間達を中心としたアイドル活動に一旦のピリオドを打つことになった『アイカツ!』。102話からは三年目ということになり、二期の後半から登場し、二期最終話に当たる101話で先輩達の応援を背に受けて見事なライブをやり遂げた大空あかりが主人公となった新たな『アイカツ!』がスタート。星宮いちごを天才型とするなら大空あかりは努力型。自分の中に眠る可能性の光を信じて努力し続ける彼女のアイドル活動は、星宮いちごと同じ道を歩んだとしても、星宮いちごが歩んだそれとは全く違う印象を残す事になるだろう。それは星宮いちごの後継者ではなく、大空あかりというアイドルの輝きになるに違いない。

さて、そんな『アイカツ!』三年目の第一話となる102話は「誰かが勝てば誰かが負ける」という残酷な芸能界の構図を目撃し、知らず知らずのうちに一人でいることを選択してしまっていた氷上スミレが大空あかりとの出会い、共にオーディションへ向けてアイカツすることで、「一緒にアイカツをすることの楽しさ」と「アイカツをする仲間と出会えた喜び」を知って変化していくまでが描かれた。星宮いちごの二年間の物語ではその辺りは割りとすんなり解消されていた問題であり、大空あかりが主人公になったからこそ触れられた話しであり、『アイカツ!』という作品の中でも外れない一話だと思うのだが、個人的にこの102話で外せないのは氷上スミレの美人描写だ。
作中において氷上スミレは美人と評されているのだが、この氷上スミレの美人描写の徹底っぷりったるや、「美人」というものの演出技法のお手本として教科書に載せたいぐらいに素晴らしい美人描写なのだ。
「美人に見えるようなキャラクターデザインになっている」ということもさることながら、氷上スミレの美人描写において大事なのはとにかく氷上スミレは仕草の一つ一つが美人に見えるように描かれている。
例えばOPだと最後の画面の向こう側へと手を伸ばすカットがわかりやすいだろう。

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両手を広げて前に突き出す大空あかりやどこか凛々しさを感じさせるような手の広げ方をしている新条ひなきに対して、氷上スミレのそれはどことなく謙虚さを感じさせるのだが、その謙虚さに対して表情は微笑んでいることで彼女の「同性ですら見惚れてしまうほどの美人」というキャラクター性はこの一カット、画面の向こう側へと伸ばすそのポージングからも伝わってくる。

本編では氷上スミレと再会した時のカットは彼女の美人さの演出としてわかりやすいだろう。
このカットは大空あかりの主観で描かれたものだが、わざわざエフェクトが発生させることで、大空あかりにとって氷上スミレとはこのようなエフェクトが発生してしまうほどの美人だということがよく分かる。同性である大空あかりにすら、「微笑むだけで輝きが発生するほどの美人」として見えているのだ。

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これの間接的表現がアバンタイトルや次のカットで描かれる氷上スミレに見惚れてしまう大空あかりで、大空あかりが氷上スミレを見て見惚れる事で、氷上スミレの持つ美人さが作中の人物ですら「思わず見惚れてしまうほどのものである」ということが伝わる。

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特にアバンタイトルのものは大空あかりの反応を先に出しておくことで、視聴者に氷上スミレの美人さを想像させる意味も持たされている。このアバンタイトルで見惚れる大空あかりがいたからこそ、本編において氷上スミレが「氷上スミレ」として紹介されながら登場した時に、その美人さはより説得力を持つのである。

また仕草としては新しいスクールドレスを受け取った時の、カードの持ち方からもその美人さはよく分かるのだが、個人的には「私、紅茶入れようかなって。飲む?」の首を少し傾げる仕草が熱い。

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あまり感情が表に出てこないキャラクター立てで、「氷の華」と周囲から呼ばれているキャラだからこそ、ちょっとした仕草のこだわりは彼女のキャラクター性として現れてくる。だからこそのこの「尋ねるときに少し首を傾げる」という僅かな動きが、彼女のキャラクター性を強く表すのだが、大きな振りではなく優雅さを感じさせる動きだからこそ、彼女の動きは美しさとして見事にハマる。
紅茶を飲む時のティーカップの持ち方も大空あかりと比較してみると、「同性が見惚れるほどの美人」というキャラクター性を持つ氷上スミレのらしさが現れていて非常に美しい。

