あくにゃん × NICE73対談「私たちの偏愛的K-POP 2023! やっぱり大好き新大久保」後編 | Numero TOKYO
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あくにゃん × NICE73対談「私たちの偏愛的K-POP 2023! やっぱり大好き新大久保」後編

K-POPアイドルから地下アイドルまで、あらゆる男性アイドルを追うアイドルオタクであり、社会人YouTuberのあくにゃんと、K-POPイベントのMCや作詞作曲、ボーカルトレーナーを務めながら自身が大のK-POP好きであるNICE73を迎えて、2023年のK-POP談義スタート! 後編は、世界的な人気となったNewJeans、今年のデビュー組、推し疲れ問題まで語り尽くします。

世界中がNewJeansに夢中になっている件

──今年はとにかくNewJeansの話題でもちきりでした。コカコーラやマクドナルドのCM出演や、サマソニやロラパルーザでの盛り上がり、さらに日本では「NewJeansおじさん」という言葉がバズワードにもなりました。

あくにゃん「デビュー自体は昨年7月ですよね。昨年のKCONではNewJeansよりもNMIXXに声援が大きかった印象があるんですが、この爆発的な人気は、一体何が起きたからなのか不思議でした」

NICE73「デビュー当初はプロデューサーのミン・ヒジンさんに対する注目度が大きく、彼女たちより、このプロジェクト全体に関する話題が多かったですよね。音自体は最初から新しかったので、『Hype Boy』でそこに注目が集まったのが大きいのかも。しかも、ヒップホップやR&Bのアーティストがカバーしたり、ソウルの街中でもずっと流れていたり。耳障りじゃないし、オシャレな雰囲気の楽曲だからこそ、幅広い人が手に取りやすかったのかもしれません。世界中に認知されて、今や韓国の人たちが誇りに思うアーティストになりました」

あくにゃん「韓国でもNewJeansが流行りすぎて『女の子たちがコテを捨てた』とまで言われているそうですね。ストレートアイロンだけあればいい、という。『Hype Boy』は僕のタイムラインに最初、MVの考察がたくさん流れてきたんですね。僕自身は考察界隈に疎いのですが、NewJeansの『Hype Boy』と(G)I-DLEの『Queencard』はとにかく考察の量が多かった。そこから話題になったのかなと思ったんですが」

NICE73「そこをくすぐるのは、ヒットのトリガーとして、ひとつあるかもしれませんね」

──売上を見ても、今年はNewJeans、IVE、LE SSERAFIM、(G)I-DLEなど、ガールズグループが強い印象がありますが。

NICE73「IVEは韓国の小学生にとって、もはやプリキュアのような存在になりました。LE SSERAFIMは、NewJeansと同じく、楽曲に力がありました。どこかで曲を耳にして、気になって調べてみたら、この子たちだったのかというパターンも多いそうです」

リスニングからBGMに
TikTokが変えた曲の聴き方

──FIFTY FIFTY『Cupid』、H1-KEY『Rose Blossom』など、今年も“中小事務所の奇跡”がありました。

あくにゃん「『Cupid』は、TikTokやVlogのBGMにも使われているのを見かけました。IVEやLE SSERAFIMは振りコピも多かった印象です。BTS JUNG KOOKの『SEVEN (feat. Latto)』は多くの日本人アイドルもカバーしていたし、K-POPとは関係のない雑貨紹介やミニマリストのVlogでも使用されていて、汎用性が高いんだろうなと思っていました」

NICE73「確かに、SNSによって曲の扱い方が変わりましたよね。以前は“曲を聴く(リスニング)”だったけれど、今は“BGM”でも使う。そう考えると、NewJeansはBGMに対応できるし、ダンスカバーにも使えます」

あくにゃん「BGMって言い得て妙ですね。昔のK-POPは、いかに印象に残すかというところで勝負してたから、聞き流すなんてできなかった…」

NICE73「今はTikTokでいかに跳ねるかがヒットの要素ですよね。imaseさんの『NIGHT DANCER』もTikTokやSNS全般でよく耳にしました。それから、IZ*ONE出身のイ・チェヨン『KNOCK』もTikTokから火がつきました。ヒットしてよかった! チェヨンおめでとう!」

