ヘッドホン・周辺機器雑感

ギターとヘッドホンが趣味である私が、今まで聴いてきたヘッドホンやHPAなどの印象をつらつらと綴るnote。

表題にある「雑感」のとおり、音以外の要素も含めてたまにギターを絡めつつ書き散らし、にわかオタクとして溜め込んで来た経験を一先ずの文章として形にする事で、漠然と抱えていた欲求を昇華する事が目的。
その為非常に長く、内容も俗に言う「チラシの裏にでも書いてろ」のチラシの裏。えらい長いチラシだな。
(発端はある御方が興味を持ってくださった事なのだが、元々書きたかった事もあり書いてる内に完全に道から逸れてしまった。本当に申し訳ない。)

※以下は全て私の主観であり、ただの感想です。あなたや誰かの感性を否定するものではありません。

※2020/04/09 ATH-A2000Xの記述を大きく修正

0. 試聴環境

ヘッドホンはヘッドホンアンプ(HPA)や上流次第で音が大きく変わるものもあれば、あまり変わらないものもある
そのため各ヘッドホンの音に触れる前に、まず普段どんな環境で聴いているのかを、それぞれのHPAについてほんの軽く触れつつ示す。
トラポ:PC
DAC:NorthStarDesign Excelsio
HPA:audio-technica HA5000
   beyerdynamic A2
   Ru○○stor N○-03クローン(MUSES01)

※PC-DAC間はUSB。細かいアクセサリー類は割愛。

A2 
うちのメインアンプ。かなり広い音場に、正直味気なさも感じるそっけない音色。溢れる駆動力。お値段だけあり解像度など基本性能が高い。出力インピーダンスを0Ωモード/100Ωモードの2つから選べる。

HA5000
いかにもオーテクらしい音。A2の真逆とも言ってよく、音場は狭めでノリが良く、化粧っ気のあるツヤツヤした高域。コンプを強く掛けたようなダムダムした低域。駆動力も十分。

某クローン
AliExpressで購入した怪しいアンプ。MUSES01に換装済み。前2つと比べると、艶を控えめにし全体的に性能を落としたHA5000という表現が近いか。約一万円としては破格の音だと思うがそれ以外が酷く、非常に大きいポップノイズたまに鳴るジッっというノイズ異様にバカでかい出力音量とそれに伴うクソデカいホワイトノイズ(大体300Ω未満はまずNG)という難がある。

1. ヘッドホン

まず、主に私が所持している/していたヘッドホンについての印象を記していく。音・装着感をメインに、どのジャンルに使う事が多いか等の使い分け、アンプとの組み合わせについても軽く触れる。レビューというよりは、聴いた際に私が漠然と抱いた印象という方が近いだろう。その為、例えば同じ「ドンシャリ」という表現でもニュアンスはそれぞれ全く違う場合がある事を留意していただきたい。
並びはメーカー名順。
価格は現在の最安価格、既に生産終了の場合はマイナーチェンジモデルの価格、それも無い場合は購入当時の価格で表記する。
現在手元に残っているのはヘッドホン13個、イヤホン5個。
機種名の前に★がついているものは現在も所持しているもの、☆は売却済み。購入・売却時期が古すぎるものは記憶も曖昧なため取り上げない。
※非常に長いので次の「1+. 逆引き」に「これを聴く時はこのヘッドホン」というのを逆引きのような形で載せる(あくまで私の手持ちの中ではこれで聴いている、という趣旨のリスト)。

AKG
・☆K601: 開放型。235g。120Ω。音圧感度92dB。¥10,318(K612PRO)
K501/K601/K701三兄弟の一つ。K701と並んで知っている中で最も値落ちが激しいヘッドホンであり、私は2008年に¥29,400で購入したが、2006年発売当時は¥47,000で、K701(現在¥16,280)などは¥83,000ほどしていた。生産もオーストリア製であったのが現在は中国製に変わったりしている。
現行のK612PROは帯域バランスが変わっている模様。
【装着感】非常に軽いため基本的には良好だが、ヘッドバンドの長さ調整が固定ではなく、硬めの薄い革であるヘッドバンド(細いゴムのような紐で吊ってある)を頭で押し上げるデザインのせいで、長時間では頭頂部が痛くなる。
イヤパッドは弾力があるが肌触りはサラサラしており良好。
ケーブルがストレートの3mであり少々邪魔である。
【音】繊細。少々高域寄りで、低域は本当に最低限で控えめ。全体的にあっさりしており音の線が細い。また音場が非常に広く、自然。帯域バランスもありスカッと抜けていく。
繊細と書いたがノリの良い曲が苦手なわけではなく、メタルや重めのロック以外は大体何でも合う、ただし繊細な味付け。ヴァイオリン等弦楽器は中域の物足りなさが気になる程度だが、ギターは線が細くなってしまい少々苦手。真骨頂は金管で、その鮮烈さはこの帯域バランスでないと出せないと思われる。バッカーノ!OPの「Gun’s & Roses」は毎回これを使っていた。後はT-SQUAREや本田雅人。ピアノソロ系もそこそこ行ける。抜群に音場が良いので低域さえ期待しなければフルオケなども良い。音場が良いので低域さえ期待しなければフルオケなども良い。
【HPA】A2。インピーダンスは120Ωと少々高い程度だが、非常に音量が取りにくく、また駆動力の弱いアンプでは音量が足りてもただの蚊の鳴くような音が出てくる。

Alessandro
MS-PRO: 開放型。245g。32Ω。音圧感度98dB。¥72,380
よく工芸品のおみやげとも言われる見た目が特徴のヘッドホン。GRADO RS-1のOEMであると言われ、こちらの方が数万円ほど安い。
なお現在は本家RS-1e(現行RS-1)同様赤いドライバのモデルが売られているようで、そちらはまた私の物とは音に違いがあるようなので注意。
【装着感】非常に軽いが耳乗せ型であり、耳が圧迫されるため長時間の装着は少々厳しい。所持している中で唯一の耳乗せ型。少々装着位置で音が変わりやすく、私は少し後ろ目を意識して着けると良好なことが多い。
【音】とにかく抜けが良くノリが良い、聴覚上は中域が美味しく感じるヘッドホン。その為中域にメイン帯域がある声・楽器の表現が異常に上手い。甘く弾力のある音で刺さるような高域の痛さは無い。女性ボーカルの表現が非常に上手い。肉感的。またヴァイオリンやヴィオラも同様。超低域は薄めだが、バスドラの帯域辺りは元気に出るので寂しさは感じない。
またエレキアコギ問わず、今まで聴いて来たヘッドホンの中で最もギターの表現が上手い。そもそも2~3年ほぼMintJam漬けだった時期に、そのギタリストであるa2cのギターを一番気持ちよく聴ける物を探していて購入したヘッドホン。
【出番】ロック・ポップなどノリが良いものが得意だが、しっとりした曲も別に苦手ではない。割合何でも聴ける。音場は広くない為フルオケのようなスケールが要るものは苦手で、音数が多い曲もごちゃごちゃしてしまいがち。逆にIl Giardino Armonicoのような小数編成や室内楽の弦楽器は非常に良い。よく合わせるのは水樹奈々や「瀬戸の早嫁」キャラソンの「らせん」。
HPA基本的にはHA5000と合わせることが多い。出番からして音場の広さよりもノリの良さを求める曲が多いからで、A2では少々味気ない音になってしまう。

