見出し画像

USインディーの雄、デスキャブことDeath Cab for Cutie特集

 今回は、インディーロックシーンを飛び出し、全米を制した実力派バンド、"デスキャブ"ことDeath Cab for Cutieの音楽をまだ聴いたことがないという方へ、入門となるような記事を書いていきたいと思います。

■デスキャブの魅力とは

①稀代のソングライター、ベン・ギバード
 フロントマンのベンジャミン・ギバード(通称:ベン)が紡ぎ出す、親しみやすい普遍的なメロディは、人々の心をグッと掴んで離しません。そしてそれを、切なくも優しい歌声で届けてくれます。素朴な人柄ながら大きな存在感を放つ、バンドの顔です。

②緻密なサウンドプロダクション
 耳に心地よく響くよう緻密に計算され尽くした、繊細で煌びやかなサウンドプロダクション。これについては、2014年にバンドを脱退した、元ギタリスト兼プロデューサーのクリス・ウォラが築き上げた基盤があってこそです。

③強靭かつタイトなリズム隊
 デスキャブの音楽の主役は、普遍的なメロディと、繊細なサウンドプロダクション。そしてそれらを影で支えているのが、強靭かつタイトなリズム隊です。作品でも十分に味わうことが出来ますが、これは是非liveで体感して頂きたい部分ですね。

まとめ
 デスキャブは、その普遍的な歌心によって大衆性を獲得しつつ、緻密なサウンドメイクによって耳の肥えたリスナー達の支持までも勝ち取り、USインディーの枠を超えて世界的ロックバンドへと駆け上がったのです。その確かな実力を、是非ともより多くの方に確かめて頂きたい!

■プロフィール/経歴

 活動拠点:アメリカ🇺🇸 (シアトル)
 活動期間:1997年〜現在
 ジャンル:インディーロック
      オルタナティブロック

 1997年、ワシントン州べリングハムにて結成。

画像1

ベン・ギバード(ボーカル/ギター) 左2
クリス・ウォラ(ギター) 右2 ※14年脱退
ニック・ハーマー(ベース) 左1
ジェイソン・マックガー(ドラム) 右1 ※03年加入

 1998年、記念すべきデビュー作『Something About Airplanes』をリリース。次作以降と比較するとまだ荒々しさがありますが、既に優れたポップセンスの片鱗を見せつける内容。

画像2

 2000年、2ndアルバム『We Have the Facts and We're Voting Yes』をリリース。前作からの着実な成長を見せ、インディーファンの間で急速に人気を獲得していきます。

画像3

 2001年、3rdアルバム『The Photo Album』をリリース。アグレッシブなバンドサウンドと、ポップなメロディに更に磨きをかけ、インディーロックシーンにおける確固たる地位を確立していきました。

画像4

 2003年、インディーズ期最後となる4thアルバム『Transatlanticism』をリリース。遠距離恋愛をテーマにしたコンセプトアルバムとなっており、素朴さと壮大さを兼ね備えたサウンドを展開。2000年代のUSインディーを代表する名盤となりました。

画像5

 翌2004年、『Transatlantisism』が高く評価され、メジャーレーベル「アトランティック・レコーズ」と契約を交わします。

 2005年、メジャーデビューとなる5thアルバム『Plans』をリリース。サウンドプロダクションが格段に進化し、煌びやかで上質なポップソングの数々を展開。ライブでも人気の代表曲が目白押しとなった本作は、全米チャートで4位を記録し、グラミー賞のオルタナティブ部門にもノミネートされるなど、大きな成功を収めました。

画像6

 2008年、6thアルバム『Narrow Stairs』をリリース。緻密なサウンドプロダクションはそのままに、強靭かつタイトなリズム隊をより前面に押し出したロック・サウンドを展開し、ついに全米チャート1位を獲得します。また、前作に続きグラミー賞にもノミネートされました。

画像7

 2011年、7thアルバム『Codes and Keys』をリリース。これまでのギターロックに代わり、シンセやキーボードを中心に据えたサウンドを展開し、全米チャート3位を記録しました。

画像8

 2014年、ギタリストでありバンドの頭脳・司令塔としてサウンドプロダクションを手掛けてきた重要人物、クリス・ウォラが脱退

 2015年、8thアルバム『Kintsugi』をリリース。リリースのタイミング的にはクリス・ウォラ脱退後ではありますが、本作までは制作に関わっています。アルバムタイトルは、割れた陶器を修復し、より一層の美しさを引き出す日本の伝統的技法「金継ぎ」に由来しており、クリスの脱退を受け止め、更に進化しようというバンドの意志が示されています。