──ボーイズグループでは、SEVENTEEN『Super』がグループの記録を刷新する大ヒット、TOMORROW X TOGETHER(以下、TXT)は『SUGAR RUSH RIDE』のヒットがあり、ロラパルーザでのヘッドライナーも務めました。

あくにゃん「MOA(TXTのファンのこと)として個人的に嬉しかったのが、『少年ファンタジー』で『SUGAR RUSH RIDE』と『ある日、頭からツノが生えた(CROWN)』が課題曲になったこと。課題曲は練習生たちが憧れる曲だから、ついにTXTもここまで来たんだと感動しました。京セラドームでの公演もファンたちはみんな盛り上がってたし、日本のテレビ番組にも出演して、日本のお茶の間での認知も広がってきました。今後がすごく楽しみです」

実力派が続々デビュー!
今、注目すべきグループは?

──ここで、今年のデビュー組をおさらいしましょう。ボーイズグループは、ZB1やFANTASY BOYSの他にも、8TURN、HAWW、xikers、XODIAC、The Wind、BOYNEXTDOOR、LUN8、Hi-Fi Un!corn、RIIZE、POWなど。ガールズグループはMAVE:、PRIMROSE、Feverse、tripleS、LIMELIGHT、X:IN、ADYA、KISS OF LIFEなど。これからデビューを控えるグループもあります。

NICE73「すみません、The Windについて熱く語ってもいいですか。彼らはHIGHLIGHTが設立した事務所からデビューしたんですが、K-POP全体的の海外志向が強まる中、彼らは『俺たちのK-POP』をやってくれるんです! 人生においてこの時期のこの瞬間は一度きり。それを大切にしてくれて、もう大好きです!!」

──BOYNEXTDOORは7月の「INSPIRE TOKYO」で初来日を果たしましたが、会場がものすごくヒートアップしていました。

NICE73「ZICOがプロデュースしているし、HYBEも力を入れてるのを感じます。ガールズグループで私が注目しているのは、tripleSとKISS OF LIFEです。tripleSはまだ全貌は見えていませんが、OnlyOneOfやLOONAを手がけたチョン・ビョンギさんが統括プロデュースしているだけあって、楽曲もいいし、これからが注目です。KISS OF LIFEは、私の青春時代である2000年代のR&Bやポップスの要素が満載の曲調で、すごくドキっとさせられたし、TikTokでどこでも切り取れる構成になっています。メンバーのNattyはすでに8年ぐらいキャリアがあるから、歌もラップも上手です。KISS OF LIFEは“起死回生”という意味なんですね。同じ事務所のHOT ISSUEが“ホットな話題”になれずに1年未満で解散したので、事務所的にも今回は起死回生なんだろうなと、個人的にエモい気持ちになっています」

あくにゃん「今年のデビュー組はとにかくZB1が強いから、他はどこまで頑張れるかですよね。コロナのあたりから、ジャニーズしか知らなかった人がK-POPを好きになったり、その反対もあったり、界隈を横断するオタクが増えたと思います。でも、オタクとて限界はあるので、例えば片手にK-POP、もう一方にLAPONE()があると、金銭的にも時間的にも、もうキャパシティの限界です。以前から、オタクの限界が懸念されていましたが、いよいよ取捨選択しないと生きていけない時代がやってきた気がします」

NICE73「来日ライブもたくさんあるし、そのたびにグッズが販売されて、ポップアップストアやカフェがあり、しかも、弟グループがデビューするとそれもチェックして……。大変ですよね」

※LAPONE…LAPONEエンタテインメント。JO1、INI、DXTEENが所属する。

ソロ・ユニット活動も活発に!
日本から韓国経由で欧米を目指すグループも

──今年はソロやユニット活動も多いですよね。SEVENTEENのJUNのソロとBSS、TWICEからJIHYOのソロやMISAMO、NCTからNCT DoJaeJungやTAEYONGのソロ、TREASUREのT5、PURPLE KISSのSWAN、MAMAMOO+、SF9のフィイヨン、DAY6のYoung Kなどがありました。

