絵画の値段の付け方|元画廊スタッフが教える絵画の相場と考え方

絵画の値段の付け方、どうしたらいい?

絵画や絵のグッズを販売しようとなったら、値段を決めなくてはいけません。

でも絵画の値段って幅がありすぎて、一体どういう付け方をしているのかわかりにくいと思います。

この記事では、絵画の原画と複製画それぞれの値段の相場やその内訳絵画に値段を付けるときの考え方や知らないと後悔する注意点について、画廊で数多くのプロの画家の絵画販売に携わったり、自分の描いた絵も販売してきた経験をもとに詳しく解説していきますね。

あなたの絵やあなたの画家としての価値を守り、納得できる値段を付けるためにじっくり読んでいただけたら幸いです。

絵画の値段の相場

そもそも絵画の値段の相場ってどのくらいか、という話から始めましょう。

絵画はアートのオークションなどで現実離れした価格で落札されるものもあれば、ハンドメイドサイトでは気軽に買えるような値段のものもあります。

この記事ではコレクター向けではなく一般の消費者向けの原画や版画の相場についてお話しします。

絵画の値段の相場 ①原画

原画とは手描きの絵画のことですが、実は大きく2種類に分かれます。

ひとつ目は複製画に対しての原画という意味合いで、点物という意味合いの強い作品になります。

ほとんどの方が想像しているのはこの意味での原画だと思います。

もうひとつの原画はいわゆる「売り絵」と呼ばれるもので、カタログに載せた絵柄と同じ絵画を注文の度に作家が何枚でも手描きするものです。

こちらは同じ絵柄(図案)を繰り返し制作しますが、1点1点作家が手描きで仕上げるため、完成した絵には少しずつ違いがあります。

一点物の絵(原画)の値段の相場

原画の相場と言っても実際は画家さんによって絵画の値段はいろいろなので、ざっくりとした目安として考えてもらえれば。

サイズは額縁のサイズです。(額縁にはマットやライナーが入るため、絵は額縁のサイズより小さくなります。)

一点物の原画(額縁付き)の値段
  • インチサイズ⇒8万円前後
  • 太子サイズ⇒10~15万円位
  • 大衣サイズ⇒20万円前後
  • 三々サイズ⇒30万円以上

売り絵(原画)の値段の相場

売り絵の場合は一点物の絵画よりも値段が手頃な場合が多いです。

売り絵は油絵の販売手法としてよく見られますので、油絵のサイズでご紹介します。

こちらも実際は、画家さんによって絵画の値段にかなり幅がありますので、ここでは人気のあった油絵の値段を基準にします。

売り絵原画(額縁付き)の値段
  • SM⇒3万円前後
  • WF3号(3号を2つ並べた大きさの長細いサイズ)⇒7万円前後
  • F6号⇒5~8万円位
  • F8号⇒8~15万円位
  • F10号⇒10~20万円位

絵画の値段の相場 ②複製画

複製画も大きく分けて2種類あります。

ひとつ目は枚数に限定があり、エディション番号や作家のサインが入っている版画

もうひとつは枚数に限定のないプリントポスターなど。

版画の値段の相場

版画にはシルクスクリーンなど旧来の方法で刷られたものと、昨今シェアを伸ばしているジクレーなど高精細印刷されたものがあります。

ジクレー版画の値段
  • 太子サイズ⇒3万円前後
  • 大衣サイズ⇒5万円前後
  • 三々サイズ⇒8万円前後

プリント、ポスターの値段の相場

こちらも旧来のオフセットプリントもあれば、ジクレープリントもありますがザックリと見て、A4サイズほどの小さなものは額縁なしで500円ほどから、大きなポスターのサイズで1万円を超える程度。

額縁を付けて1万円以内だと気軽に買いやすいですよね。

売れる絵画の値段の付け方

実際によく売れる絵画の値段帯というものがあります。

多くのお客様は絵を買うとき、意識していなくてもある程度の予算があります。

コレクターなど特殊なケースでなく、一般的なお客様が絵画を買う主な理由は2つ。

お祝いのプレゼント用かご自宅用(自分のお店や会社用)です。

プレゼント用の絵画の値段の付け方

一般的に友人など近しい人の新築祝いや結婚祝い等で絵画を購入される場合、予算は1~3万円台までが多いです。

経営者の方などビジネス関係のお祝い事では10万円までで考えている方も多いです。

自宅用の絵画の値段の付け方

自宅用でも売れやすいのは1~3万円台です。

ただし自宅用や自分のお店、会社用の場合はプレゼントとは違い、本当に気に入った絵画をほしいという方も多く、そういった場合は10万円を超えようと30万円を超えようと売れていきます。

