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Health care reform
医療改革

第一章 現状認識

日本が直面する高齢化と長寿化は、国の将来に深刻な影響を及ぼしている。高齢者を支えるために現役世代に課せられる社会保険料の負担は限界に達し、この重圧は経済および社会の活力を蝕み続け、少子化という新たな社会問題を深刻化させる要因になっている。さらに政府は現在、「子育て支援金」の名の下で現役世代へのさらなる負担増(実質増税)を画策しており、このままでは国の活力や財政基盤が毀損されるだけでなく、医療や介護を含む社会サービスの持続可能性自体すら危ぶまれる。こうした負担の大きな要因になっているのが、年間40兆円を超え、なおも増え続けている我が国の医療費であり、その制度改革の議論をこれ以上先送りすることはできない。

そもそも、医療費は介護費と合わせて日本のGDPの約1割を占め、経済規模で言えば自動車産業と同等である。しかし、その内実は大半が税と保険で賄われており、市場のチェック機能が働きにくい。加えて、人件費の比率が7割にも達する労働集約型の産業であるため、資源の配分や効率性の面で問題が生じやすい。そのため、この日本最大規模の産業には人件費の適正化や効率的な運用モデルへの転換といった医療産業全体の構造改革が求められている。

すなわち、今こそ持続可能な医療制度の構築を核とした抜本改革を断行せねばならない。「生産性革命」ともいえる大改革によって医療システム自体の持続可能性を高め、将来にわたって質の高い医療サービスを全ての国民に提供できる体制を確立するべきである。

聖域なき改革を断行して歳出を抑制すれば、少子化対策としても第一に行うべき現役世代の負担軽減、すなわち現在の高すぎる社会保険料負担を軽減できるのはもちろんのこと、政府の「子育て支援金」制度のように医療保険料を増額・目的外使用して効果が不透明な子育て施策にバラまくという短絡的な手法に頼ることなく、他分野の歳出歳入改革と合わせて、少子化問題の真の解決に必要な財源は確保できる。すでに我が党は昨年6月、「こども未来戦略方針」に関する提言書(維新版・異次元の少子化対策)の中で社会保障制度を含む徹底した歳入歳出改革によって少子化財源を確保することを提起してきたところであるが、その中の医療制度改革について、本政策提言の中ではさらなる具体化を図った。

誰もが等しく歳を重ねるからこそ、構造改革によって世代間格差のない持続可能な社会保障制度を再構築していくことが重要であり、そのための抜本改革案「医療維新」をここに提言する。

第二章 対応方針

以上の現状認識の下、次の基本的な方針に基づいてわが国の医療制度医療を抜本改革すべきである。

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    持続可能な医療制度への抜本改革

    急速に進む高齢化に伴う医療費が増大する中、どのようにわが国の医療を持続させるかが最大の課題である。そのため、以下の点につき抜本的な改革に取り組む。

    ① 給付と負担の見直し、世代間格差の是正
    後期高齢者への過度な給付と現役世代への過度な負担という構造問題を抜本的に是正するため、窓口負担改革や保険制度改革等に取り組む。

    ② 医療産業の生産性およびサービス品質向上のための構造改革
    自動車産業にも匹敵する一大産業である医療サービスの生産性および品質向上を図るため、診療報酬や医薬分業の体系等の構造改革を行う。

    ③ DXによる生産性の向上
    上記の改革を行うためには、医療分野におけるデジタル化が不可欠である。医療情報の一元管理やオンライン診療等の医療DXを推進する。

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    健康で安心できる医療制度の構築

    医療制度の持続化を図る上で忘れてならないのが、国民の健康と安心を確保することである。低所得者等への手当てや地域医療体制の充実等を着実なものとする。

    以下、この方針に基づき(1)窓口負担改革、(2)制度改革、(3)生産性向上の観点から具体的な改革を提言し、充実した医療制度の持続可能性を高める。同時に、社会保険料の負担軽減・少子化対策財源の捻出を実現し、豊かな社会保障と現役世代の活力の好循環を生み出す。

