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バンブラシリーズの今後はあるのか?

去る2023年12月2日、ニンテンドーDSが発売されて19年となりました。あのDSですらもう20年近く前ということに衝撃を受ける人も多いかもしれません。
そんなDSの同時発売。いわゆるロンチタイトルの1つに「大合奏!バンドブラザーズ」というものがありました。通称「バンブラ」と呼ばれるこのゲームは、後に2008年6月の「大合奏!バンドブラザーズDX」。そして3DS用ソフトとして2013年11月に「大合奏!バンドブラザーズP」とシリーズが続いています。
※この他に「追加曲カートリッジ」や「フォトスタンド付き バンブラDXラジオ」など派生的なタイトルもあり。

ワタシも今なお遊ぶことが多いシリーズですが、先に紹介した通り最新作はちょうど10年前の発売。それから新作の動きがない状態となっています。
長らく新作が出ていないシリーズというのはゲーム業界で決して珍しくはないですが、かれこれバンブラPの総プレイ時間が4000時間を超えているほど遊んだ1プレイヤーとしては、新作で、最新機種で遊びたいと常々願ってしまうものです。
そこで、改めてバンブラ新作の可能性について、考えてみようと思います。あくまで関係者でもなんでもないユーザーの視点ということと、どちらかというとポジティブ寄りの考察。ということをご了承ください。

バンブラの特徴

ジャンルで言えば音ゲーとかリズムゲーと呼ばれると思いますが、改めて他の音楽系ゲームと違いがあるのか。振り返ってみましょう。

バンブラは『曲を"演奏"して遊ぶ』という表現が当てはまります。最新作「P」の場合、最大10のパートで曲が構成されており、それぞれのパートで鳴らしている音がそのまま音ゲー譜面になっているのです。メロディ担当、ドラム、ベース、シンセ…など、1つの曲で複数の全く異なる譜面が遊べてしまいます。

例えば初期収録曲の「101回目の呪い」
メロディのテナーサックス(難易度:マスター)
普通これ1パートだけでもゲームとして成立するけど…
同じ曲、難易度のピックベースパート。
操作形態は同じなれど、譜面は大きく異なる。
メロディとベースじゃ違った面白さがあります。

しかも、ちゃんとボタンに音階や担当パーカッションが割り振られているので、違うボタンを押してしまうと違う音が忠実に出てしまいます。まさに"演奏"感覚を味わえるというのが、他の音ゲーにない特徴の1つになっています。
間違ったなりの音が出るという点では、最近Switchでもリリースされた「Trombone champ」というゲームが近いかもしれませんね。

次に、この最大10パートで構成される曲を、なんと自作出来てしまう「作曲機能」も大きな特徴。さすがにPC向けの作曲ソフト(通称DTMソフト)に比べると多くの制限はありますが、打ち込んだものがそのまま音ゲー的に遊べるというのはこれもバンブラならでは。最新作ではオフライン通信で交換出来る曲も兼ねますが、500曲分まで保存出来ます。全国飛び回って交換しまくるとかしない限りそうそう埋まらない。

ドラム系は別ですが、基本は五線譜入力式。
音楽の授業をちゃんと覚えていればすんなり使える?

それこそ市販のバンドスコア等の楽譜を元にベタ打ちしただけでも割と良い感じに曲が出来ます。そこから音量や音色などをいかに原曲に近づけるかが腕の見せ所。中には楽譜なくとも耳コピで作っちゃう人もいたりする。

更に、現在はオンライン機能が終了していますが、2作目の「DX」以降、この作曲機能でユーザーが作った既存曲をダウンロードして遊ぶことも出来ました。
既存曲というのは、既に世に出ている曲のうちJASRAC管理曲(後にJRC。更にe-license管理曲も追加)が対象。よってゲーム曲や洋楽などは投稿も出来なかったのですが、「P」では一部の任天堂ゲーム曲や東方プロジェクト原曲も対象となった。このうち投稿して審査基準をクリアした曲が晴れて配信され、他のユーザーがダウンロードして遊べるようになっていました。