audio-technica
ATH-A2000X: 密閉型。298g。42Ω。音圧感度101dB。¥69,800(※ATH-A2000Z)
「アートモニターヘッドホン」という謳い文句であるが、「モニター」という言葉の意味を考えさせられるヘッドホン。味の素の塊みたいな音。このモデルは非常にはっきりと好き嫌いが分かれると思われる。印象だけを考えれば個人的にはオーテク版T1といったようで、アンプで結構音が変わる点も似ている。ちなみにこちらも同じくドライバ前方傾斜。
オーテクのオーバーヘッドヘッドホンには主にATH-A***、ATH-W***、ATH-AD***、ATH-M***と幾つかラインがあるが、ここ最近のAP2000Tiなどを除けばその内のAの一応最上位だったもの。
チタンのハウジングが非常に気を使う代物で、丁寧に扱っていても気付いたらヘコみが出来ているのはご愛嬌。
装着感重量自体が軽く、ウイングサポートでとても良好。またクラリーノのイヤパッドはツルっとしていて革系トップクラス。が、多少の汗で一気にベタッとするので夏は厳しいかもしれない。
【音】THE ドンシャリという印象で特にシャリが目立つ。中域が薄い印象。とにかく高域が目立つ。肉が無い。意外と低域は出ているが、ミドルローの辺りが薄く感じ余り実感が無い。その下は結構出ている為ソースによっては一気に主張してくる。ガラスの世界に立っているようで、それが何故か癖になり、特定の曲・特定の気分の時に非常にハマる。音場はオーテクの密閉にしては広めであり、特に奥行きはかなり感じる。上記の帯域バランスもあって空間がすっきりして見通しが良く、この辺りはT1に似ている。更にヤンチャで尖ったナイフのような初代T1という感じで、全体的により金属的、低域はこちらの方がコンプがかった弾力が強い感じ。音の実体感は流石に大分劣り、T1同様スッキリはしているがクッキリはしていない。
アコギは結構悪くないが、エレキの表現は苦手。
なお下位機種にATH-A900があるが、あちらは全く別物で非常に無難な音。音色に同じ遺伝子を感じさせる部分はある。
出番ハマる特定のアーティストが得意(どうしようもない表現)。うちではほぼeufonius専用機と化していた。これでプリズム・サインを聴くとカミソリで肌を撫でられるような気分が味わえる。基本的に大体のアニソンは苦手。
またSound Horizonとの相性はかなり良い(特にRoman以降)。見通しの良さのおかげで音数が多くてもゴチャつかず、また帯域がマッチしているのかボーカルの定位が丁度良い。ただしMoiraのギターがメインのものは微妙かもしれない。剣戟の音は非常に良い。
HPA】HA5000もしくはA2。基本的に大体のオーテクのヘッドホンは同メーカーだけあってHA5000と相性が良く、A2000Xの場合は特徴がそのまま強調される形になる。なお上記の【音】の印象もHA5000と合わせた際のもの。A2と合わせると一気に万能型に寄り(寄るだけ)、全体的に金属的な鳴りは抑えめになり渇いた雰囲気が出てくる。一番変わるのは低域か。音場も良好。帯域の繋がりはHA5000の方が滑らかで瑞々しくツルッとした印象。
アンプ次第ではただのつまらない不快な音になりがち。

ATH-W1000X: 密閉型。350g。42Ω。音圧感度100dB。¥46,850(※ATH-W1000Z)
私の考える「オーテクらしい音」を形にして少し低域を盛ったヘッドホン。低域が豊かな密閉を探していて購入。
【装着感】A2000X同様のウイングサポートだが、側圧と多少重めの関係か長時間の仕様では微妙にずり落ちてくる事がある。とはいえ良好。
またW3000ANVのイヤパッド(HP-W3000ANV)が使え、肌触りが非常に良く音も損なわれないのでオススメ。6,600円するが。
以下の感想もこのイヤパッドを装着してのもの。
艶のある高域、豊かな低域。豊かな低域。自然な音というよりはばっちりメイクを決めたような音。ギターで言うエリクサーの巻き弦のような音の輪郭。A2000Xと決定的に違うのは音の線が大分太い事、そして低域が多いこと。手持ちではPRO2900と並ぶ程に低域が出る。かと言って低域一辺倒ではないのが良い所。音場はイヤパッドが深いおかげかオーテクにしては意外と広く感じる。横はそうでもないが奥行きが結構あり前方定位する。耳の真横で感じる音があまり無い。
出番割とオールマイティーに行けるが、うちではアニソン全般専用機と化している。一口にアニソンと言っても多種多様だが、女性ボーカルで、ピコピコシンセがいっぱいで、他楽器との兼ね合いでギターの帯域がガッツリ削られている、そんな曲をとても楽しく聴かせてくれる。逆に正統派なバンドサウンドのような曲は、苦手ではないもののわざわざこのヘッドホンを選ぶ理由はあまりないように思う。「そらのおとしもの」EDの「初恋」のカバーを聴く際は毎回これを使う。低域がモリモリで面白い事になる割に上がマスクされない。あとKOTOKO。逆に乾いた掠れたような生々しい質感が欲しい曲はイマイチかもしれない。艶で覆われてしまう。
なお現行機のW1000Zは店頭での試聴のみだが、低域が減り、より無難な音になってるように感じた。
HPA】基本的にHA5000。上にあるように出番のジャンル的に無難。

ATH-R70x: 開放型。210g。470Ω。音圧感度98dB。¥38,390
前述のオーテク他2つとは違いこちらは開放型。このATH-R***は比較的最近出た物で発売は2015年。見た目はまさに一回り小さいATH-AD2000という印象で、特筆すべきはその重量。210gはまず他に見かけない。
装着感その重量とウイングサポートのおかげで全ヘッドホントップクラスに良好。軽いため首を振ってもずれないし、ずり落ちもしない。ただしイヤパッドが比較的浅めで、人によっては耳が当たるかもしれない。
ATH-M***系の45mmドライバをAD2000のハウジングに入れたらこうなるんじゃないのかなという感じの音。基本的な音色のキャラクターはATH-M***だが、ハウジングが全く違うため帯域バランスも全く違う(あちらは密閉)。もちろんドライバ自体も調整されてはいるだろうが。オーテクの中でトップクラスにバランスが良い音(私調べ)で、高域も低域も癖がなく、開放型の割にかなり超低域がしっかりしている。オーテクっぽい艶も控えめ。フラットという言葉は好きではないが、フラットで自然な味付け。音の線も細くない。AD2000やSHURE SRH1840と同属性に感じる。またAD2000には劣るが音場はオーテクではかなり広め。
またオーテクの中では一番ギターの表現が上手いかもしれない。
出番非常に万能機。予算3万円台ヘッドホン1つだけと言われたらこれを選ぶかもしれない。DTM用途にも向いているように思う。軽いし。ギターベースドラムなど生楽器、ピコピコ電子音も無難にこなす。ただし金管などあまり派手なのは期待し過ぎない方が良いかも知れない。
余談だがオーテクの45mmドライバは度々OEMで見かけ、特に楽器メーカーで45mmとあれば大体(ry
また密閉型のATH-M50は、欧米のスタジオでは日本でいう900STに似た立ち位置のようで、レコーディング動画などでは次のbeyerと並んでよく見かける。保守的な面でも、実はオーテクは公式HPでイヤパッド以外の部品も購入することが出来る(例えばウイングサポートの頭と接触する三角のやつ等)ので何かあった時にも便利。
HPA】基本的にA2。音場も広いのでインスト類も含めオールマイティーに聴くにはこちらの方が良いように思う。ただしHA5000とももちろん悪くはなく、ボーカルの艶っぽさやノリの良さを特に重視する時はそちら。某クローンとの相性も良く普段はそれに挿しっぱなし。