第三章 具体的な改革提言内容

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    窓口負担改革

    高齢者医療制度の原則3割負担化

    日本の高齢者医療制度は窓口負担割合が低率に抑えられているため、世代間での給付と負担の格差が顕著に生じており、少子高齢化が進む中での財政負担の増大が財政上の持続可能性を著しく損なっている。この低負担率は、高齢者の頻回受診をも誘発し、結果として医療提供の質を向上させるためのインセンティブを弱めている。具体的には、低い窓口負担が医療利用の過剰を招き、医療資源が必ずしも効果的に利用されていない状況を生んでいる。

    そこで、世代間での公平性を確保し、医療サービスの効率と質を高めるために、高齢者医療制度における窓口負担を一律に現役世代と同じ3割負担(※)とする。ゼロコスト問題が指摘される生活保護の医療扶助にも、「低所得者等医療費還付制度」(後掲)の創設を前提に一定程度(ワンコイン)の負担を求める。
    ※現在1割負担の高齢者については、大幅な窓口負担増を緩和するための経過措置として、2割負担への移行から始めることも検討する。

    低所得者等医療費還付制度の創設

    窓口負担を一律3割にした場合、低所得者・生活困窮者等への負担増が懸念される。マイナンバー制度、マイナ保険証をフル活用し、年齢及び生活保護受給の有無にかかわらない低所得・低資産者等に向けた医療費還付制度「低所得者等医療費還付制度」(仮称)を創設する。本制度により低所得者・生活困窮者等への還付による負担軽減を実現しつつ、生活保護受給者にも一定の自己負担額を導入することで、医療利用の適正化を促進する。将来的には、より普遍的な「給付付き税額控除」制度の体系の中に位置付けていく。

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    制度改革

    後期高齢者医療制度の税財源化

    後期高齢者医療制度の現行財源構造は、現役世代からの支援金等に大きく依存しているが、この方式は急速に進む高齢化の中で持続可能性と公平性の観点から問題を抱えている。特に、「給付と負担」の関係が不明瞭なまま現役世代の負担が増え続けており、社会保障負担の公平性が損なわれている。

    このような背景をふまえ、現役世代から後期高齢者医療制度への支援金等を廃止し、後期高齢者医療制度を完全に税財源に基づくものに移行する。これにより、後期高齢者医療制度の福祉化を推進し、「給付と負担」の対応関係(対価性)の明瞭化を図る。

    後期高齢者向け診療報酬体系の再構築

    後期高齢者の心身の特性を踏まえた診療報酬体系導入の試みは、民主党政権下で廃止された経緯があり、その後の改革は停滞して現在に至っている。そのため、慢性疾患を持つ後期高齢者への継続的なケアや、終末期の相談支援を適切に評価する仕組み等が不足している。

    そこで、後期高齢者医療制度が既に定着していることを踏まえ、後期高齢者の生活を重視し、その尊厳に配慮しながら適切な医療を提供することを促す、後期高齢者向けの新たな診療報酬体系を再構築する。具体的には、慢性疾患管理における医師の継続的な診療計画作成を適切に評価し、複数の医療機関が連携して高齢者をサポートできる体制を整える。また、終末期相談支援料の適正な評価を行った上で、再導入を検討するなど、後期高齢者及びその家族が終末期の医療に関して意思決定を行う過程をサポートし、その意思が尊重されるような体制の構築を目指す。これらの再構築により、後期高齢者が抱える複雑な医療ニーズに対して、より個別化された質の高い医療サービスの提供を可能にすると同時に、医療費の適正化にも寄与する。

    高額療養費制度の見直し

    高齢者の医療費3割負担化や後期高齢者の診療報酬体系の再構築は、医療制度の財政的安定に一定の効果をもたらすものの、制度を持続可能にするためには不十分である。近年、がん発症の低年齢化(治療開始年齢の低年齢化)、分子標的薬を始めとする高額治療薬の出現、治療技術の高度化に伴う医療費の自己負担増もあいまって、高額療養費自己負担限度額の上限が高めに設定されている現役世代の不満は極めて強い。一方、70歳以上の高齢者については、現役世代並みに収入がある一部の者を除き、高額療養費自己負担限度額についても世帯ごとの上限額が44,400-57,000円に抑えられている。これが医療の質や費用対効果の検討が十分になされぬままに漫然とした治療の継続や入院期間の長期化、社会的入院などが行われてしまう要因と考えられ、医療費の増大を招いている可能性が指摘されている。