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また「美人だね」と褒められた時に「ありがとう」といえる辺りも彼女のこの美人さが現れていると言えるが、個人レッスンに遅れそうでもこの仕草だ。優雅すぎる。

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レッスンを終えて戻ってきた時のこの髪の動きは何気ない部分だが、氷上スミレの美人演出においても地味だが熱いところだろう。髪の房だけでなく、髪を一本一本動かすことで情報量を底上げすることで、この何気ない動きの中で彼女の美人さを感じさせる。

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そして『アイカツ!』における見せ場の一つであるライブパートでもそのあたりは徹底されていて素晴らしい。

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大空あかりが力いっぱい大きな振付で踊っているのに対して、氷上スミレは大空あかりと比べるといささか控えめな表現になっている。
また笑顔も大空あかりが満面の笑顔なら、氷上スミレは「微笑む」という表現になっているのも面白いところで、「氷の華」である氷上スミレらしい美しさだ。

設定や台詞だけならばいくらでも「美人」ということは書けるだろう。しかしそれを見ている人に「このキャラクターは美人である」と感じさせるのは難しい。キャラクターデザインだけではなく、仕草でもその美人さを表現しなければならないし、その美人さは「どのような美人なのか」に至るまでスタッフの中で共有されていなければならないからだ。
この102話の中で氷上スミレが仕草の一つ一つでその美人さを感じさせるように描かれているのだが、おそらくスタッフの中でも「氷上スミレは優雅かつ美人に見えるような仕草をするキャラクター」という見解が共有されているのだろうし、CGチームの中でも氷上スミレの表現には非常に気が使われている。出なければ「微笑む」という表情を笑顔の表現として使用しないのではないだろうか。
氷上スミレの美人さはスタッフの中で「氷上スミレの美人さ」が共有されているからこそ生まれるものだ。
ここまで徹底されているからこそ、氷上スミレはこうして「同性が見惚れるほどの美人」として視聴者に愛されるキャラクターとして鮮烈なデビューを飾ることが出来たのである。


(追記:2019/11/03)

『アイカツオンパレード!』五話にて姫石らきが氷上スミレに見惚れるシーンを確認した。

氷上スミレ

氷上スミレ_らき

「褒められ慣れているのか、他人に褒められても動じずに柔らかく少し微笑んだ仕草を見せる」「キラキラのエフェクト」「その姿を見た人は同性でも見惚れてしまう」。
わずか二秒ほどの短い時間の中に美少女だと感じさせる表現が3つも詰め込まれている。
こうした描写にファンとしては「氷上スミレの演出の基本が忘れられていない」と涙を流してしまうわけだが、地味に重要なのはこのシーンで氷上スミレに見惚れるのが姫石らきということだ。
アイカツフレンズ!世界からアイカツ!世界へとやってきた姫石らきは言ってしまえば「異世界からの来訪者」。
そのことを考えるとこう見る事もできまいか。
「異世界人でも理解できるほど氷上スミレは美少女だ」と。

早くリリエンヌとアリシア・シャーロットとトリオライブをやってください。

(追記:2020年1月25日)

ようやくアリシア様が本格的に参加したが、こちらも「美少女」として演出されていた。

アリシア美人2

アリシア美人

キラキラエフェクトは色合いを調整しているのか、氷上スミレと比較すると若干寒色寄り。落ち着いた雰囲気が出ていて「雪の国の王女」であることを意識させる。

あと睫毛が細かい。

アリシア睫毛

ここだけでも最高だが、今回は姫石らきがソルベット王国の童話に登場する妖精の王女を演じるためか、通常では見られなかったキラキラエフェクトを込みした美少女演出が見られた。

らき美人2

らき美人

うっすらとチークも入っている。
グレースはいつものらきとは全く違うキャラクターであるが、だからこそこういう「いつもはやらない演出」が生きてくるのではないか。
そう思わずにはいられなかった。

(追記:2020/03/24)

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一カットに「同性ですら見惚れる」「エフェクトが付く」という二重の美少女演出を詰め込まれるアリシア・シャーロットとは。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。