beyerdynamic
DT770 PRO(250Ω): 密閉型。270g。250Ω。音圧感度96dB。¥15,020
beyerのレガシードライバ3兄弟の一つ。880は半開放型、990は開放型という違いで上位機種下位機種ではない。日本では990が非常に有名か。非常に息の長い機種であり、インピーダンス違いなどでもバリエーションが豊富。把握しているだけでも 32Ω、80Ω、250Ω、600Ω、Edition2005、M、88周年モデル など(32Ωモデルは88周年モデルと同じ仕様)。イヤパッドがベロアか革か、またハウジング内部のフェルトのありなしなど細かい違いがある。
この250Ωモデルは割と初期からある恐らく標準的なモデルで、ベロアパッド、フェルトあり。
かなり落としたりもしているが、購入時から13年間全くトラブル無し。
装着感とても良好。軽めの重量と丁度良い側圧、ヘッドバンドの形も良く、イヤパッドもさらさらしているので長時間つけていても全く苦痛にならない。
ドンシャリで全体的に暗め、ダーク。低域は割と緩めでダムッというよりバフッという感触だが、ボワボワしているわけではない。高域が癖になるシャリつき具合で、エレキギターの表現が中々好み。ピコピコ電子音はそこまで上手くない。基本的に打ち込みより生楽器類が得意な味付けの音色に思う。ただしヴァイオリンなどは特別上手くはない。また音場が密閉としては非常に広く、横だけではなく部屋の高さも感じる自然な音場。beyerはこの立体的で自然な感じの空間を作るのが上手いように思う。Altiverbのエンジニアも(たまたまだろうが)これを使っていた。
出番率直なところ、私は13年ほどこの機種をメインヘッドホンに据えており何でもこれで聴いてしまうため、客観的な感覚が全くわからない。強いて言えば重めのメタル~ハードロックが合うように思う。女性ボーカルよりはどちらかと言えば男性ボーカル。よくジャズが合うという感想も目にするが、確かにそういうちょっと暗めの雰囲気が合う。それ以外ではEvery Little Thingを聴く際は毎回これを選ぶ。水樹奈々のテルミドールもかなり合う。
なおこれが無いとギターの音作りが出来ない。
HPA】基本的にA2。アンプの素っ気なさが上手い具合に噛み合い非常にバランスが良い。極稀にHA5000だが、R70xの場合とは違い、高域の刺さりがキツくなるのでソースを選ぶ。音自体は楽しい音だが。ちなみにうちではギターのモニターの為大体QUAD-CAPTUREに挿さりっぱなし。

・☆DT 770 PRO LIMITED EDITION 32 OHMS: 密閉型。270g。32Ω。音圧感度96dB。£139.79(購入当時)
88周年限定モデル。DT770 PRO好きとしては絶対買わねばと思い、イギリスから個人輸入した。PRO(250Ω)との違いとしてはインピーダンス以外に、ベロアパッドが革パッド、ケーブルが1.6mのストレートになっている。
装着感良好。革パッドになっているためベロアと違い少々感触が固めになる。
PRO(250Ω)とは結構異なる。低域が増強され高域は多少大人しく、全体的にマッチョで息苦しい感じになっている。この辺はDT1770PROにも似た部分がある。分解してはいないが、恐らくハウジング内部のフェルトも80Ωバージョン同様存在しないのではないか。
出番】掠れ具合などPRO(250Ω)の好みだった点が薄れしまっており私の好みには合わなかったが、こちらの方がよりオールマイティだったとは思う。ピコピコ打ち込みなどもこちらの方が上手い。
HPA】PRO(250Ω)と同様。

・☆DT990 E/600: 開放型。270g。600Ω。音圧感度96dB。¥27,720
600ΩモデルはEdition 2005の系統で、通常のPRO(250Ω)と比べるとあちこち大分デザインが違う。特にハウジング。お値段も約一万円ほど差がある。
装着感通常のPROと比べると一段落ちる。が、あくまで私の場合であって、頭の幅が大きめの人はこちらを選んだ方が良いかもしれない。ヘッドバンドがどうも大きめのようで、装着するとイヤパッドの上部が離れ気味に傾きがちだった。
マッチョで派手になったDT770 PRO。全体的に付帯音が目立つ(特に高域)印象で、それにより低域の輪郭部分までギラギラ気味になり、上も下も全部派手目に。ピアノなどは少々電子ピアノっぽくなったりもした。また低域の量感もDT770 PROよりは大分多い。他人のレビューを読む限り、この付帯音は恐らくハウジングの違いがかなり影響していて、通常のDT990 PROでは軽減されているのではと思う。残念ながら私には合わなかった。うちのアンプ類と軒並み相性が悪かった可能性もある。本当に残念(気張ってわざわざ600Ωを買ったのに……)
出番なんかメタルとかじゃない?スラッシュとか?知らん。
HPA】HA5000。A2は中途半端に個性が死んだだけのように感じた。

・☆DT880 E/600: 半開放型。290g。600Ω。音圧感度96dB。¥35,445
前者と同じく600ΩモデルはPRO(250Ω)と同様の違いがある。ただしDT880 PROのハウジングは元々Edition2005と割合似たデザインをしている。
他の兄弟と比べると少し仲間外れ感がある影が薄いヘッドホン。持っている人も大分少ないのではないだろうか。
装着感DT990 E/600と同様。
低域をかなり弱めたDT990。鮮烈。全体的には意外とATH-A2000Xが似ており、あそこまで金属的ではないがこちらはこちらで更に低域が減る。帯域バランスだけで言えばK601と似ているかもしれない。ただしこちらは非常に刺激的で音は全く違うが。
【出番】この鮮烈さを味わいたい時。そのスピード感でノリを感じさせる為、ピコピコ系アニソンも生楽器バンド物も悪くなく、独特な音の割にオールマイティ。ただし電子音の表現は別に上手いわけではない。K601同様金管が気持ち良い。
HPA】HA5000。だがA2ともそこまで相性は悪くなかった。

T1: 半開放型。360g。600Ω。音圧感度102dB。¥87,780(2nd Generation)
テスラ初号機。DTシリーズからいきなり型番が変わり、beyerのフラッグシップとして出てきたヘッドホン。恐らく(多分)初めて市場に出てきたテスラドライバー搭載機(多分)。とんでもない音で、初めて聴いた時はすごい衝撃だった。
装着感正直あまり良くはない。イヤパッドはふかふかで滑らかで非常に素晴らしいし、ヘッドバンドもふわふわで良い。しかしヘッドバンドの長さ調整の目盛り部分があまりしっかりと固定されず、ズルっと伸び縮みする事が頻発する。まあ一回装着してしまえば快適。
なおこれと同種のデザインであるDT1990PROやDT1770PROでは改善されていた事から、現行の2ndも改善されていると思われる。
また装着位置がかなりシビア。ドライバが前方傾斜で斜めについている影響か、イヤパッドの位置によってパンが片側に寄ったりする。特に音場の左右が狭めのHPAと合わせると、ギャングエラーかと思う程寄る場合もある。
音】最高。解像"感"番長、スカッと抜けて立体的な音場、これ本当に半開放か?beyerのテスラドライバは基本的に少し独特なシャラン・シャリンとした質感の音色で、第一世代はそれに加え尖った高域をしている。しかし金属的というよりはピアノ線やクリスタルで作られた音の世界のような印象。ATH-A2000Xにもほんの少し近い部分がある(A2000Xは金属的)。そんな高域のため恐らく人を選ぶ。低域は高域に比べると緩めで、レガシードライバと割合近い質感。中域はかなり薄味に感じる。
単純性能も高く解像度も高いが、どちらかと言うと音色による「解像度が高そうに魅せる演出」が際立ってるように感じる。先に解像"感"と書いたのはその為。分離感も高い。音場はまさに私には理想の音場で、横も奥も広く立体的。前方傾斜もあり前方定位する。単純に音場が優れていると言うよりは音の配置の仕方が非常に好み。HD800ほど広大で音が遠いわけではないが、私は同程度に優れた別系統の音場表現の頂点の一つに感じる。
出番このヘッドホンの解像感・分離感・音の実体感を楽しみたい時。またフルオケ。単に音色のキャラクターだけ見た場合は金管が非常に良い。基本何でもこなすが、第一世代テスラが独特な音をしてるため、他に相性の良い楽器はあまり思い浮かばない。
が、相性の良い楽曲/アーティストは存在する。以下列挙。
坂本真綾、Ceui、やなぎなぎ、eufonius、KOKIA(特にBattle of destinyとYes I know)、新谷良子のハリケーンミキサー、Sound Horizonの美しきもの、NieR Gestalt&Replicantサントラよりイニシエノウタ / デボル、魔法少女リリカルなのはよりSnow Rain ~Unison-trilogy~に含まれる3曲、アシュケナージ指揮SSOのElgar: Pomp & Circumstance, Serenade for Stringsなど。
HPA】8割A2、2割HA5000。このヘッドホンは非常にアンプの影響を受け、音場の広さと性能/音色の肉感どちらを取るかで選択するアンプが変わる。端的に言えば、みとせのりこのEXEC_SUSPEND/.のような曲はHA5000。HA5000と合わせると一気に音場(特に横方向)が狭くなり、装着が非常に非常にシビアになる(音が寄る)。

