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アニメ「こいこい7」OPの話

 2020年6月30日、漫画家のもりしげ先生が亡くなられた。最初にこの話が目に入ったときは「もりしげ公式アカウント」(アカウント削除済)というできたばかりのアカウントによる発信だったことやしばしば目に入った奥様や秋田書店とのトラブルのあれこれもあったので信用していいものか迷ったのですが秋田書店からの訃報もありどうやら本当のようです。

訃報 もりしげ先生 | 秋田書店

 さて、私自身は「こいこい7」と「花右京メイド隊」のアニメは見ていたものの原作もかいつまむ程度でそれ以外の作品もさほど触れていないのでこの訃報でショックを受けるというのも少々筋違いのようにも思えるのだがやたらに精神にダメージを受けている。というのもアニメ「こいこい7」は自分にとって代表的な「アニメ」なのだ。

 前述の通りこいこい7原作は多少読んだことはあるものの結局はエログロ描写が多くアニメに比べてダークな雰囲気となっていてストーリーも全然違うというくらいの認識しかない。とはいえそう極端ではなくともアニメ化にあたってそれなりに改変が入るということ自体はそう珍しいことでもなかった。 あの頃のアニメ化といえば最終回で主人公が属する側が真逆になってたり、原作で味方になる穏やかな人が敵幹部だったり2期で隣にアニオリの転校生が引っ越してくるとかいろいろあったよね。がっこうぐらし!がこの時代にアニメ化されていたらギャグアニメになっていたかもしれない。

 そういう時期に10代を過ごした人間だったこともあってそういった改変マシマシのアニメとしてまさに原作を読んでいなくても分かる、半端に終わって「この続きは原作で…」という形にもならない「こいこい7」は(原作つき)アニメの代表格なのだ。
(こういう形で”アニメを見て原作を読みたくならない”こと自体はメディアミックスの観点やアニメ化で原作を宣伝するという意図からすればマズいことだがアニメ単体での作品の完成度を重視して考えるならばむしろかくあるべきなのではないかと思う。)

 そしてその中でも特に印象的なのがOPである。


メガロ!メガロ!

 そのOP曲が「SUPER LOVE」だ。いくつか音楽配信サービスやらDL販売サイトを探してみたもののCDしかないようで通販でCDを探してみたところAmazonに……定価より高いやんけ。
 というわけで試聴できるものも見当たらない。

 とりあえずバンダイチャンネルで第1話無料配信をしているので聞いたことがない、すぐ手元に音源がないという場合こちらでOPの分だけ確認してみてほしい。

 イントロから「メガロ!メガロ!」(正しくは「メガロ!メガラヴ!」)とシャウトというには気が抜けて、ユニゾンと呼ぶには大雑把な「姦しい」という言葉が似つかわしい殴りつけるような歌声が響く音楽にあわせ、おそらくパロディであろう、こいこい7の各メンバーが79年版サイボーグ009のように花札の絵柄をバックにそれぞれの個性として特徴をみせている映像となっている。

 Aメロではイントロのようなうるささは収まるもののテンションはそのままに始まる。アッパーな曲調と歌唱の姦しさについ意味の分からない曲だとか電波系とぶった切ってしまいがちだがこの曲の詞は恋愛を意識したテーマだ。そんな詞のなか映像のほうでは下校中というシチュエーションに敵役となる五光会のメンバーが登場する。下校中の主人公に襲い掛かるのだがそれに気づく間もなくこいこい7の面々が一瞬で撃退している。ここは主人公の日常がこいこい7によって護られているものであるということと、敵であっても作品としては基本的にコメディであるという五光会のメンバーの立ち位置も表現されている。なお、もう一人黒いセーラー服の「謎のキャラ」も隠れて登場するがここではそれほど重要ではない。
 そうそう、歌詞の「OH!NO!」に合わせてフキダシで「OH!NO!」と言いながらジタジタする東和野ミヤとこのOPで唯一パンモロしている屁糞蔓の君がチャーミングなんだ。

 BメロはAメロの1/3程度と短く曲としても詞としても「溜め」の空気が強く先に登場した黒いセーラ服の「謎のキャラ」が大写しになることやそこに合わせて因縁をにおわせるキャラクター達をオーバーラップさせる。一瞬ではあるが映るシーンを作ることで特別なキャラであることを示している。Bメロの終わりではオーバーラップから主人公にヒロインが抱き着くカットから次のフレーズに合わせてこいこい7のメンバーの大写しの画を短く切り替えるカットが挟まりサビに移行する。

Come on a ready go!

 ここからはもうとにかく曲も気持ちがいい。とにかく音が多い、パチンコ屋かってくらいに爆発的に増え、詞にも横文字が増える。こう書くと頭の悪い文章だが実際横文字並べてるだけなんじゃないかってくらい聴いている間には意味が分からないがしかし勢いだけはもう誰にも負けないほどにある。ここに至っては歌詞解釈など後でもいいのだ。しいて言うならばAメロ、Bメロまでの悶々とした感情を爆発させているといったところだろう。
 映像はどうなるかというと、「ロボが出る」。それもよくあるなんちゃってロボではない。ステルスガオーを10倍いかつくしたような変形する「本編に登場しないロボがでる。」
 この変形もクレジットを見ればわかる通りトランスフォーマーの変形作画で有名な阿部宗孝さんが原画として参加しており特徴的な全身が同時に変形する動きと立ち姿を合わせて10秒ほどたっぷりと見せてくれる。なんだっけ?このアニメ。
 そうそう、こいこい7なのだ。だからこのロボはこいこい7と戦うことになる。当然もう残りの尺は15秒程度なのでこいこい7戦闘要員の各々から一撃ずつ喰らって撃退。最高のテンポ感です。ラス5秒でみんなで暮らすあのよろし荘の前に集合して幕引き。

 完璧ですねこれ、曲の異常なテンションを除けば構成そのものもオーソドックスながらアニメの導入としてキャラ紹介に作品のノリもそのまま。無意味に思えるロボだって同じものが出ないだけで本編に出るので無問題!逆に「冗長なカットを抜いて短く編集してみよう」みたいな思考で見てみたとしてもないんですよね。どこカットしようとしても過不足が出てしまう。必要最小限ながら激しい勢いの曲の中に多くのものが詰まった映像が気持ちのいいアニメのOPだったといえるだろう。

 



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