NICE73「DKZのNINE to SIXと、ジェチャンのソロもあります。LOONAのユニット、ODD EYE CIRCLEの『Version Up』も“俺たちのK-POP”で最高でした!」

あくにゃん「K-POPの男性アイドルは、兵役があり一時的な活動休止が避けられないので、ソロやユニットという体制は相性がいいですよね。個人的には、GOT the beatなどのアベンジャーズ体制のほうがコンテンツとして面白いですけど、ただ、ファン目線で考えると、そういった事務所内ユニットはある意味、選抜にも見えます。ユニット活動期には全体活動がないわけだから、選抜された理由をファンに対してどう説明するんだろう、という疑問は少し感じてしまいます」

──今年の話題としては&TEAMの本格的な韓国活動、XGの快進撃、JO1やINIもM COUNTDOWNに出演するなど、日本から韓国を舞台に活動するグループも増えましたよね。

NICE73「XGに関しては、最終的にアメリカを目指すにあたって、韓国を経由すれば欧米にリーチがしやすいことが証明されたと感じています。XGはデビュー時から実力があり、他の新人グループとはレベルが違いました。彼女たちを見て、BoAさんを思い出したんですよ。彼女が“タイトなジーンズにねじ込”んだとき、圧倒的な実力に日本中が驚きました。それと同じように、今、韓国もアメリカも、XGの存在に驚いていると思います」

あくにゃん「僕がINIやOCTPATHを推してるのは、彼ら自身がクオリティを重視しているから。J-POPなのかK-POPかは関係なく、練習量に裏打ちされたあのパフォーマンスを体験したら、もう戻れません。今は、韓国の音楽番組に出演することが、ひとつのステータスになっています。アイドルも日本だけで活動するより、韓国の音楽番組に出演することがブランディングにつながりますよね。アイドルに限らず、今は、化粧品でも食べ物でも、“韓国で人気”と売り出すと、とくに10代20代には響きます」

NICE73「時代が変わりましたよね。私の上の世代だと、まだ『目指すならアメリカでしょ』という風潮が根強いんですが、そんな考え方だと第二のXGは輩出できないんじゃないかと思います」

──アイドルだけではなく、ファンがコンサートのために渡韓したり、海外のファンが来日することも増えました。

あくにゃん「嬉しいことだなと思うんですけど、国ごとにルールが違うから、いつも撮影のことで揉めますよね。それもあってか、限定的に数曲だけ撮影可能というライブが増えました。THE BOYZのたまアリの公演が良かったのは、トロッコタイムが撮影可能なこと。メインステージから遠い席でもある程度、近い距離で撮れることが保証されていました。ただ、今、ライブのために海外に行くには、チケットの価格、航空代、物価全て上がってるから、一般的な所得ではやっていけないですよね。だから、みんなもう限界突破しているのかな」

お金と時間のやりくりに疲れ果て…
どうなる? 推し疲れ問題

──「推し疲れ」問題についてはどうですか。

あくにゃん「ヨントン()、握手会、ハイタッチ会、全て抽選だから、カムバするたびにCDを大量に買わなきゃいけない。よく比較されるんですが、AKBはCDを1枚買えば、握手券が1枚封入されていたんです。抽選じゃなかったんですよ。老害しちゃいますけど(笑)、昔のアイドルは握手会で8時間くらい立ちっぱなしでした。でも今は、ヨントンなら座ったまま。以前に比べて、アイドル側の労力が減っている代わりに、オタクが際限なくお金を積まなきゃいけない。グッズもチケット代も高いし、金銭的な推し疲れが出てきても仕方ないと思います。それに、最近、数万円をはたいて10秒の握手会、1分のヨントンに価値を見出すファンが少なくなってきたような気がして。以前なら、タワレコでCD100枚入りのダンボールを何箱も購入する猛者がたくさんいたのに、先日、CDの発売日にタワレコで見かけたダンボールウォーリアーは1人だけ。そりゃそうだよな、と思いました」