DT1770 PRO: 密閉型。388g。250Ω。音圧感度102dB。¥42,990
テスラシリーズの第二世代。DT770PRO好きとしては絶対買わねばと思い、発売して即購入。外観はDT770 PROと似ているが、実物は素材の違いのせいか中々高級感がある。初代T1とは違いヘッドバンドの長さ調整の目盛りはしっかり固定される。イヤパッドが2種類付属しており私はベロアの方を使用していた。またケーブルが着脱式になったが、3pin miniXLRでありリケーブルだけでバランス化する事は出来ない。
装着感割と良好。重量は重めだが、ヘッドバンドの形や側圧の強さなど上手く重量の分散が出来ている印象で、長時間でも頭頂部が痛くなることはない。とはいえ388gなのでは割と首にクることがある。着けた感じはかなりDT770 PROに近い。
【音】低域が強い。「DT770 PROをベースにテスラドライバを搭載して進化」というような話だったと思うが、はっきり言ってDT770 PROとは全く違う。完全に別物。T1がベースと言う方がまだ近いかもしれない。第二世代テスラの音については次のDT1990 PROでも触れるが、基本的に高域の粗がなく音の線がつるんとしており、もうその時点でDT770 PROとは別物である。ウォームな感じは消えとても冷たい音色。音場もDT770 PROより狭い。またテスラと言ってもT1とは違い全体的に非常に筋肉質で、これは低域がリッチな事、音場が狭く音の密度感が高い事の影響が大きいと思われる。
低域は質も非常に良く音の立ち上がりなども速いため、打楽器が非常に上手い。ピコピコ弾ける音も上手い。中域や高域は薄味だがマスクされるわけでもない。
が、DT770 PROの上位機を求めていた私の好みではなかった。ちなみに革パッドにするとさらにマッチョな音になる。
【出番】低域と特にキックにこだわる人には最高のヘッドホンかもしれない。重めのメタルやあと特に電子音系。S2NoiseのFractaやAu5のSingularity、DJ Amice版のFadedなど冷たい雰囲気のピコピコは異常に上手い。ただし低域でめちゃくちゃ酔う。ただ音楽を聴いているだけで酔ったのはこのヘッドホンが初めてだった。また機械音声の表現も、あの独特なリバーブのような感じが見えかなり上手い。
【HPA】A2。音色のキャラクター的に打楽器や電子音などこのヘッドホンの(個人的に私が思う)長所が発揮されるのはこちらの方だった。

DT1990 PRO: 開放型。370g。250Ω。音圧感度102dB。¥52,580
テスラシリーズの第二世代。2016年と大分新しい機種で、密閉型のDT1770 PROに続いて発売された。質実剛健かつ割とシャレた見た目をしており、値段なりの高級感はある。こちらもイヤパッドが2種類付属しており、私はずっとバランスドを使用している。アナリティカルの方はパッドに開いてる通気穴が少なく低域が増す印象。
装着感DT1770 PROと同様。
優等生ドンシャリ。まんま1770を開放にしましたという音で、比較すると高域が派手で抜けが良い。初代T1と比べるとテスラ第二世代というのもあり、シャリというよりシャランという、初代T1の角が取れたような滑らかな高域をしている。初代T1の高域が川の上流の尖った石だとすると、こちらは下流の丸みを帯びた石。刺激は抑えられ、中域・低域も量感が豊富であり、初代T1とは全くの別物の音。ただし低域の多少緩めな、キックのバスッとした音色の感じなどは初代T1と似ている部分もある。開放とは全く思えないほど音圧・密度感がすごく、ソースに依っては酔いそうになる事もある。この点はDT1770 PROもそうだったが、こちらは開放の為か多少はマシになっている。全体的にどの楽器の音も無難にこなすが、レガシー3兄弟との違いで目につくのは、DT1770 PRO同様ピコピコ打ち込み表現や打楽器が非常に上手いこと。高域が派手な分、ピチュンと弾ける音などはDT1770 PROよりもこちらが上手いか。ただしアコギはたまに高域のテスラっぽさが鼻につく事がある。
DT770 PROとDT1770 PROの比較とは違い、高域の大人しさを除けばテスラ版990と言っていい音をしているように思う。お淑やかになった990。
一点残念なのは音が近いこと。音場もあまり広くはなく、T1と開放/半開放の表記が逆なんじゃないの!?とすら思う。これはレガシー3兄弟と比べても狭い。ただしかなり独特な音場をしていて、一部の音だけ奥行きを感じたり、奥行きは感じるが音は近いという事もある。個人的にパン振りが斜め前方の曲は空間を感じやすい。また大抵のヘッドホンでバスドラの距離感は近い事が多いが、何故かこのヘッドホンは少し遠目に感じる。
出番音場の広さを求めない曲ほぼ全て。ピコピコが上手いため電子音楽やアニソン全般も合うし、打楽器も上手いためバンドなど生楽器系も合う。使うことが多いのは、fripSideのsword of virginイントロのようなピチュッという電子音が入った曲。ここら辺はW1000Xと被るが、こちらの方が歯切れが良いため、スピード感・立ち上がりの良さが欲しい場合はDT1990PRO。TiborgのSleeping Satellite Radio Edit Remixなども。XILENTのChoose Me Iのコココカッというのも気持ちが良い。Two Steps From HellやImmediate Music、E.S. Posthumus、Jack Trammellなどのトレイラーミュージック系は低域の質と量感がかなり合う。なぜか音場も合うものが多くしっくり来る。後はHR/HM全般で、Harem Scarem、Impellitteri、Killing Touch、Angra、IN FLAMES、Equilibrium、Lamb of God、Arch Enemyなどなど。そしてRoman以降のサンホラ。
HPA】基本的にA2。音場は広くないヘッドホンだが、DT770と同じくアンプの素っ気なさが上手い具合に噛み合う。特に前述の打楽器・打ち込みピコピコの端切れの良さはA2の影響もかなりあるように思う。

Hifiman
Arya: 開放型。404g。35Ω。音圧感度90dB。¥187,000
手持ち唯一の平面駆動型ヘッドホン。見た目も特徴的。Hifimanの高級ヘッドホンであるHE1000と同様の振動板を使用し、ガワなど他の部分でコスト削減が図られた廉価版モデル。以前にHE1000を試聴しており、その音色が自分のゴールの一つだと考えていたところで発表された。海外では月単位で先に発売された為、個人輸入も視野に入れていた品。予約開始日即予約発売当日即受取。
平面駆動型はインピーダンスが低く一見鳴らしやすそうだが、実際はまともなアンプを使わないと音量確保にすら苦労するので注意が必要。しかし比較的最近のモデルは全般的に大分鳴らしやすいものが増えている。
装着感重量の割に良好。平面駆動型はごく一部を除きどれも重めであり、こればかりはしょうがない。イヤパッドが工夫されており、側面は革だが肌に触れる部分は通気性の良いサラサラした別素材になっている。側圧もあまり強くはない。
特に感じるのは中域・低域の解像度が高いこと。HE1000試聴で惚れたのは中域だったが、家で聴いたAryaはそれに加え低域が非常によく見える事に感動した。男性ボーカルがこれ程上手いヘッドホンは他に知らない。また中域の密度感もあり、ヴァイオリンなどの弦楽器も非常に上手い。高域は非常に自然だが、中域・低域と比べると印象が薄い。もちろんマスクされるような事はない。得意レンジだけで言えばMS-PROのそれをそのまま少し下にスライドした印象か。また音の粒立ちが平面駆動型特有?のサラッとした感じで、音が音の細かい粒で構成されてるような錯覚を受ける。この辺りはダイナミック型で感じたことはなく、STAXの静電型に少し似ている。音場はこれもSTAX SR-407のように音像が大きいタイプで、残響などはしっかり見えるものの、縦に大きい実音が近く周りにポンポンポンと並ぶ。
出番OneRepublicのCounting Stars。真理絵のClover Heart's。NieR Gestalt&Replicantサントラよりイニシエノウタ / デボル。この3曲はわざわざAryaに差し替える。基本的にMS-PROが得意な曲は大体得意で、こちらの方がノリの良さが弱まりドッシリとした雰囲気で聴くことになる。The Huのような低域にレンジが集まっているものもAryaを使いたくなる。
苦手なものは音場の広さを求められるもの、音数がとても多いもの。ここら辺はSR-407と同じ苦手分野。
HPA】基本的にA2。そもそも鳴らしやすい平面駆動型が増えたとは言え、それは音量確保がしやすいというだけであり、駆動力のあるアンプがやはり良い。HA5000でもそこら辺は問題ないが、比べるとどうしてもA2の方が制御しきっているという印象を受ける。例えが難しいが、重い棒を振った際にビシッと止められるか重量に少し流されるかの違い。
A2とは単純な音色の相性も良好。Aryaは割と濃い音なので。