普通の音楽ゲームではまず収録されないであろう
あんな曲やこんな曲がみんなで遊べるように!
そんな可能性を秘めていました。

他にも色んな要素はあるのですが、バンブラにしかない魅力がたくさんある、ということはおわかりいただけると思います。
しかし、かといってホイホイと新作が出せるというものでもないのが現実。実際新作を作る難しさとは何か。考えていきます。

投稿審査システム

先ほど挙げた楽曲投稿とダウンロードのシステム。とても画期的な要素ではあるのですが、その特殊性ゆえに、難しい問題も孕んでいます。
「DX」でも「P」でも、投稿した曲は全て"審査"をする必要がありますが、当然その審査は人の手によって行われます。具体的な審査基準や体制は公表されていない部分ではありますが、この審査がかなり厳しいものということがバンブラユーザーの間では知られています。

楽曲投稿を積極的に行っていた人は、
何百回と見たであろう画面。

「P」ではトマト(1個あたりだいたい60円ほど)を使って修正すべき箇所を教えてくれるプレミアム審査なるシステムもありましたが、普通に投稿して審査してもらう分には無料で何度も出来ました。
当時のニンテンドーWiFiコネクション自体が無料だったからといえばそうなのですが、考えてみればだいぶ割に合いません。受付番号から推察するに、オンラインサービス終盤であっても1日に50~70程度の投稿があった(オリジナル曲投稿分も含みますが、これだって本当にオリジナルなのかチェックが必要)と思われます。ゲームの規模から審査にそんなにたくさんの人員を割いていたとは考えにくい中で、著作権的にも厳しめの審査を継続せざるを得ないという状況は、相当の無理があったと想像出来ます。
また、改めて投稿側としても修正すべき箇所がどこかが中々わからない状況が続くのは単純に苦しいものです。
※極端な話、4拍子のMAX150小節で10パートある中からどこが違うかまた探す。というしんどい作業を求められる。
3DSの時代以上にSNS等が普及して、良くも悪くも様々なことが拡散されやすくなってる中、従来の仕組みのままでは相当リスキーな予感はします。プレミアム審査のような修正点に気付きやすくなる仕組みをもっと利用しやすくする等、何らかのてこ入れは必須になるかと思います。
個人的にはこういった投稿周りは一律、別途追加料金とかでもいいかと思います。Switch ONLINE+追加パックに入っていると追加料金は要らない…なんて応用もありかもしれませんね。

なお、Pの時代以降、JRCとe-Licenseが統合してイーライセンスになっているなど多少の変化はありますが、楽曲の権利関係は従来通りJASRAC含めて許諾を得れば大丈夫かと思われます。近年は音楽サブスクも広がってきているので、その辺とも上手く連携とか出来れば面白くなるかもしれません。だいぶ漠然ですが。

ただ、近年の音ゲーで人気のBMS関連曲とかが
投稿出来たりするかはちょっと難しいかも?
【Cytus α】

開発の担当はどうなる?

バンブラシリーズ「初代」「DX」「P」のうち、最新作の「P」のみインテリジェントシステムズ(通称IS)という「ファイアーエムブレム」や「ペーパーマリオ」シリーズで知られる会社で開発されていて、初代とDXは任天堂内製で作られていました。P発売直後、DXと色々UI等で異なる点が多かったのもこの辺に関係ありそうかも(その後アプデでDXに近くなっている)。
順当にいけばPからの流れでISがバンブラ新作を手掛けてもおかしくないですが、ISといえばつい先日「超おどるメイドインワリオ」がリリースされたばかり。一方で2024年に「ペーパーマリオRPG」リメイクが発売することが発表されています。看板シリーズであるファイアーエムブレムも何かしら動いてるであろうことを考えると、バンブラ新作を作るスタッフの余裕があるのかが微妙なところです。
※もっと言うと、同じくファンから新作を熱望されている「リズム天国」や「パネルでポン」といったシリーズもISが開発。この辺も悩ましい…。
あるいは、別の開発会社が製作する可能性もありますね。

余談ですが、バンブラシリーズのアートディレクター、いわば産みの親とも言われている任天堂スタッフの北村さんという方ですが、ワタシが見つけた限り2021年12月に発売されたSwitch版「やわらかあたま塾」に携わっていることまではスタッフロールで確認しています。今はどうしているのでしょうね?