    この懸念に対処するため、現行の高額療養費制度における70歳以上の月額の医療費負担上限額の見直しを行い、個々の経済状況に応じた負担上限額の設定を再検討する。また、医療利用の適正化を促すために、高額療養費制度の利用条件や範囲を見直す。例えば、必要不可欠な医療行為に限定して制度を適用することや、繰り返し同じ医療サービスを利用する場合には負担上限額を見直すなどの措置を導入する。さらに、社会的入院の誘発を減少させるために、介護施設での医療サービス提供能力の強化や、在宅医療の充実など、医療と介護の連携強化も同時に図る。

    「医薬分業」による政策誘導コストの見直し

    医療費の適正化において、薬局調剤医療費の削減は重要な課題である。政府が進めてきた「医薬分業」は大きな方向性としては間違っていなかったものの、その政策誘導コストは看過できないほどに膨れ上がっている。よって、インセンティブとして講じてきた政策誘導的な加算については廃止する。同時に調剤薬局の一部業務の外部委託を解禁し、薬剤師への処方権の付与等(後述)も検討する。

    後発医薬品の原則化と一般医薬品の保険適用見直し

    生活保護法の改正を通じて生活保護受給者に対する後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用が原則化されたが、全国民を対象とした医薬品費用のさらなる削減への取り組みが必要とされている。また、湿布やロキソニンなどの痛み止め、アレグラのような花粉症治療薬、ヒルドイドのような保湿剤を含む市販薬が保険適用されている状況は、医療費の不必要な膨張に繋がっており、この部分での見直しが求められている。

    そこで、後発医薬品の使用を生活保護受給者に留まらず全国民に適用し、さらに市販薬がある医薬品の保険適用を見直す。この取り組みにより、医薬品市場における健全な競争と後発医薬品メーカーの統合を促し、医薬品価格の適正化を図るとともに、医療資源のより効率的な利用を促進する。

    慢性疾患に関する診療報酬の包括化

    慢性疾患の治療における現行の診療報酬体系は、医療機関に過剰な受診を促すインセンティブを与えており、これが医療資源の非効率的な使用・支出増大につながっている。

    この問題に対処するため、慢性疾患の治療に関する診療報酬体系を包括化する。包括制度の導入により、医療機関が患者に頻繁な通院を促すインセンティブは消滅し、過剰な受診の抑制が期待できる。また、この改革により医療機関に対して効率的な治療管理を促し、デジタルヘルスケア技術の活用など、新しい医療サービスの提供に向けたインセンティブを生み出す。

    終末期医療の在り方の検討

    終末期医療においては、個人の自己決定権の尊重が重要な課題となっている。現行の診療報酬体系では、終末期における相談支援の評価が不十分であり、患者やその家族が自身の意志に基づいた医療選択を行うことが困難な状況がある。また、リビングウィル(事前指示書)や人生会議(ACP)の普及と法制化は、終末期医療の質を高め、患者の尊厳を保障する上で欠かせない要素であるにもかかわらず、これらが十分に社会に浸透し、制度化されていない。

    そこで、終末期相談支援の適正な評価を診療報酬体系の中で実施するほか、リビングウィル(事前指示書)を全国医療情報プラットフォームに組み込むとともに、人生会議の法制化(尊厳死法の制定)を進める。これにより、患者とその家族が自身の意志に基づいた医療決定を行えるようにし、終末期における医療の質の向上と患者の尊厳の保護を目指す。

    こども医療制度(仮称)の創設と出産費用の無償化

    国が「異次元の少子化対策」を掲げながら、実際には医療費支援等で高齢者への優遇策が中心となり、子どもたちや子育て世代への直接的な支援が不十分な状況が続いている。よって少子化対策および全世代型社会保障制度の確立のため、税及び保険料を財源とする「こども医療制度」(仮称)を確立し、18歳以下の医療費の無償化と、保険適用による出産費用の無償化を実現する。(併せて、過剰医療を防止するための措置も検討する。)