若い人にも売れる絵画の値段の付け方

1万円未満であれば比較的若い層のお客様にも買ってもらいやすく、絵画の販売に慣れていなくても売りやすい値段です。

これから初めて絵画を販売しようというときには、このくらいの価格から始めても良いかもしれません。

ただ、私自身は出来るだけこの価格帯で絵画の値段を付けることはさけたいと考えています。

それはやはり画廊で販売していたときの経験からですが、1万円未満の絵画というのはほぼセール品だったからです。

ひどいときには「中身はいらんけど額縁がほしいから」と売れたこともありました。

絵画を売るときに安い値段にしようとすると、どうしても額縁も安くせざるをえなくなります。

安い額縁で絵のサイズも小さくしてしまうと本来の力量や絵の良さが出にくく、作家としても安く買えるイメージが付いてソンな一面もあると思うので、1万円未満で販売するかどうかは今後画家としてどのように活動していきたいかということとセットで考えることをオススメします。

絵画の種類による値段のイメージ

絵画は同じ大きさでもジャンル(テーマ)や画材によって値段のイメージが異なります

画材による絵画の値段のイメージ

基本的に色がシッカリのっている絵画の方が、高い値段でもお客様に納得してもらいやすいです。

色が薄くなりがちな水彩画よりアクリル画や日本画、油絵などの絵画の方が値段は高く付けやすいと思います。

逆に高い値段を付けにくいのは紙に余白がある場合です。

スケッチなどで色を塗っていない真っ白の部分があると、不思議ですがなぜか高い値段に見えません。

高い値段を付けても良いのですが、その絵の周りにシッカリ色を塗った絵が並んでいるとそちらの方が良く見えることが多く、結局売れにくいということになりがちです。

絵画のテーマによる値段のイメージ

絵画のテーマによっても値段のイメージに違いがあります。

可愛いイメージの絵画はあまり高い値段では売れにくい傾向があり、大人っぽいイメージの絵画のほうが高い値段でもお客様に納得してもらいやすいです。

メルヘンより花花より風景の方が高い値段でもお客様の値段に対する抵抗感が少なかったように思います。

アニメ風などの可愛いイラスト調の絵は、もしかすると日本より海外に向けて販売した方が日本らしさが魅力となり、高い値段が付けられるのではと思います。

絵画の値段の内訳

いよいよ絵画の値段の付け方の話に入ろうと思いますが、その前に、どうしてその値段になるのかという絵画の値段の内訳についても説明しておこうと思います。

絵画を販売するとき、その金額の全てが画家に入るわけではありません。

画廊で販売する場合

絵画の値段⇒画家の取り分+画廊の取り分+額縁代

百貨店などの商業施設で販売するときには

絵画の値段⇒画家の取り分+画廊(画商)の取り分+百貨店の取り分+額縁代

画廊(画商)を通して販売する場合は基本的に歩率によって画家との取り分が決められています。

契約の際に絵画が買い取りになるか委託になるかでも、歩率は変わってきます。

最近は買い取りより委託が多いのではないかと思います。

百貨店も入ってくると画家の取り分の歩率は少なく感じますが、実際に接客し販売してくれるスタッフの人件費、土地代、百貨店というブランドの信用などを考えると、画家が搾取されているわけではないことがわかると思います。

ECサイトで販売する場合

絵画の値段⇒画家の取り分+ECサイト企業の取り分+額縁代

ECサイトの場合は作家の取り分は9割前後(額縁代ほか含む)と対面販売よりかなり歩率は良いです。

ECサイトでも独立したショップに委託するような場合は、企業側の取り分がもっと増えます。

絵画の値段に関しては画家の取り分が多い方が良いと思う一方、それぞれの販売方法ごとに良い部分があるので、臨機応変に考えると良いと思います。

絵画は売る場所によって値段がちがいすぎるとトラブルのもとになります。

画廊や企業を通しての販売もしていきたい場合は、歩率のことも予めよく考えた上で絵画に値段を付けることをおすすめします。

絵画の値段の付け方 ①考え方編

絵画は画家本人が販売する場合、値段の付け方は基本的には自由です。

あまりにも値段のつけ方がバラバラで法則性がないとお客様に納得してもらえない可能性はありますが、「これは簡単に描けるから安くしよう」とか「これは苦心して描いたし気に入っているから高くしよう」という、自分の気持ちで決めても良いのです。

画商などを通して販売する場合は、絵画のサイズによって値段を決めておくことが多いです。

1号いくらというような絵画の値段の付け方はどう設定すれば良いか、考え方を説明しますね。

絵画の値段の付け方 ①描く時間で計算する

絵を描くのにかかった時間を時給や日給として決める値段の付け方は、理にかなっている面とそうでない面があるのかなと私は感じています。

絵を描くのにはどんなに急いで頑張ってもこれだけの時間は必ずかかってしまうという一定のラインはあるので、絵の値段を付けるときにそれは目安として考慮したほうが良いと思います。

ただ、絵を描くのに時間がかかるというのは私の技術不足という場合もあるので、単純に時間だけを基準には出来ないかなと考えています。

私が苦心して数日かけて1枚の絵を描いている間に、私の先生はもっとクオリティの高い絵を何枚も描いていたりするので…。

以前、値段について飲食店を10店舗以上経営している社長さんとお話しする機会があったのですが、その社長さん曰く、値段には材料費だけでなくて技術料だって入っているということでした。