元々バンブラのスタッフはDSの
タッチ!ジェネレーションズ系列のソフトも
携わっていました。
ちなみにSwitch版の脳トレ、あたま塾共に、
「シアトリズム」シリーズで知られる
インディーズゼロが協力してたりします。
【やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ】

マイク機能

地味ながらSwitchで新作が出ない大きな要因の1つかもしれないのですが、Switchにはマイク機能が標準で搭載されていません。「DX」と「P」には『歌う』いわゆるカラオケ機能。「P」では自分の歌声でボカロを生成する。また初代でもハナウタ作曲にマイク機能が使われています。
Switchでも別売でマイクはあります(「カラオケJOYSOUND」で使用)が、Switch Liteには対応しておらず、遊べる人がちょっと限られてしまいます。
「スマブラSP」や「マリオカート8DX」のVRモードほどのオマケ要素…というにはちょっと大きな要素ではあるので、2画面以上のネックになっていることも考えられます。
ただ、スマートフォンのNintendo Switchアプリを使えばスマホをマイク代わりにして…と出来なくはないとは思います。カラオケ機能についてはそこまでいくとスマホのカラオケアプリでいいじゃないかとなりそうですけど。

海外展開には向いていない?

バンブラDXは、欧州地域にて「Jam with the Band」というタイトルで発売していましたが、その他の初代やPは日本国内のみでの発売でした。北米では一度もリリースされていません。
任天堂がこれまでSwitchで発売してきたタイトルは多数ありますが、実はコーエーテクモゲームス開発の「バディミッションBOND」以外のタイトルは全て世界向けにも発売しています。
(「BOND」もアジア版であれば存在する)
ゲーム全体の開発規模も大きくなっていく中、日本に特化した展開…というのも厳しくなっているのが現状かもしれません。ほとんど洋楽で構成された「JUST DANCE」シリーズが日本でどの程度受け入れられているか。ということを考えると、日本版そのまま海外でもというわけにもいかないでしょう。世界展開がしにくいタイトルは、いくら任天堂が好調であってもなかなかGOサインは出にくい可能性はあります。

携帯機向けシリーズに流れが?

先ほどの海外展開の話に近いですが、これまで任天堂が発売したSwitchソフトは、主に家庭用機向けに出していたシリーズが主流となっています。
携帯機向けに展開していたシリーズ。例えばバンブラ以外にも「ガールズモード」「カセキホリダー」「伝説のスタフィー」といったGBAなど携帯機で複数作品出ていたものは、Switchでは動きがありません。
この辺もバンブラ的には不利な状況。…ではあるのですが、もしかしたらこの傾向に変化が生じているかもしれません。

2024年の任天堂ソフト発売予定を確認してみると、1月に「アナザーコード リコレクション」。これは初代バンブラとほぼ同時期にDSで発売した1作目と、Wiiで発売した2作目をカップリングしたリメイク(ちなみにWii版は実はバンブラDXと同様に日本と欧州のみ販売だった模様)。
2月は「マリオvsドンキーコング」。これもGBAで発売していたもののリメイクですが、GB版「ドンキーコング」の流れを汲むシリーズで、オマケ的にWiiUでも出たことありますが、ほぼ携帯機向けでシリーズが出ていました。
…と、ここに来て携帯機を中心にリリースしていたゲームの発表が続いているのです。(だいぶ無理やりだけど、3月の「プリンセスピーチ Showtime!」もDS「スーパープリンセスピーチ」の系統…とも言える?)
まだまだSwitchの新作は出すと言っている任天堂ですが、初頭のラインナップはその内容を示唆しているのか。注目したいところです。

あら、アタシの右隣の子。Switchのゲームになるの?
ちょっと任天堂のしもべー!?
【大乱闘!スマッシュブラザーズSPECIAL】

必要な目玉要素。ヒントはあのソフト?

