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さすらいの天才不良文学中年

さすらいの天才不良文学中年

男の甲斐性 富すれば鈍する ファッション

男の甲斐性(前編)

 本日より3日間は、関ネットワークス「情報の缶詰2010年2月号」に掲載された「男の甲斐性」をお送りします。


花と蝶1


男の甲斐性(前編)

 昭和から平成に時が移り、今や絶滅した考え方の一つに「二号の一人や二人を囲うのは男の甲斐性」というのがあった。おいらが子供のころには、まだ、そういうことを許す風潮が残っていたように思う。

 実際、一昔前の有名人では、伊藤博文、原敬、山県有朋、西園寺公望、井上馨、犬養毅などの政治家を始めとして、北里柴三郎、黒田清隆、森鴎外などの文化人も当然の如くお妾さんを囲っていた。

 これは、つまるところ、二号を囲うのは男性の社会的地位を表すものであったし、それだけの甲斐性があって初めて社会的実力が伴ったと考えられていたことの表れでもある。

 したがって、政界官界財界の上下を問わず、果ては芸人、高利貸しに至るまで、多少の権力や財力を手に入れれば、その周りもこぞって愛人を囲うことを勧めたのである。

 いやはや、世の風潮というものはスゴイ。


1.木村荘平の牛鍋王国

 そこで今回は、趣味と実益を兼ねた立志伝中の人物として木村荘平(1841年生、実業家、政治家)を挙げてみよう。

 すき焼きは日本人の郷愁をさそう定番メニューの一つであるが、その先駆けになったのは、1881年に三田四国町(現「芝」)に木村荘平が創業した牛鍋チェーン店「いろは」である。

 この木村は乱世に強い男であったようである。山城の国(京都府)宇治田原の名門農家に生まれるが、実家は幕末維新の混乱期に没落する。大阪に出た木村は身持ちが悪く父親から勘当されていたが、母親の取りなしによって帰家を許されてからは、青物業と茶の販売に精を出した。これが当時のお茶の輸出ブームに乗り、大儲けすることになったのである。

 木村は商売仲間の顔聞きになり、京都にある薩摩藩邸に出入り出来るようになる。これが契機となって、大久保利通の懐刀とされた川路利良(後の警視総監)と知り合いになる。

 木村は1878年、東京の川路に呼ばれる。当時、三田にあった明治政府の勧業寮育種場を払い下げて貰い、官設屠場の運営を一任されることになった。

 屠場の運営を軌道に乗せた彼は、東京売肉問屋組合の創設に尽力し、その後も市会議員になるわ、日本麦酒醸造(恵比寿ビール)の社長になるわ、挙句の果ては競馬場を設立して賞金付きの競馬まで始めた(後の上野不忍池の競馬場)。(この項続く)


男の甲斐性(中編)


花と蝶2


 しかし、木村を一躍有名にしたのは、牛肉が入手し易いという立場を利用して作った牛鍋「いろは」である。この名称から木村は「いろは大王」とまで呼ばれるようになる。

 この牛鍋屋が現代で云うチェーン店の元祖であった。

 彼は後藤象二郎の別荘を割烹旅館に改築した上で牛鍋店の本部とし、当時の東京市内各地に22の牛鍋店を開いたのである。驚くのは彼の商才だ。肉や酒を一括して仕入れ、「い店、ろ店、は店、に店…」と、いろは順に命名した各店舗に材料を配送した。

 牛鍋店の店舗は全店二階建てにし、派手なステンドグラスで人目を惹きつけ、軽子(かるこ、女性従業員のこと)には黒襟に丸帯、たすき掛けを制服にして、ハイカラなイメージを定着させるのである。


2.子だくさん

 実は、この一大チェーン店には大きな特徴があった。

 それは、木村荘平のお妾さんたちに各店舗を任せたのである。木村は赤塗りの人力車で2号さん以下を公然と訪問し、その際、店の集金も行うという一石二鳥を行ったのである。

 正妻は京都に残したまま、その奥さんが亡くなるや、東京のお妾さんの第一号を妻にし、堂々と一夫多妻制を実行したのである。その木村荘平には30人にも上る異腹の子供がいた。 

 なお、話しは全く脱線するが、子だくさんで有名なのはジンギスカンである。ジンギスカンの子供は数百人といわれるが、記録に残っているものではサウジアラビアのサウド王で326人。う~む、アラブの王様はスケールがでかい。

 本邦の文献によれば、第12代の景行天皇が81人、嵯峨天皇50人、光孝天皇44人、亀山天皇35人、明治天皇が15人である。

 江戸幕府では、第11代将軍徳川家斉が54人。明治時代では、「天狗タバコ」で知られた岩谷松平が52人、明治の元勲松方正義が25人。

 なお、1人の女性がどのくらい子供を産めるかというと、最多記録はモスクワの農夫フョードル・パシレットの妻(1816~72年)の産んだ69人だそうである。

 さて、木村荘平は、生まれた子供に男子は荘蔵、荘太などと命名していたが、五人目からは面倒となり、荘五、荘六、荘七、…荘十二(ソトジ)、荘十三(ソトゾウ)とつけ、女子も最初のうち栄子、信子、林子、清子などとつけていたが、そのあとは、六女、七女、八女、九女(クメ)、十女(トメ)、士女(シメ)、十二(トジ)、十三(トミ)、十四(トヨ)、十五(トイ)、十六(トム)、十七(トナ)としている。