Sennheiser
・★HD598CS: 密閉型。334g。23Ω。音圧感度115dB。¥19,342
プリンという愛称?で有名なHD598の密閉型バージョン。貴重なゼンハイザーの密閉型の一つで、普段使い用に気軽に扱える密閉を探していて購入。
日本ではなぜかAmazon限定となっておりそこでしか売っていない。
元のHD598は大昔の試聴程度の経験のみ。
【装着感】良好。重量だけ見るとそこそこ重めだが、体感は大分軽く、長時間でも全く問題なく着けていられる。ヘッドバンドのクッションも柔らかくイヤパッドの触り心地も非常に良い。側圧は割としっかりしている。またポータブル向けでもあるらしく、付属の内使い勝手の良さそうな短い1.2mのケーブルにはマイク等の余計な物がついており、眉をひそめる。オタクは大人しく3mの方を使います……また非常に音量が取りやすいのでアンプによってはギャングエラーに注意。なおイヤパッドは他のもののように水につけて洗うと、乾かした後ボロボロに崩れてしまった。洗わないほうが無難かもしれない。他社製のパッドも色々種類が出てるがかなり別物感がある。
なお分かりにくい本家パッドの型番は"572280"。HD598とは別物でHD569と同じものらしい。
【音】次の二つに比べるとかなり普通の音、ではあんまりな書き方だが、密閉としては広めの音場に少し硬めの音色。音色のキャラ自体に限って言えば割合HD800に近いか。帯域バランスや音場は全く違う。低域の量感もそこそこあり割と緩め。ここら辺はHD650と似ているがあそこまで盛々ではない。音場は横が広く奥行きはそこまででもない。
【出番】普段使い。完全に私の問題なのだが、格上のヘッドホンがある程度揃ってからの購入(3年前)のため、今更これじゃないとというジャンルが見つからなかった。
【HPA】某クローン。アンプのせいでホワイトノイズが凄まじいので350Ωのアッテネータを噛まして使用している。

・☆HD650: 開放型。260g。300Ω。音圧感度103dB。¥42,780
高級ヘッドホンの代名詞と言ってもいいほど有名なモデル。HD600の後継機であり、かなりジャンルを選ぶ個性の強い音をしている。他のHD5**番台や最新のHD660Sの方がオールマイティー寄りのように思う。
独特なツンとした臭いのするケースが特徴(今は変わったか?)。また有名なだけあってケーブル類などサードパーティー製の物も充実している。
HD6XXという外観未塗装の廉価版(ともちょっと違う)がMassdrop特注品として販売されている。現在$195とお安い。HD58X($150)というのも存在しており、こちらはHD600の前モデルでこのシリーズのオリジナル。
装着感良好。ただし側圧が多少強めで、ティッシュ箱などで癖を付ける必要があるかもしれない。また珍しく装着位置の上下で音の印象がかなり変わる機種だった。他のヘッドホンよりも多少低めを意識してヘッドバンドを調節すると、帯域バランスが丁度良く感じられた。
低域の量感に目が行くが、高域の一部が尖っており、それにより音の輪郭やこの音場が作られているように感じた(ほんとか?)。この高域による輪郭の感じは、私がゼンハイザーのヘッドホンに共通して持つ音のイメージの一部で、HD598CsやHD700、HD800も似た部分があるように思う。
また少し独特な音場だが広く良好で、目の前の少し先に音像が並ぶ印象だった。顔にまとわりつくような感じとは無縁。また残響が多少水増しされる印象があり、それも音場に影響してるのではないかと思う。
出番割と低域がぼわんとしているため、激しいロックやスピード感を求める曲は苦手、クラシックなどの方が向いているか。好みの問題だとは思うが、中域が美味しいヘッドホンではないように思うのでヴァイオリン類は別に得意ではない印象。うちでは最終的にパイプオルガンと、ガルパン冷泉麻子のキャラソン「メランコリック」専用機になってしまっていた。特に後者は異常に相性が良い。ダウナーなノリの曲、キックの余韻が長めの曲が向いているのかもしれない。
HPA】JADE casa。既に売ってしまったアンプだがかなり相性が良かった。寒色系のアンプが基本的に向いているように思う。HA5000とははっきり相性がよろしくなく、低域が鬱陶しい。音場も死ぬ。

・☆HD800: 開放型。370g。300Ω。音圧感度102dB。¥187,920(※HD800S 国内正規品)
超高級ヘッドホンの代名詞と言ってもいいほど有名なモデル。HD650などそれまでのフラッグシップはほぼマイナーチェンジの用な更新で、下位機種含め似た外観をしていたが、HD800は見た目も値段も音も一気に変わった。というか完全に一から作られたという印象。初期型は低域が少なく、シリアル何番代からだったかは失念したがそれが改善されていたはず。製品登録をするとシリアル番号の周波数特性グラフが送られてくる。布巻きケーブルは割と格好良いが触ると意外と安っぽく、ホコリが付くと掃除し難い。またハウジングの一段低くなっているシルバー部分は非常に傷がつきやすく注意が必要。
なお上記の価格は一応現行品のHD800Sのものを載せたが、HD800当時のものとは大分開きがある。あやふやだが12万円台半ばが国内正規品の最安価格だったように思う。
装着感良好。かなり特殊なイヤパッドで開口部が非常に大きく、耳が当たる心配は無いし肌触りも良い。ヘッドバンドは薄くふわふわしたタイプではないが、形と重量配分が良いのか頭頂部が痛くなるようなことはない。側圧も控えめ。ヘッドバンドの長さ調整周りも非常に良く出来ている。
なおイヤパッドは経年劣化すると黒い粉のようにボロボロ崩れてくる。交換用パッドは9千円ほど。
特徴はなんと言ってもその広大で広大で広大な音場。見た目のバカでかいハウジングやイヤパッドの非常に広い開口部からも想像はつくだろうが、本当に広い。というか音が遠い。音色のキャラクターはかなり素っ気ないストイックな印象で、硬質さを感じるかもしれない。音の線は別に細くない。帯域バランスもフラットっぽく感じる音作り。HD650のふくよかな感じとは全く真逆で、豚骨スープとお吸い物くらい違う。別物過ぎて上位機種・下位機種とは見なせない。ただしHD650で触れた高域の輪郭の感じと、残響の多い感じはある程度共通する。音色と帯域バランスだけを見ればT1と似ているように読めるかもしれないが、T1の方が高域がキツく鮮烈で音の線も細く、その割には低域が緩めなので印象はかなり違う。こちらは締まり気味の低域。T1の音の線がノンコーティング弦だとすると、HD800はエリクサー。
なおHD800Sも試聴したが大分音が変わっており、端的に言うと低域が補強されボーカルも近めに定位するようになり肉感も増した印象だった。次に買う第一候補になっている。
出番やはり音場を楽しみたい曲……だが、硬めの音と中域の素っ気なさのせいで弦を楽しみたいオーケストラなどには私はあまり使わなかった。また金管を聴くと残響の感じがどうにも気になってしまった(原音がどうとかではなく好みではないという意味)。
結局のところ田村ゆかりとSound Horizon全般に使用しており、それは音色の合う合わないをメインにし音場の広さをおまけとして捉えたため。一番合うと思ったのは波打際のむろみさんOP上坂すみれの「七つの海よりキミの海」で、音色のキャラや締まり具合がイントロのスラップに異常に合った。またポコポコといった水音の表現が異常に上手く、サンホラのArkは鳥肌モノ。異常な音場の広さは、音の種類が多くパンも細かく振ってあるようなRoman以降のサンホラで特に重宝した。また音楽ではないが、エロゲで使うと声とBGMに距離があるため没入感が得られた(致すシーンは知らない)。プレイする際のヘッドホンとしては良い選択肢の一つだと思われる。
HPA】JADE casa。私のものはシリアル的に低域の増えた後のものだったがやはり微妙に物足りなく、casaは割合低域の出るアンプだったので非常に相性が良かった。音色もマッチしていた。A2の場合音場などは非常に良いが、アンプの味気なさがモロに出てしまいつまらない音になりがちだった。意外な事にHA5000とは悪くなく、音場の広さが死んでも空間の高さは残るため、すぐ目前にアンプで肉感の足されたボーカルが立っている様になる。ジャンルは非常に限定されるがサブシステムとしては悪くないと思う。