    健康ゴールド免許制度(仮称)の創設

    近年、医療費の増加は社会的な課題となっており、医療制度の持続可能性を維持するためには、国民一人ひとりが健康意識を高め、健康寿命を延ばしていくことが重要である。国民の健康意識を高め、健康寿命を延ばすことを目的として、医療保険における保険料割引制度である「健康ゴールド免許制度(仮称)」を導入する。具体的には、定期的な検診受診者や健康リスクの低い被保険者などの保険料を割引きすることで、一人ひとりが健康価値を高める行動を起こすインセンティブを設ける。また現在行われている特定健診・特定保健指導(メタボ健診)については、その有用性や意義に関する再検討を行い、その結果によっては廃止も含めて検討する。

    過度に複雑な保険者の統合再編

    日本の社会保険システムは、歴史的経緯から職域や地域ごとに異なる保険料の仕組みによって運営されており、システムの過度な複雑化をもたらしている。この複雑性は保険者がその機能を効果的に果たすことを妨げる要因となっているほか、国民が制度の内容を十分に理解し、適切なサービスを受けることを難しくしている。また、財政基盤の不均衡や保険料の不均一性は、利用者間での不公平を生じさせている。よって、公正かつシンプルな保険制度を確立するため、その統合を検討する。

    診療報酬への変動制の導入

    現行の診療報酬体系では、全国一律で1点あたり10円の評価がされているが、地域や医療機関ごとの経済的状況の違いを考慮していない。そこで、診療報酬を変動制に移行し、地域ごとの人件費や家賃費用の違い、さらには医療機関の集中度に応じた適切な評価を導入する。具体的には、都市部では高い人件費や家賃を反映し診療報酬を適切に設定し、また一方で医療機関が少なく医療サービスが不足している地域では、より高い報酬を設定することで十分な医療提供を促進する。

    加えて医療人材の偏在問題にも対応するため、勤務医の給与水準を引き上げ、開業医の所得は適正化することで待遇格差を是正する診療報酬の体系の見直しを行う。具体的には、勤務医が多く在籍する病院や診療所で提供される医療サービスに対する診療報酬を増額し、勤務医の給与水準を全体的に引き上げることを目指す。また診療報酬の増額幅については、「医師の働き方改革」を実現できる水準を考慮したものとしていく。そして、勤務医に対するインセンティブ制度の導入も検討し、特に医療過疎地での勤務や夜間・休日の緊急対応など、社会的なニーズに応える医師には追加の報酬を提供する制度を検討する。

    かかりつけ医機能の強化

    政府は「地域包括ケアシステムの推進」を掲げているもの、その具体的な実施内容については依然として明確ではなく、その結果として大病院から地域医療への患者のスムーズな移行が十分に進んでいない。かかりつけ医に求められる機能を指標化し登録制を導入するとともに、報酬上の評価において明確な差別化を図る。

    医師、看護師、薬剤師等の職能の再編

    現在の医療・介護分野では、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、介護福祉士、ケアマネージャー、柔道整復師などの職種間での役割分担が固定化し、多職種間協働の効率化や柔軟なサービス提供が十分に行われていない。

    そこで、医師や歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、介護福祉士、ケアマネージャー等の職能の再編を検討する。薬剤師を育成してきた薬科大学の在り方、薬剤師への処方権の付与や注射など一部医療行為を解禁するタスクシフティングについても検討の俎上に載せる。

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    生産性向上

    DX、設備投資等の促進(パーソナル・ヘルス・レコードの実現等)

    日本の医療システムでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れが医療の無駄を生んでおり、医療費の過剰な膨張の一因となっている。電子カルテや電子処方箋の導入は進みつつあるものの、全国的なオンライン資格確認のシステムや標準化、共通化の取り組みはまだ不十分であり、これが医療サービスの提供効率を低下させ、従事者の負担増大に繋がっている。

