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メルヘンの原点、それは、だるま。

絵本作家のはしくれだというのにメルヘンを失いつつある自分にムチ打つため、まずは強制的にメルヘンを注入しようと考えました。

調べていくうちに、群馬にメルヘンがあることが発覚。

『 道の駅ららん藤岡 』に、「グルメプラザ」「アグリプラザ」とならび、「メルヘンプラザ」なるものがあるのです。

メルヘンなプラザ。

メルヘンにあやかれるかもしれない。

よし。いこっと。

せっかくだから、近隣の街をぷらぷらしようかな。

近くにある大きな街は、ええと、高崎か。

ん? 高崎?

高崎といえば………………だるま!

日本一のだるまの生産地ではないですか。

なんと。なんとなんと。

私が作家デビューした短編集『 山田商店街 』の記念すべき第1話は、「だるま食堂」。

新鮮なだるまを湯むきして粗塩をすりこみ、三枚おろしにして、焼だるま定食や煮だるま定食にして提供する飲食店のおはなしです。

『もしもだるまにであったら』という絵本もだしています。
もしも、野生の「だるま」や「こいのぼり」や「ししまい」に突然でくわしてしまったらどうすればよいかを、こどもにもわかりやすく説明したハウツー本です。

絵は福島モンタさん。全ページ、赤青えんぴつ1本で描かれています!


自己紹介のアイコンも、ずっと、だるま。
右目に「山」、左目に「田」と入れています。

だるまは、私のメルヘンの原点といっても過言ではありません。

これはきっと、だるま様のおみちびきにちがいない。

私は車をブーンと走らせ、群馬にむかいました。

高崎市にさしかかると、道路脇のしげみのなかに、だるまが何体も並んでいます。

これが本場の野生のだるまというやつか。

もし道端でバッタリだるまに出会ったら、目をそらさず、にらめっこしましょう。
だるまが「敵ではない」と判断したら、いっしょにあそんでもらえます。
脱皮したてのだるまは、生温かくてベタベタしているので、さわってはいけませんよ。
大人のみなさんも、覚えておいてくださいね。

まずは、だるま様にご挨拶するために、「だるまのふるさと大門屋」へ。
公式サイトによると、年間7万個ものだるまを製造し、販売されているそう。
そのすべての顔に筆を入れているのは、大門の四代目、伝統工芸士の中田純一氏。
だるま界の要職につく傍ら、カーレーサーでもあられます。
その勇姿は、サイト内にある「中田の部屋」でごらんください。

観光バスもとめられる、広々とした駐車場に到着。
大門屋の店内に入ると、大だるまの大ピラミッド。

圧巻。おそれいりました。

店内は、めくるめく、だるま、だるま、だるま。

四方八方、大中小の、だるま、だるま、だるま。

工房では四代目がだるまをつくっていらっしゃいます。
頭部が、まるでだるまのように、まんまるで、ご立派。
飼い主と飼い犬って似てることが多いですけど、あれは似ている犬を飼うのか、飼っているうちに似てくるのか、どちらなんでしょうね。
四代目の場合は、もともとだるまに似ていたのか、だるまをつくっていたからそうなったのか。はたまた四代目ともなると、先代から受け継がれてきた血筋なのか。もしかすると初代がだるまに似ていたからだるま製造をはじめたのか。やっているうちに次第に代々だるまにひっぱられてきたのか。謎は深まります。

しかしほんとうに、店内にはだるましかありません。
だるままんじゅうとか、だるまクリアファイルとか、だるまウイスキーとのコラボグッズとか、そういうたぐいのものは見当たらず、がんこに、だるま。
いさぎよくて、かっこいい。
高崎だるまの顔も、かっこいい。
カーレーサーでウエイトリフティングもやっている四代目、かっこいい。

群馬のメルヘン旅は、だるまからスタートしました。

原点に立ちかえらせてくれて、ありがとう、だるま様。

タクシー待ちかな。

(つづく)

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