STAX
・☆SR-407+SR-006tA: 静電型。340g。144kΩ。音圧感度101dB。¥121,572(SR-407+SR-006tS)
虫カゴとも言われる見た目と、何より静電型という駆動方式が特徴のヘッドホン。専用のドライバーユニットが必要で、プラグもXLRに若干似た特殊なものであり、普通のヘッドホン端子にはそもそも挿さらない。ドライバは真空管のものと石のもの二つのラインがある。SR-006tAは真空管タイプ。
少し前はSR-307/SR-407/SR-507の三兄弟だったが、現在はSR-L300/SR-L500/SR-L700になり、こちらは後継機というよりも別物で価格帯も一気に上がっている。
なお上記の価格はヘッドホンとドライバを合わせたもの。
【装着感】あまり良くはない。イヤパッドが弾力のある革張りであり、形も縦長なので単純に頭の形にあまりフィットしない。またヘッドバンド自体は悪くなく痛くもならないのだが、長さ調整のスライダーがしっかり固定されるものではないので、気付いたら片側だけ位置が変わっているような事がある。なおイヤパッドは一応販売されており交換できるが、接着剤(両面テープ?)で固定されているためその際は糊跡を綺麗に掃除する必要がある。
【音】ダイナミック型とは全く異なる類の音の粒の質。高番手の砥石で磨いたように音の表面がツルツルしていて、良い意味でも悪い意味でも荒さが無い。抜けが良い点や、帯域バランスは割とMS-PROが似ているかもしれないが、タイプは真逆で向こうがヤンチャならこちらはお淑やか。基本的に中域が美味しく、低域や高域は物足りないわけではないが特別目立たない。音の輪郭がクッキリというタイプではない(かといってボヤけているわけでもない。静電型特有?)のもあり、特にキックなどは大人しめに感じるかもしれない。はっきりと認識するよりも自然と存在しているような印象の低域。音場はAryaと似た系統で広くなく音像が大きい。その為フルオケなどスケール感の要る物や音数が多いものは苦手。またピコピコ電子音も苦手。
【出番】基本的に得意な楽器自体はMS-PROと被る印象だが、比較すると打楽器は少々苦手かもしれない。ただしボンゴなどの革が張ってる感じの表現は上手い。ヴァイオリンなどの弦楽器は異常に上手いが、エレキギターなどはイマイチでどうにも音の粒のキャラが合わない印象。お淑やかと書いたとおりノリ全開の曲よりも少し甘めの雰囲気の曲が合う。また声の甘い感じはMS-PROに並んで最高。購入の決め手は試聴で流した「ネコっかわいがり!」の「dote up a cat!(し・ふぉ・んVer.)」で尋常ではなく合う。またCCさくらの「Catch You Catch Me(さくらバージョン)」。これらのような温かい雰囲気のゆったりとしたベースの曲は非常に良い。MS-PROだとノリの良さゆえに跳ねる感じが出てしまう。またMS-PROでも挙げたIl Giardino Armonicoなど小編成も良い。

ULTRASONE
・★PRO2900: 開放型。295g。40Ω。音圧感度95dB。¥44,980(※購入当時)

ゾネには超高級ラインのEditionと、それ以外の比較的手頃なHFI、PRO、Performanceの3つシリーズがあり、その内のPRO開放型モデル最上位に当たるのがPRO2900。ヘッドバンド周りを改良したPRO2900iという後継機があるがどうやらそれも生産終了のよう。ラインナップ全体をかなり縮小しているようで、あんなにあったHFIシリーズも無くなってしまっている。
ゾネのヘッドホンにはS-Logicと呼ばれている技術が使われており、イヤパッドを外してみると分かるがかなり特異な見た目で、穴の開いた鉄板がドライバと耳の間に存在する。
【装着感】あまり良くはない。i付きでは改善されているが、ヘッドバンドの頂点一部にクッションがある形なので長時間では頭頂部が痛くなる。またハウジングが外向きに90度回転する仕様のせいか、装着する際などはギシギシ音がすることがある。イヤパッドもベロアにしては固めで弾力があり、側圧も結構あるため耳周りが割と圧迫される。その代わり装着中にズレるようなことはない。
イヤパッドの取り外しを反時計回りに回すだけで行える為、非常に手軽に交換する事が可能なのは良い点(たまに意図せず外れるが)。
【音】唯一無二のドンシャリ。S-Logicのせいかゾネのヘッドホンは基本的にどれもゾネ特有の独特な音しており、金属的といえるような高域をしている。その中でPRO2900は密閉版のPRO900と同様に非常に豊かな低域をしており、今まで所持したヘッドホンの中で最も量感があるかもしれない。それでいて開放型であるためか圧迫感や息苦しさが無く、高域もマスクされない。低域の質もゾネ特有の弾ける高域の影響か輪郭がはっきりしており、非常に弾力がある。サブウーファーのように音が物理的に迫ってくる感覚で、ボワつくような感じは全くない。この低域の上でこのバランスの良さはかなり貴重な一台であると感じる。Editionシリーズはさておき、一聴の価値あるゾネの中で一押しのヘッドホン(生産終了だが)。
しかしそれでも、昔のゾネよりは聴きやすくなりはしたものの、人をかなり選ぶと思われる。音場もゾネは独特で、しばらく聞き慣れるまで非常に違和感がある。そして聞き慣れれば割と広く感じる。そういう点も含め唯一無二のように思う。
【出番】低域をガッツリ感じたい時。ロックやポップなど基本的にはノリが良いものが合う。高域の派手さと低域の質も相まってMS-PRO並みのトップクラスのノリの良さ。こちらは金属的チックな音のため生楽器のバンドサウンドなどよりは電子音楽やピコピコ系アニソンの方が合うか。アコギなどは苦手。またしっとりしたり、ゆったりしたものもあまり得意ではない。メタルなども相性が良く非常に楽しいが、エレキギターの表現が特別上手いわけではない。うちでは特にダブステップやブロステップなどベースがギュンギュン動く曲での使用頻度が多く、一番機会が多かったのはFeed Me。White Spiritのような聴いてて脳にキュルキュル来るベースは一度これで聴いてみて欲しい。後はnikiのWAVE。DT1770PROほどではないがFractaやAcuticNotesなども合う。また以外にフルオケが面白く、完全にゾネの音になってしまうが低域の質感が意外とハマる。後は水樹奈々。ソースの粗は気になりにくい方。
【HPA】HA5000。A2だとバランスは良いが味気なさが出てしまう。また割と音量が取りやすい方なのでアンプによってはギャングエラーに注意。