技術料のわかりやすいものにはお寿司屋さんがありますね。

その方のお店は同業他社に比べると値段が少し高めですが、よく繁盛されているようです。

「絵を描くのが早いから値段を安くする」というのもひとつの考え方ですが、それを「技術料と考えて高くする」のもひとつの考え方です。

絵画の値段の付け方 ②ターゲットに合わせる

あなたの描いている絵を買ってくれそうな人、またはあなたの絵を買ってもらいたいと思うような人がどういった人かターゲットを具体的に考えることはとても大切です。

たとえば10代20代向けの絵画に数十万円の値段がついていたら、その絵がどんなに素敵でも売るのに苦労するかもしれません。

若い人でも買いやすい値段にするために原画を小さくしてみたり、複製画にする、グッズにするなど工夫してみると売れやすくなると思います。

私の場合は吉祥画の販売に関しては新築や開業のお祝い、経営者の方などに買っていただいているので、絵画を安くすることよりも質の良いものにすることを大事に考え、基本的に3万円台以上という値段の付け方をしています。

あなたの絵はどんな人が買ってくれそうですか。

その人が買ってくれやすい絵画の値段はどのくらいか考えてみてくださいね。

絵画の値段の付け方 ③相場に合わせる

絵の値段の付け方として忘れてはいけないのは相場を参考にすることです。

あなたの絵と近い雰囲気の絵がどのくらいの値段で販売されているか(売れているかも)リサーチしてみてください。

似顔絵などある程度値段の相場が決まっているジャンルは作家側で値段のコントロールがしにくく、相場に合わせざるを得ないということもあります。

絵画の値段の付け方 ②実践編

あなたの描いている絵画のターゲット層と相場の値段は把握できましたか。

さきほど絵画の値段の内訳についてお話ししましたが、画家の取り分の中身をもっと細かく説明しますね。

画家の取り分の内訳

画家の取り分⇒紙や絵の具などの材料費+資料などにかかった費用+絵そのものの値段+包装や梱包の資材費+撮影やECサイトへの掲載、お客様との連絡、梱包などにかかった時間+送料

絵画を販売するとき、絵画そのものの値段だけではなく実はこれだけの費用(時間)がかかっています。

意外と梱包資材にもお金がかかりますし、お客様に直送する場合に送料無料設定などにしている時や取引先に絵を送る場合にも送料がかかります。

通販の場合はECサイトへ掲載するための作業や、お客様との連絡、梱包作業に意外と長く時間をとられてしまいますので、それも費用の中に入れておく方が良いと思います。

イベントに参加したり個展を開く場合などの交通費や滞在費のことも頭には入れておいた方が良いと思います。

画家の取り分からこのような費用を差し引いた値段を絵画の制作時間で割ってみて時給に換算すると、なかなかシビアな金額が出ると思います。

この金額をまず納得できる額に設定した上で画家の取り分(歩率)が何%かによって計算し、実際の販売価格を出していきます。

グッズの場合は何個売れば費用の元を取れるか考えます。

商品が絵画(原画)でなく複製画やグッズであれば工場から直送にすることで梱包に関する費用を抑えたり、お客様との直接の連絡も取らない方法もあるかと思うので、費用を抑える工夫も考えてみてくださいね。

オーダー絵画の値段の決め方

絵画は販売しているとオーダーの相談が入ることもあります。

オーダーの場合、元々決めていたサイズごとの値段と同じ値段にしても良いのですが、私の経験上もう少しいただけば良かったかなと思うケースが多かったです。

オーダーの場合は打ち合わせに費やす時間が意外と長くかかってしまったり、新たに資料が必要になったり、調べものにも時間を費やします。

そういうことがあるという前提で通常よりも少し値段を高めに設定しておくと良いと思います。

絵画の値段の付け方 まとめ

絵画の値段の付け方にはターゲットと相場のリサーチが大切です。

その上で絵の制作や販売するときの作業に費やす時間や経費などを考慮して決めていくと良いと思います。

長い目で見たときに自分が納得できる値段に決めることも大切ですが、実績を積むために勉強代と思ってはじめは値段を低めにしておき、お客様からレビューをもらったり企業案件を受けるというのも良いと思います。

一度決めた値段を後から上げるというのは難しいこともあります。

特に画商など企業へ委託で販売してもらう場合は変更しにくいため、契約するときに納得できる値段にしておきましょう。

個人で販売している場合は、値上げする前にいつから値上げですという形で前もって告知してからだとスムーズに移行しやすいですよ。

ABOUT US
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ミラデザイン画家
似顔絵肖像画を描いたり師匠のアシスタントをしながら制作活動をしています。好きな画材はポスターカラー、不透明水彩、日本画の絵の具。琳派とヨーロッパアンティーク風の絵が好きです。画家活動や画廊で長く働いた経験から得た、絵の描き方やリアルなアートの話のほか、生きづらくて苦しんだ後にたどり着いた、前向きでラクな考え方や肩の力を抜いた楽しい生き方についても書いています。