 木村自身に芸術、学芸面での才能があったのであろう、子供の中から多数の文化著名人を輩出した。

 長女栄子は木村曙(明治女性作家の先駆)、四男荘太は文芸評論家、五男荘五は経済史家、四女清子は新劇女優、荘七は俳優、荘八は画家、荘十は直木賞作家、荘十二は映画監督である。(この項続く)


男の甲斐性(後編)

3.牛鍋王国の崩壊


花と蝶3


 荘平は優秀な子供に牛鍋王国の家督を譲りたかったのだが、皆、芸術方面に進むので、結局、長男の荘蔵しか店を継ぐものはいなかった。しかし、この荘蔵、色だけは親譲りで花柳界の女性を家に入れるが、跡取りとしては全く不適格であった。

 牛鍋王国の崩壊は突然やって来た。オットセイと揶揄されるほど精力絶倫であった荘平は、病気一つしない健康体であったことが裏目と出る。

 晩年、歯痛となり、精密検査を受けたところ、顎がんと診断される。東大病院で顎の半分を切除するが、既に末期がんで、1906年帰らぬ人となる。

 さあ、大騒ぎになったのは、いろは店の店長であったお妾さんたちである。相続権がないことに気付いた頃には、荘蔵の妻が一切の財産を長子相続してしまった。

 また、無能な長男荘蔵はチェーン店機能を継続させることが出来なかったために、ばたばたと店を閉めることになってしまった。

 荘蔵が仕切っていた1号店である「第一いろは」だけは当初切り盛りしていたが、莫大な遺産が転がり込んできたので、放蕩三昧によって倒産、いつしか借金だけが残っていた。

 残されたのは、豪華な看板と目立つ建物だけであったが、それも全て借金のカタに取られ、哀れ権勢を誇った木村荘平王国は藻屑と消えたのである。大正時代、長男であった荘蔵が自動車の運転手をしているのを見た人がいたという。

 最後に。

 木村荘平の子供たちが幼少の頃の消えない記憶である。子供たちは、「妾の子」といつも同級生に呼び捨てにされていたという。罪作りな話しではある。

 木村荘平、享年65歳。こういう人生もある。(この項終り)




 富すれば鈍する

 田中康夫氏が「貧すれば鈍する」をもじって、「富すれば鈍する」とのたまっておられる。慧眼である。


MONEY


 それで、最近感じるのが、あの中村紀洋(元オリックス内野手)である。この人ほど、栄枯盛衰というのも珍しいのではないか。

 それもこれもカネである。富すれば鈍する。皆さんはもうお忘れだろうが、2002年のシーズン・オフに近鉄にいた中村は、FA権を取得した。

 その年、どうしても優勝したい星野阪神は、「6年36億円=1年6億円X6年」という金額を提示して中村と交渉した。しかし、何をとち狂ったか、中村はこれを蹴ったのである。同じFAで取得したアニキ金本が「4年12億円=1年3億円X4年」だったから、破格の条件であったにもかかわらず、である。

 因みにこの年、中村は巨人はもとより、あのメジャーのメッツとも交渉し、結局、全てコケにした。もう阿呆らしくて、何も書く気が起こらない程である。

 中村のいない阪神は、それでも翌2003年に18年振りに優勝をする。中村がいなかったから優勝出来たという人もいる。

 近鉄に残留した中村の「その後」は続く。2004年にプロ野球界再編問題が起こり、当時の山口社長から高額年俸を槍玉に挙げられると、今度はドジャーズとマイナー契約を結ぶ。ところが、ご存知のとおり、メジャーでは全く成果を挙げることなく帰国、引き取り手がないまま、古巣のオリックス(近鉄と合併)に再び舞い戻るのである。

 後は、報道のとおり、遂に自由契約である。引き取り手が現れるとは思えない(ただし、昨日の報道によれば、ロッテが食指との情報もある。そうだとすれば、今年のロッテの優勝の芽はない)。

 さて、この話し、何で持ち出したか。簡単なことである。富すれば鈍するというのを肝に銘ずべし。



自立的労働時間制の欺瞞

 初めて聞く人には、何とまぁ、言語明瞭意味不明瞭な日本語だろう。


阿弥陀如来


 厚生労働省が導入を進める自立的労働時間制度とは、米国で採用されているホワイトカラー・イグゼンプション(ホワイトカラーを対象とした労働時間規制の適用対象外)の日本版のことである。

 意図ははっきりしている。賃金の抑制だ。労働総研の試算によれば、年収400万円以上のホワイトカラー層は、この制度の導入により年間一人当たり114万円残業代を失うらしい。国内全体では、11兆6,000億円の残業代カットになるそうだ。しかし、これって、賃金の経営者の横取りじゃないの。