1+. 逆引き

最初はジャンルごとに列挙しようかと考えたが、そもそも楽曲のジャンル分けが難しく悩んでしまったので、私が好きなアーティストごとにそれぞれよく使う機種を挙げていく事にした。なお売却済みであるのに「よく使う」というのもおかしな話なので、該当機種は当時よっぽど使用頻度が高かった場合のみ記載する。
【】はざっくりとしたアーティスト分類。
ヘッドホンの並びは左から使用頻度の高い順。MS-PROなど装着感があまり良くないものは右寄りになる場合がある。またHD598CsとATH-R70xは普段使いしている為ここでは割愛する。DT770 PROが妙に多いが、単純にそれだけ私の好みの音というだけである。

※あくまでも使用頻度の話であり「一番左にある=一番楽曲に合う」ではない事を念頭に置いていただきたい。

【洋系の重め】
Angra: DT1990 PRO, DT770 PRO, MS-PRO
Arch Enemy: DT1990 PRO,
Children Of Bodom: DT1990 PRO, PRO2900, DT770 PRO
Extreme: DT770 PRO
Equilibrium: DT770 PRO, DT1990 PRO
Harem Scarem: Arya, DT1990 PRO, DT770 PRO
Killing Touch: DT1990 PRO, DT770 PRO
Lamb of God: DT1990 PRO
Nightwish: HD800, DT1990 PRO, PRO2900
Sonata Arctica: DT770 PRO, DT1990 PRO

【ポップも含む生楽器有り系】
B'z: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO
Bon Jovi: DT1990 PRO, Arya
fox capture plan: DT1990 PRO, T1
GRANRODEO: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO
Keith Urban: DT770 PRO, DT1990 PRO, MS-PRO
MintJam: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO
Mr. Big: DT770 PRO, MS-PRO
SURFACE: DT770 PRO, DT1990 PRO
The Hu: Arya, DT1990 PRO
家入レオ: DT770 PRO, ATH-W1000X
島谷ひとみ: DT1990 PRO, DT770 PRO, ATH-W1000X
浜崎あゆみ: ATH-W1000X, DT1990 PRO, DT770 PRO

【ギターインスト】
a2c: MS-PRO, DT770 PRO, DT1990 PRO
Andy Timmons: DT770 PRO, MS-PRO
Demetori: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO
Guthrie Govan: DT1990 PRO, MS-PRO
Impellitteri: DT1990 PRO, DT770 PRO, MS-PRO
Joey Tafolla: DT770 PRO
Lee Ritenour: Arya, T1, DT1990 PRO
Liquid Tension Experiment: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO
Tommy Emmanuel: DT770 PRO, MS-PRO
The Black Mages: DT1990 PRO, DT770 PRO, PRO2900

【しっとりボーカル】
KOKIA: T1, Arya
Suara: T1, Arya
RURUTIA: T1, HD650
大貫妙子: T1

【アニメ・エロゲ関連】
Asriel: DT770 PRO, PRO2900, DT1990 PRO
ave;new: PRO2900, DT1990 PRO
Ceui: T1, ATH-A2000X, HD650
Choucho: T1, MS-PRO, ATH-W1000X
Duca: ATH-W1000X, T1, DT1990 PRO, ATH-A2000X
ELISA: PRO2900, ATH-W1000X
eufonius: T1, Arya, ATH-A2000X
fripSide: PRO2900, ATH-W1000X, DT1990 PRO
Kicco: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO,
KOTOKO: ATH-W1000X, PRO2900
Lia: T1, MS-PRO
LiSA: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO, PRO2900
May'n: PRO2900, ATH-W1000X
meg rock: T1, MS-PRO, DT770 PRO, DT1990 PRO
Riryka: DT1990 PRO, DT770 PRO, MS-PRO
Rita: T1, DT770 PRO
YURiCa/花たん: DT770 PRO, PRO2900, MS-PRO
みとせのりこ: T1, Arya, DT1990 PRO
メロキュア: T1, Arya, SR-407
やなぎなぎ: T1,
坂本真綾: T1, Arya
石川智晶: T1
分島花音: T1, Arya, DT1990 PRO
奥井雅美: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO
栗林みな実: ATH-W1000X, PRO2900, DT1990 PRO
川田まみ: DT1990 PRO, PRO2900
中島愛: DT1990 PRO, ATH-W1000X, MS-PRO
藍井エイル: DT770 PRO, PRO2900, DT1990 PRO
佐咲紗花: DT770 PRO, MS-PRO, DT1990 PRO
黒崎真音: DT1990 PRO, PR2900, MS-PRO
桃井はるこ: ATH-W1000X, PRO2900
田村ゆかり: HD800, ATH-W1000X, PRO2900
堀江由衣: ATH-W1000X, T1, PRO2900, MS-PRO
水樹奈々: DT770 PRO, MS-PRO, PRO2900, ATH-W1000X
茅原実里: DT1990 PRO, MS-PRO, ATH-W1000X, T1, PRO2900
小倉唯: T1, ATH-W1000X, HD800
上坂すみれ: HD800, DT1990 PRO
榊原ゆい: PRO2900, ATH-W1000X, DT1990 PRO
彩音: T1, DT1990 PRO, DT770 PRO
電気式華憐音楽集団: DT770 PRO, DT1990 PRO
茶太: T1, MS-PRO, Arya
霜月はるか: T1, HD650, ATH-A2000X

【電子音系】
AcuticNotes, Au5, cYsmix, Dada Life, Mandarinki, Porter Robinson, The Veronicas, XILENTなど: DT1990 PRO, PRO2900
Feed Me: PRO2900, DT1990 PRO

【その他】
Sound Horizon: HD800, ATH-A2000X, DT1990 PRO, T1
クラシック(フルオケ): T1
クラシック(小編成): Arya, SR-407, MS-PRO
ピアノソロ: MS-PRO, Arya, T1, HD650
サントラ類: HD800, T1
梶浦由記: T1
エピック(トレイラーミュージック含む): DT1990 PRO, T1, PRO2900, HD800

2. リスニング環境構築の優先順位

※特別詳しくない方を想定して書いています。内容も極当たり前の話かもしれません。

「少し良いヘッドホンを買ってみた、興味が出て来たけれどどこから手を付けていこう?」という類の話。なんだかゆるふわHow to本の謳い文句のようになってしまったが、実際の所これは中々難しい話で、金銭や置き場所の問題、聴くジャンルの多様さ、ヘッドホンを複数持つのか、HPAを複数持つのか、いわゆるヘッドホンスパイラルを許容出来るのかなどで答えが変わる。
そういう複雑な話である為、あくまでどこの馬の骨とも知れぬ私の一つの考えとして受け取っていただければ幸い。
なおポタはすっかり距離を置いてしまい全く詳しくないため、ここでは据え置き環境のみ扱う(据え置きもそんなに詳しくないかも知れないが)。

最終的な出音への影響度合い
ヘッドホンの場合は基本的に「トラポーDACーHPAーヘッドホン」という接続になるが、基本的に出口に近ければ近いほど音への影響が大きい。なおそれぞれ分けて書いたが、DAPやPCなど1筐体だったり1チップにまとまっている場合も多い。
非常に大雑把な感覚だが「DAC:HPA:ヘッドホン=1.0:2.5:6.5」くらいではないかと思う。なので基本的には影響が大きいものを優先すればいい。しかしここで少々ややこしいのがボトルネックが存在しうる事で、影響度合いが低いはずの機器であっても、ある一定レベルを下回るとそこが足を引っ張り一気に出音のレベルに悪影響をもたらす。例えばHPAとヘッドホンが高級品であっても、トラポ&DACが昔のガラケーで平型端子出力だったら出音もお察しという話である。オーディオはよく水の流れに例えられ、トラポやDACは「上流」と呼ばれるが、源泉から泥水が流れて来たらどうしようもない。最低限水道水レベルは確保したい。

