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2023年の国内PC出荷台数は過去最低。一方、明るい兆しに期待の声

2023年国内PC出荷実績(JEITA調べ)

 2023年(2023年1月~12月)の国内PC出荷実績が、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)から発表された。

 これによると、PCの出荷台数は、前年比2.9%減の666万7,000台となり、現在の調査方法となった2007年度以降では、過去最低の出荷実績となった。出荷金額は前年比4.4%増の7,658億円となり、4年ぶりに前年実績を上回った。

 過去最低の出荷台数実績となった背景には、特需の反動の影響がある。

 JEITAの出荷統計によると、国内PC市場は、2019年には973万台、2020年には1,045万5,000台、2021年は886万9,000台と高い水準で推移していた。

 ここでは、2019年10月に行湧けた10%への消費増税前の駆け込み需要、2020年1月のWindows 7のサポート終了に伴う買い替え需要、2020年2月以降のコロナ禍におけるテレワーク需要、2020年度に本格化したGIGAスクール構想よる小中学校への1人1台環境の整備といったように、追い風となる特需が続いていたことが背景にある。

 だが、これらの動きは、需要を前倒しして刈り取ったともいえ、相次ぐ特需が終わったあとの反動を受けた2022年には686万9,000台と年間出荷台数は大幅に減少。今回発表された2023年実績では、さらにそれを下回った。2020年実績に比べると、約3分の2にまで市場規模が縮小した計算になる。

 なお、2023年の出荷台数の内訳は、ノートPCが前年比2.8%減の557万6,000台。そのうち、モバイルノートが3.7%減の252万2,000台、ノート型・その他が2.0%減の305万4,000台となった。デスクトップPCは前年比3.6%減の109万台。そのうちオールインワンが19.2%減の18万4,000台、単体が0.4%増の90万6,000台となっている。

JEITA統計によるPC出荷台数の変遷

 2023年の出荷台数実績は過去最低という結果にはなったものの、その一方で、明るい兆しが見られている点にも着目しておきたい。

 2023年10~12月の四半期では、国内PC出荷台数が前年同期比1.0%増の167万8,000台となり、中でもノートPCは前年比4.1%増の144万1,000台と前年実績を上回った。ノートPCの内数となるモバイルノートPCは10.2%増の65万8,000台と2桁成長となった。

 ちなみに、モバイルノートPCは、ノート PC のうち、キーボードが付属し、画面サイズが14型以下、重量が1.5kg以下のものを指している。

 さらに、2023年12月の単月での実績をみると、国内PC出荷台数は前年同月比10.8%増の78万8,000台となり、そのうちノートPCは16.3%増の69万4,000台となった。内数のモバイルノートPCは14.9%増の31万5,000台、ノート型・その他も17.5%増の37万9,000台と高い伸びを見せている。

 JEITAでは、「2023年12月は、法人向けが好調に推移し、出荷台数は3カ月ぶりに前年を上回り、出荷金額は2カ月連続で前年を上回った。また、四半期実績では、3四半期ぶりに台数、金額ともに前年を上回っている。2020年のテレワーク需要で導入されたノートPCのリプレースが、一部始まりつつあるのではないか」と分析している。

一方、明るい兆しも

 12月の動きを「明るい兆し」と捉えるのには理由がある。

 2024年に入ると、国内PC需要を促進する材料がいくつかあるからだ。

 JEITAが指摘しているように、コロナ禍のテレワーク需要で整備されたノートPCのリプレースの動きが顕在化しつつあるというプラス材料のほか、2025年10月のWindows 10のサポート終了に伴う買い替え需要が、法人市場を中心に進み始めていること、Next GIGAと呼ばれる小中学校に整備されたPCの更新需要が2024年度からスタートするなど、国内PC需要の拡大には追い風となる材料がある。

 さらに、生成AIの広がりや、AI PCと呼ぶローカルPCでのAI活用を行なう環境が整うことで、新たなPC需要が創出されるとの見方もある。これらは単価の上昇にも貢献するとの指摘もある。

 また、賃上げや設備投資が30年ぶりの高水準となっていることや、政府が打ち出している経済対策、国内投資を促進する各種政策の効果により、企業におけるIT投資の拡大や、個人のPC需要を喚起されることも期待されている。

 PCメーカー各社も、こうした新たに需要への期待は高く、その準備にも余念がない。

 国内のPCブランド別シェアでトップシェアを誇る日本HPの岡戸伸樹社長は、「2024年からの旺盛なPC需要に対応するには、堅牢なサプライチェーンが必要であり、物流が増加してもサービスレベルを維持し、遅延のない納期対応を図っていく」と、需要拡大に向けた準備を進めていることを明らかにする。

 2月以降、為替の状況や一部パーツのコスト上昇に伴い、PCの販売価格が高騰する可能性を指摘する声もあるが、業界筋では、プラス成長に転じるという見方が支配的だ。

 調査会社のMM総研では、2024年度の国内PC出荷台数を、前年比12%増の1,226万9,000台になると予測しており、力強い市場成長が期待される。

 2024年の国内PCの出荷がどれだけ前年を上回るのかが、今後、注目されることになる。