    この解決のため、電子カルテ、電子処方箋からオンライン資格確認まで徹底したDX、標準化、共通化等を推進し、将来的には1国民1カルテ体制(パーソナル・ヘルス・レコード)を実現し、医療情報の一元管理を通じて、より効率的で質の高い医療サービスの提供を目指す。また、情報機器等の設備投資を積極的に促進し、従事者の負担軽減と技術の均一な普及を実現する。さらに、オンライン診療、AI診断、治療アプリの利用拡大を図るため、これらのサービスに対する報酬点数を引き上げる。これらの措置により、医療サービスの提供効率を高め、国民全体が質の高い医療サービスを受けられる環境を整備する。

    全国医療情報プラットフォームの整備

    医療現場において、重複投薬や多剤服薬の問題は患者の安全性を脅かし、医療費の無駄を生んでいる。これらの問題は、投薬情報が医療機関間で共有されていないことに起因しており、患者が受ける医療の質にも影響を及ぼしている。

    そこで、「全国医療情報プラットフォーム」の整備を急ぎ、オンライン資格確認システムからアクセスできる体制を構築する。また、電子処方箋の利用を義務化することにより投薬情報を一元化し、重複投薬や多剤投与を大幅に削減する。

    画像データ共有システムの導入

    日本ではCTやMRIの撮影機器の数が他国と比較しても極めて多く、画像検査の件数も多い。現状、医療機関同士で画像データの共有がほとんどされていないため、患者に対する重複撮影が頻繁に行われ、不必要な医療費が発生している。

    これを改善するため、画像データ共有システムを導入し、医療機関間でのデータ共有を実現し、同一患者に対する重複撮影を抑制する。この取り組みにより、画像撮影機器の新たな購入を抑制し、医療費の削減を図る。

    経営情報・診療介護等情報の見える化

    現状、医療機関や介護サービス提供者の経営情報や診療介護の質に関する情報が十分に共有されていないため、患者や利用者が質の高いサービスを選択することが難しくなっている。また、診療報酬の決定プロセスにおける透明性の不足は、医療機関の業務効率化や品質向上のインセンティブを弱める要因となっている。

    そこで、営利・非営利にわたる公正な競争環境を整備するとともに、医療機関コード、医籍番号等をフル活用し、レセプト(診療報酬明細書)にアウトカム(経過情報)を記載することで、診察等の情報の「見える化」を実現する。同時に、診療報酬決定に際してのエビデンスを構築する。

    創薬支援の強化

    近年、医薬品開発にかかる費用と期間は増大し、製薬企業の負担が大きくなっている。新薬の承認プロセスに時間がかかる「ドラッグラグ」や、海外で既に発売されている新薬が日本で承認されるまでの遅れ「ドラッグロス」は、日本国内での新薬開発の停滞と医療進歩の阻害を招いている。

    これらの問題に対応するため、中央社会保険医療協議会のメンバーに医薬品・医療機器メーカーを追加するとともに、薬価等部分のプラス改定を実現し、ドラッグラグ及びドラッグロスを解消する。薬価の算定制度として企業届出価格承認制度を導入し、医薬品の価値に基づく価格設定を可能にする。

第四章 結語

高齢化・長寿化の進展に伴い医療介護等に要する国民負担は今後とも増大を続ける。本提言では、現役世代の社会保険料負担を軽減し豊かな社会保障と現役世代の活力の好循環を生み出す観点から、産業としての構造改革と、歳出改革に向けた高齢者の窓口負担改革、後期高齢者医療の税財源化等を打ち出した。なお、本提言では医療制度改革に的を絞り、医療と密接な関係の介護についてはあえて触れていないが、医療と介護は一体不可分であり同時に構造改革が必要であることは論を俟たない。引き続き党内で検討を行い、医療介護等サービスの持続可能性を飛躍的に高めるための改革案をまとめていく予定である。

政府・与党が長年にわたって進めてきた改革後追い型の弥縫策に止まれば、社会保険料負担の際限のない増加、消費税等の大幅な増税を避けることはできないが、本提言で示した大改革を実行すれば、最小の負担で最大の厚生を実現することが可能になる。税と社会保障と成長戦略の三位一体改革、いわゆる「日本大改革プラン」のサービス給付部分を具体化した本提言を、我が国の構造改革におけるセンターピンの一つとして推進していく。

以上

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