水道水レベル
どのレベルを水道水とするか。これも難しい。最近はPCのオンボの質も上がっているので、ただ聴くだけならサウンドカードやUSB-DACなど無くてもただヘッドホン端子に挿すだけでそれなりに鳴ってしまうかもしれない。特に現行デスクトップのちょっと良いマザボには大抵ALC1220が積んであり、普通に使うには十分良く出来ている。まあその下位機種のALC892やALC889が一般的な水道水で良いのではないか(ライン出力ではなくヘッドホン出力の話になってしまったが他に良い例が思いつかなかった)。

本題の「どこから手を付けるか」
単純に影響度合いから行くとヘッドホンを増やすまたは買い換える事が一番である。しかしそれは音の向上というより新しい音を買うという類の話であり、そもそもヘッドホンを買って喜んでいるところに他のヘッドホンを買えと言うのはただ水を差しているだけかもしれない。
というわけでまずはHPA(なおここから先は全てPCトラポUSB接続前提)。5万円程度までのエントリークラスは基本的にDAC&HPAの複合機が多く、単体HPAのボリュームゾーンは大体10万円弱くらいからの印象。その為予算たっぷりの場合を除けば、まずこれらの複合機を買うのが無難のように思うし、実際そういう方が多いのではないかと思う。大抵DAC部かHPA部どちらかに力が入っていて優秀だったりするので、その点により後のアップグレードをどうしていくかが分かれる。
個人的なオススメはやはりHPA部が優秀なものを買う事で、それは単純にHPA部の方が影響が大きい為に「初めて買ったオーディオ機器」の感動も大きいからである。この場合、ヘッドホンとの相性が良く音の傾向も気に入れば、次のアップグレードは単体DACの購入だろうか。10万円クラスでもかなり向上を感じるはずである。もしくは違う傾向の単体HPAを探して二台体制。高級複合機に行き、そちらをDACとしライン出力を持ってきてのHPAニ台体制などもありかと思う。
逆にDAC部が優秀なものを買う場合は、音が気に入ればそれで一旦完結し、ゆっくり性格の違う単体HPAを物色するのが良いかと思う。
また最近はノートPC等に丁度いいUSBスティック型のDAC&HPAも増えてきた。原音超えてるDenDACなどが昔からあったが、AudioQuestのDragonFlyやiBasso dc01/dc02などが比較的新しくありサブなどに面白いかも知れない。
ちょっと番外だが、少し悩むのは楽器をやっている人など既に立派なオーディオインターフェースを持っている場合である。まず間違いなくASIOに対応しているし、ドライバも良く出来ていて遅延対策でジッターも少ない、出力も豊富でそのままDDCになったりもする。FireFaceなどは元々ヘッドホン出力に定評があるし、ここ最近はわざわざヘッドホンオタク向けに複合機を出したりもしている。もし現在のものが質の良いDACの場合はそこからHPAへラインで出すのも良いかもしれない。ただし、基本的に力が入っているのはADC部分でDAC部は最低限というのが多いのではないかと思う(想像です)。結局DDCとして使うのが一番多いか。

DAC
対応フォーマットや入出力などの基礎事項を除けば、DAC選ぶ際にまず間違いなく積まれているDACチップが気になるかと思う。現在多く見かけるのは型番AKで始まる旭化成のものと、ESで始まるESS Technologyのもの。ポタの一部やマランツ製品などのCSで始まるシーラスロジックのものか。以上の3社があり、現行の据え置きでは大体前2つがほとんどかと思う。
実際選ぶ際にそれらをどう判断するかという話だが……DACはDACチップ以外のアナログ段の影響も大きく、同じチップだから同じ音というわけでないし似た傾向とすら言い切れない。何が言いたいかと言うと、DACチップを重視するあまり選択肢を狭めるのは良い手ではないかもしれないという事である。むしろDACチップ自体よりも、そのDAC全体のメーカーの方が音の傾向はあてになるように思う。S/N比や全高調波歪率などは基本新しいDACチップの方が優れているが、だからと言ってDACの出音も一概に新しい方が良いというわけでもない。
もちろんハイエンドDACチップを積んでる事自体が製品グレードの目安になる面もあるので、判断の一助には大いに有効だと思う。
(偉そうに書いてる私もAK4499聴いてみたい……)

音声フォーマット
今時のDACであればまずDSDもハイレゾも対応しているが、少し古い物になるとろくに対応していない場合がある。特にこれらのデータ量が多いものはDACにUSB接続(特にCLASS 2.0)が普及するまで難しかったのであろう。実際にこれらが必要かはともかく、中古DACを漁る場合は注意が必要である。個人的なところでは、DSDはDAWの問題があるのかPCMとはトラックダウンの時点で別物なのではないかと思うし、ハイレゾも24bitでさえあればサンプリングレートは割とどうでも良いように思うのが実際に聴いていての正直な感想である。
しかし、とりあえず再生できる環境があるというのは精神衛生的にも利点

アガリ
HPAやDACに満足し、ヘッドホンも好みの物を見つけた、そうなると次は恐らくPCトラポの場合DDCかと思われる。またはケーブルやクリーン電源などのアクセサリー類か。
私的にこれらはHPAやDACに比べると大分かなりとても影響が小さい。DDCは手頃なものもあるが、ゴツいクロックになると目が飛び出るほど高価になるし、クリーン電源もお高い。精神衛生のために一度ある程度の物を買ってしまって以後気にしないというのもありだと思うが、基本的にこれらはDACもHPAもヘッドホンもある程度物色し尽くしたアガリに近い人が手を出す物のように思う。
特に2000年代などのヘッドホンが流行り始める前は、PCトラポが少なくDACのUSB入力はおまけのような印象だった。USB入力自体が無いものも多かった。その為同軸で入れるためにDDCが流行ったりしたが、今はアシンクロナスモードだデジタル・アイソレータだ謳い文句になっているくらいにはUSB入力に力が入っているように見える。DDCの優先度は大分下がったように感じる。

クリーン電源
上のような話の後でなんだが、クリーン電源は住環境によってはかなり精神衛生に貢献する。例えばうちでは普段出力101V程度のコンセントと同じブレーカーのコンセントでドライヤーを使うと97V程度まで低下する。また集合住宅のせいか、お隣さんが掃除機をかける度に私の部屋の電子機器がコイル鳴きする事もあった。一度こういう経験をしてしまうと、オーディオ機器くらいはKOJOのArrayやPS AudioのPowe Plantなどリジェネ系のクリーン電源から取りたくなるものである。
安い物であれば楽器向けのFURMANのパワコンなどがある。

最後に
恐らく複合機を買った時点で、HPAよりも新しいヘッドホンに意識が行くかもしれない。そして気付いたらいっぱい増えているのだ。
ヘッドホンを複数持つことの利点は、気分やジャンルで使い分けが出来る点、また「HPAが1台増える≒ヘッドホンもう1セット分手持ちの音色が増える」に等しいので、ヘッドホンが多ければ多い程アンプを買った際の楽しみが増えるという点である。
どのタイミングでヘッドホンを増やすか、そもそも増やさないかという話は完全に個人の考え次第だが、よくあるタイミングとしては「曲自体は好きなのに音がどこかしっくり来ない」という曲が出て来た時が多い。そしてヘッドホンを物色し始め、ソースが悪いと我慢するか、買い替えるか、買い増すか選ぶことになる。あと一歩という程度であれば選択肢にはHPAやDACの変更まで入ってくる。この際に注意が必要なのは、不満点をはっきりさせ、"自分が欲しい音"を物色を始める前にある程度定めておくこと。でないといたずらにスパイラルが拡大していく。が、趣味なのでもちろんそれもありかもしれない。


ここまでで27,000字程あり、読んでくださった方は本当にお疲れさまでした。実はこうした作文は初めてで、思いの外興が乗り予定の何倍もの文字数になってしまいました。冗長甚だしいかもしれませんが満足しています。最後なんて面倒くさい説教おじさんのようになってますが、お許しください。
お読みいただき有難うございました。

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