 アメリカのホワイトカラーに広範に導入されているのだから、日本も当然だという反論があるかもしれないが、おいらがニューヨークにいたときに、残業などするホワイトカラーを見たことがない。皆、夕方5時になったら、蜘蛛の子を散らすように見事に帰宅していた。夕方以降も働いているのは、日本人だけである。彼我の社会の仕組みが違うのである。

 何時から日本はこうなっちゃったのだろう。経営者までが拝金の横行だ。働いた分は払うのが最低の礼儀ではないだろうか。

 働く者の身にもなって欲しい。確かに金のために働いてはいるのだが、働く人間はそれ以上のものを組織に与えても良いと思っているのだ。したくもない残業をするというのは、その現れでもある。そうであれば、残業代はその見返りであり、貰うのは当然である。残業代を収入に計算して働いている人間もいるとは思うけれども、それだって立派な労働だ。

 どうも日本の経営者はみみっちくなったようだ。これでは息苦しくてしょうがない。欺瞞を通り越して、悪意まで感じてしまう。最近の経営者は、全て世の中を金という物差しだけで計ろうとし、人間が働くという大切なことの意義を忘れているのではないだろうか。


麻生財務大臣のギャング・スタイル

 今月の15日、16日にモスクワで開催されたG20に出席した麻生財務大臣のファッションには目をむいた。


麻生財務相新聞記事.jpg


 成田空港に現れた麻生財務相は、黒のロングコートに白の長いマフラー。そして、ソフト帽を斜めに被る。どこかで見た映画のシーンのようである。

 そう、ギャング・スタイルである。

 実際、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によれば、「日本の財務大臣がギャング・スタイルでG20に」、「もしかして(マフィアの)5大ファミリーのボス会議に行くの?」と麻生氏をこき下ろしている。

 ただ、おいらはこのファッションが一概に悪いとは思わない。

 例えば、安藤昇だと、このスタイルが決まるだろう。白の長いマフラーがポイントである。

 小林旭も片脚を上げながらこのスタイルをすることがある。

 矢沢永吉だと長いマフラーなしで、ソフト帽を斜めに被るだけである。

 結局、これをカッコ良いと思うか、そうではなくてギャング・スタイルと思うかは、見る人の感性によるのじゃろぅ。

 だが、この問題を突き詰めると、サマになるかならないかである。サマになる人とそうはならない人とがいるのは事実だからである。


お端折り(おはしょり)

 和服姿の女性を見るのは、嬉しいものである。


289px-Beauty_looking_back.jpg


 しかし、である。残念ながら、最近は和服姿の女性を見かける機会が多くはない。銀座のクラブでも最近はお目にかかることが少ないのではないのだろうか。

 さて、先日のネット記事によれば、通常国会の召集日に和装振興議員連盟の女性国会議員が和服姿で登院したとある。

 だが、中には「お端折り(おはしょり)」のない着方をした議員がいるというのだ(「お端折り」とは、女性の着物の着方の基本を表す言葉で、身の丈よりも長い部分を腰のところで紐でたくし上げてしめる部分のこと)。

 お端折りのない着物の着方は、つんつるてんに等しい。着物は浴衣とは違うのである。優雅さがなくなるのじゃょ。

 さらにおどろいたことがある。

「小紋」で登院した新人議員もいるというのだ(「小紋」の意味が分からない人は辞書で調べてください)。

 国会の召集日である。本会議場には天皇がご出席されるのである。正式な服装で臨むのがルールであるが、小紋はカジュアル着だ。

 国会議員は国民の代表である。その国会議員がこのざまである。日本には、そのうち着物を着ることができる人がいなくなるのであろう。

 トホホ。


ドーナツを穴だけ残し食べる

 2年前に放送された国営放送の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」でおいらが気にいっていたのは、「穴だけ残してドーナツを食べる」であった。


ドーナツの穴.jpg


 こういう話しは、好きじゃのぅ。

 無論、世の中はドーナツを食べた後の穴ばかりで埋まっているのだが、先日ネットサーフィンをしていたら、この問題に正面から取り組んでいる本を発見した。

「ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義」(2014年、大阪大学出版会)である。

 大阪大学が今年(2014年)2月に発売、評判もよく既に増刷しているという。紀伊国屋書店グランフロント大阪店では一時、単行本売り上げランキングで1位を記録したそうである。

 ネット記事の受け売りでその内容を述べると、

「ドーナツを樹脂で固め、機械で削る」(工学)

「ドーナツには穴があるという暗黙の前提を疑う」(歴史学)

「ドーナツとは家である。記憶が結びつき、物理的なドーナツがなくなっても穴はなくならない」(美学)

「4次元空間で食べる」(数学)

など12の食べ方が披露されているらしい。

 う~ん、しかし、どれも皆イマイチの内容だなぁ。おいらは純粋にドーナツの穴だけ残してドーナツを食べる方法を知りたいのである。

 そういう夢を持ち続けることが人生を豊かにするコツであるに違いないと考えるからである。

 恐らくこの正解は回答者の数だけあるんだろうなぁ。でも、そうでなくっちゃ!




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