画像9

 2016年、クリス脱退後からツアーメンバーとして参加していたギタリストのデイヴ・デッパーと、キーボードのザック・レイが正式加入し、5人体制に。

画像10

デイヴ・デッパー(ギター) 左2
ザック・レイ(キーボード) 右1

 2018年、9thアルバム『Thank You For Today』をリリース。インディー期を彷彿とさせるような素朴で優しいサウンドに、程よくメジャー期のサウンドメイクが施された、絶妙なバランス感が魅力の作品となった。

画像11

■勝手に全アルバム格付け

 ※あくまで私個人の独断と偏見です。
 ※どの作品から聴き進めるかの参考にして頂ければ幸いです。

画像12

画像13

 ""に3枚選出しましたが、その中でも特に推したいのはインディーズ期最後のアルバム『Transatlanticism』です。本作はソングライティングの良さが圧倒的で、ダイナミックなロックナンバーから壮大なバラードまで、バラエティに富んだ美しき傑作です。

 ""の2枚目は『Plans』。この作品を漢字一文字で表すとしたら""。バンド史上最も緻密で繊細なサウンドプロダクションがなされており、煌びやかで上質な音楽体験を与えてくれます。また本作にはライブでの人気が高い定番曲が目白押しという点でも必聴の一枚です。

 ""の3枚目は『Narrow Stairs』。「Plans」が"静"なら、本作は""。あくまでサウンドプロダクションの緻密さにはこだわりつつ、強靭かつタイトなリズム隊をより前面に押し出した、ロックバンドとしてのデスキャブを示した作品と言えるでしょう。

 ""には『The Photo Album』を推します。演奏のアグレッシブさでは一番かもしれません。サウンドメイクの面でまだ発展途上の感はありますが、それを補って余りあるソングライティングの良さが光る作品です。

 ""にも3枚を選出。1枚目は『Codes and Keys』。サウンドプロダクションの面では「Plans」に次ぐ繊細さだと思います。ただし、ソングライティング面では今ひとつメロディックさで目立てていない作品かと。

 2枚目は2ndアルバムの『We Have the Facts and We're Voting Yes』。まだ荒削りな面もありながら、メロディの良さとインディーロック然としたバンドサウンドが光る好盤です。

 3枚目は目下のところの最新作『Thank You For Today』。全体的に大人しい作品で、どちらかと言えば地味ではあるのですが、程よくカラフルな音像が聴いていて心地よく、気がつけば印象に残っている・・・そんな楽曲が多く収録されている作品なのかなと思います。

 ""には『Kintsugi』。この位置にするのは少々勇気が要りました。というのも、悪い点は全く無い作品なんです。サウンドは繊細だし、印象的なギターフレーズもあるし、ソングライティングも悪くない。ただ、作品全体として「ここ!」という絶対的アピールポイントが個人的に見出せなかった。そんな理由から、苦渋の末に1ランク落としています。

 ""には、デビュー作の『Something About Airplanes』。これは結構すんなり決まりましたね。中毒性のあるポップセンスの片鱗を見せてはいるんですけど、次作以降と比較してしまうとやはりどうしてもこの位置に。実験的要素も強く、奇妙な世界観に思わず「?」となる場面も。

■名曲紹介

 "Soul Meets Body"
 繊細さとアグレッシブさを兼ね備えた、ライブで盛り上がる定番曲。

 "Transatlanticism"
 約8分間にも及ぶ感動の名曲。ライブで一番最後に演奏するのが定番となっている。

■最後に

 もはや伝説となった、フジロック・フェスティバル2019 White Stageでの豪雨の中のパフォーマンスは圧巻でした。豪雨の影響で、予定していた曲数よりも減ってしまったのですが、それでも一生忘れられないくらいの最高のパフォーマンスを披露してくれました。

 どちらかと言うと静かなイメージを持たれがちなデスキャブですが、ライヴを見たらイメージ変わりますよ!リズム隊が本当にタイトな演奏をしますし、みんなアグレッシブで最高なんです。

 興味を持って頂けた方は、是非デスキャブの音楽に触れてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?