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ここまで、Snapdragonとの比較で、MSM7200Aを分析してきたが、ここで別の観点、PXA270との比較で、MSM7200Aを見てみよう。 WILLCOM 03のPXA270(520MHz)は、ARM V5TE命令セットベースなのに対し、MSM7200AのCPUは、より進化したARMv6命令セットを採用しており、クロック周波数あたりの処理性能は20~50%程度は高速化されているようだ。 また、マルチメディア命令も強化されているので、ソフトによるFLV動画再生などのマルチメディア処理も速くなっているはずだ。 加えて、画面描画も、ハードウェア支援なしに、CPUがほとんど直接処理していたPXA270に対して、MSM7200Aでは、まともな2D,3Dのグラフィックアクセラレーターを搭載しているため、HYBRID W-ZERO3で表示色数が増えていても、速度低下はなく、むしろ、高速化されると考えていい。 また、公式発表ではないが、RAMが128MBから256MBに増えているが、WILLCOM 03に比べ、表示色数と表示ピクセル数の増加による表示用メモリの増加を考えても、大幅に増えている。これも、複数プロセスを多数常駐させた場合の速度向上にも貢献するだろう。 実際、HYBRID W-ZERO3の画面の縦横切替なんかの動画を見ていても、ダブルバッファ処理の効果もあるだろうが、画面の切替自体は一瞬である。グラブスクロールはまだぎこちなかったが、チューニングが進めば、原理的にはもっとスムーズになるはずだ。 表示以外のCPU処理負荷もだいぶ違う。PXA270も、周辺デバイスの接続インタフェースはそれなりに揃ってはいるが、ハードウェア高速化支援となると、貧弱もいいところである。カメラの写真や動画のエンコードはほとんど素のCPU処理だったので、極めてトロかったが、これは、チューニングが進めば携帯電話並みの快適さに改善可能だろう。 Windows Media Playerなどの動画、音楽再生も、使用するコーデックのハード支援を活用するようチューニングが進めば、コマ落ちや音切れのないスムーズな再生ができるだろう。 SDカードインタフェースも、PXA270は古い速度が遅い規格しかサポートされていなかったのが、MSM7200Aでは高速化されているし、IO処理は全般に、目に見えて速くなっているはずだ。 また、フラッシュメモリも256MBから512MBに増えているようなので、これまで、microSDにインストールせざるを得なかった多くのアプリを、本体メモリにインストール可能なるため、アプリの平均的な起動時間も短縮できるはずだ。 一方で、純粋にCPUをぶん廻すような処理は、数十%程度にしか高速化されないだろう。 例えば、名刺リーダーの認識時間とか、ブラウザのレンダリング時間とかは、Snapdragonみたいに目に見えては速くならないだろう。 また、WILLCOM 03では、無線LANとBluetoothの同時使用ができなかったが、これはプロトコルスタックの処理負荷がCPU性能に対して、重すぎて、Bluetooth接続のヘッドセットで音切れを起こすなどの障害を起こすせいだったみたいだが、HYBRID W-ZERO3でも、CPU性能が大幅に向上していないせいか、同様の制約は残ってしまったようだ。 (ちなみに、「同時使用できないのは、電波が干渉するせいだ」という、まとしやかなデマも流れていたが、ウソである。Bluetoothは、プロトコル自体に、無線LANの使用中帯域を避けて通信する機能が備わっているため、本当に2.4G帯が全部埋りでもしない限り、同時使用は可能である。) トータルで見れば、HYBRID W-ZERO3は、WILLCOM 03に比べれば、画期的とは言えないまでも、それなりに快適に動くはずである。 もっとも、auのKCP+というプラットフォームも、初代機は、MSM7x00の機能を使いこなせていなくて、物凄く遅くて評判が悪かったのだが、数年かけてようやく最適化が進んで快適に使えるようになったという経緯がある。 実際のところ、HYBRID W-ZERO3の場合も、来年1月までに、Windows Moible OSとして、どこまでチューニングを追い込めるかが、重要な鍵になりそうである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年11月14日 01時24分32秒
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