もし満を持して新作が出るとして、もちろん3DSからハードが変わって音質がもっと良くなったとか、最新の楽曲で遊べるとか、より快適になったオンライン合奏が…というだけでも十分魅力的ではありますが、DXのオンライン要素。Pのボーカロイド要素といった、前作と大きく変わる何かがないと、特に任天堂は簡単には続編を出そうとはしないでしょう。

ここで、任天堂が出したとあるSwitchソフトが、かなりバンブラに応用出来るのでは…?と、個人的に思っていたので少し紹介させていただきます。

それは「ナビつき!つくってわかる はじめてゲームプログラミング」
2021年6月に出たこのゲームは、その名の通り簡易的なプログラミングでゲームを作れてしまうソフト。実際このゲームは、とても丁寧なレッスンモードの通りに進めていくだけで、プログラム知識なしでもゲームが出来てしまいます。
出来たゲームは、その後自分で自由に色だけ変えるとか、地形をちょっといじるとか、どんどん改良することが出来ます。複雑なプログラミングを駆使してまぁまぁ本格的なゲームにすることも…。

この作り、バンブラの作曲モードにかなり向いてそうではないでしょうか?
これまでのバンブラシリーズの作曲モードは、そんなに親切な解説がついていたりするものではないので、正直ほとんど触らずに終わってるプレイヤーも少なくないと思います。
そこで「はじプロ」のように、レッスンを徐々にこなしていくと、なんとマリオの地上BGMが完成したではありませんか!なんてことが出来るモードをつけると、一気に作曲モードの敷居が低くなりそうです。プログラミングの面白さに触れるならぬ、作曲の面白さに触れるソフトとしてバンブラを活用する…。これが実現すればかなりいい線行くのでは…?と、素人ながらに考えてみました。

『ドミソで和音にしてみよう』とか
『マイナーコードを使ってみよう』とか…。
それはそれで4分音符くんとか16分音符おじさんとか
色々出てきちゃうのだろうか。
関係ないけど、ワタシはこの突進する敵を
"崖に落ちる前に止まって、初期位置に戻る"
ように改良したかったけど、
結局敵が動きすらしなくなって断念してまして…

またあえる日まで

と、色々と書いてはみましたが、少なくない課題はありつつも決して続編が絶望的、ということでもない。バンブラに限らず色んなシリーズにも言えることに落ち着いてしまうのでしょう。
最新作の「P」では、史上最大のオフ会と称して公式直々にユーザー同士が交流出来るオフ会イベントを開くなど、任天堂ソフトの中でもかなり異質なことをしていたので、他のシリーズよりも扱いに困る部分もひょっとしたらあるかもしれません。
ですが、バンブラが好きなユーザーほど、このゲームはもっと面白くなる!もっと可能性を秘めているんだ!という熱い想いを抱いているのも事実だと思います。
先に紹介した「アナザーコード」は、開発会社の関係でそもそも移植ですら絶望視されていました。念願の…!と言えるかは人それぞれですが、長らく動きがなかったF-ZEROも「F-ZERO99」という新たな展開が始まりました。流石に難しいだろうと思われていたN64「ゴールデンアイ」がSwitchで遊べるようになったり、「スーパーマリオRPG」のリメイク。極めつけはスマブラSPで誰もが望んではいたけど現実にはならないと思われていたソラ参戦が実現したりと、時に任天堂は我々の予想を越えた驚きを届けてくれます。
近い将来、新しいバンブラで遊べる日が来ることを願って、まだまだ元気に動ける3DSで過去作を擦りながら、例年だと次は2月頃でしょうか。ニンテンドーダイレクト辺りで発表されるのをいつものように待っていましょう。

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