NICE73「最初の話題に戻るけど、そうしたら、やっぱり新大久保に足が向くのかもしれませんね」

あくにゃん「確かに、しのくぼドルが推し疲れの人たちのセーフティーネットのようになっているのも事実です。大手アイドルを推していて、その推し疲れを癒すために新大久保に通っていたはずなのに、みんな、大手よりしのくぼドルにハマっていくんですよ。ちなみに、かつてホス狂()だった子に聞くと、ホストはお金を使わない子に対してはシビアだけど、しのくぼドルはそんなにガツガツしてないし、みんな優しくしてくれるから、ホストよりいいそうです」

※ヨントン…ファンとアーティストが1対1で行うビデオ通話のファンサービス。たいてい、CDを購入すると応募券が同封されており、抽選でヨントンに参加することができる。

※ホス狂…ホストクラブのホストに夢中になり、連日お店に通ったりホストに大金を貢いだりする人のこと。

──なるほど。推し疲れには新大久保が効くかもしれない、と。

あくにゃん「僕自身、しのくぼドルにハマったのは、就職活動の時期だったんです。精神的に辛くなると、新大久保で心を整えるという。大手はライブに行くまでに抽選があって、お金を積んでヨントン30秒……。メンタルケアに至るまでの行程が長すぎます。僕がYouTubeで、新大久保のオタクたちの抗争や、トンデモエピソードを面白く話してしまっているので、怖がってる人もいるかもしれないけど、普通に楽しんでいる人もたくさんいます。それに、今は昔よりも、事件は減りましたし、お客さんの幅も広がっているので、一回行ってみると面白いと思います」

NICE73+あくにゃん K-POP PLAYLIST

【NICE73おすすめの3曲】

tripleS / LOVElution『Girls’ Capitalism』

「トSのユニット・LOVElutionの『Girls’Capitalism』はサイコーすぎました! プロデューサーのチョン・ビョンギさんは本当に素晴らしいです」

KISS OF LIFE 『Shhh』

「KISS OF LIFEのこの曲は、最近のK-POPの傾向から見ても、とても攻めており素晴らしすぎます。今後の活躍が楽しみな実力派です」

JEON SOMI『Fast Forward』

「SOMIさんの勢いがすごい! 曲、振り付け、スタイリング、全てスタイリッシュで、韓国でもバズりました。“クイーン爆誕”感満載の1曲です」

【あくにゃんおすすめの1曲】

FANTASY BOYS『NEW TOMORROW』

「今はとにかくFANTASY BOYSです。9月21日のデビューに合わせて韓国に行ってきました! ファンタジーさと爽やかさを大量に浴びられるので、ぜひMVも見てください!」

前編を読む

Photos: Ayako Masunaga Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto

Profile

あくにゃん “ヲタクをするために生きている”をモットーに、K-POPをはじめジャニーズから地下アイドルまで、男性アイドルを中心としたさまざまな沼を熟知した、その道10年以上の“プロのヲタク”として活動中。2021年に初の著書「推しがいなくなっても、ぼくは現場にいる」を出版。じぃやとの掛け合いが人気のYouTubeチャンネルも配信中。
Twitter: @akunyan621 Instagram: @akunyan621 YouTube: @akunyan
NICE73ナイスななさん 韓国にて歌手として活動後、K-POPグループの日本語の訳詞、日本オリジナル楽曲の作詞、作曲、レコーディングボーカルディレクションなど、制作にも携わる。近年、韓国関連の各種イベントでMCや、テレビやラジオのナレーションを担当。Numero.jpでは「大人のためのK-POP入門」2021年「K-POP忘年会」、2022年「K-Pop座談会」にも登場。 Twitter: @NICE73555 Instagram : @nice73 YouTube: @NICE73deSHOW

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