『Fallout』ドラマ化の成功に見る“映画ではない”理由 ゲーム作品×実写ドラマの好相性

『Fallout』ドラマ化の成功に見る“映画ではない”理由

 4月11日、『Fallout』の実写ドラマがAmazonプライムビデオで配信開始となった。

 昨今、相次ぐゲーム作品の実写ドラマ化。『Fallout』の配信を入口に、トレンドが形成されつつある理由を考察する。

ベセスダが誇る人気アクションRPGがAmazonプライムビデオで実写ドラマ化

『フォールアウト』本予告動画 | プライムビデオ

 「Fallout」は、「The Elder Scrolls」や『サイコブレイク』『Doom』『Starfield』といったタイトルで知られるパブリッシャーのベセスダ・ソフトワークスによって展開されているアクションRPGシリーズだ。1997年発売の『Fallout』を初作に、これまで4作のナンバリングと複数のスピンオフが発表されている。最新作は2018年リリースの『Fallout 76』。シリーズ全体を通じ、「Fallout(放射性降下物)」によって破滅への道をたどる近未来の地球と、そのような状況に立ち向かう人々の姿が物語の中心へと据えられている。

 今回、配信がスタートしたのは、Amazonによって製作された実写ドラマの『Fallout(フォールアウト)』。同作には、『Fallout 4』よりも後の時代である23世紀末のアメリカを舞台に、戦争や疫病の脅威から逃れるために建造されたシェルター・Vault 33で暮らしてきた世間知らずのルーシー、放射能の影響で何百年も生きられるグールとなってしまったガンマン、ヒーローに憧れる兵士志望のマキシマスの3人の物語が描かれている。シリーズが特徴とするポストアポカリプスの世界観、近未来とレトロが融合した独特のテクノロジー、皮肉の効いたセリフなどは健在だ。

 監督・製作総指揮を務めたのは、『ダークナイト』や『インターステラー』といった映画作品で脚本を手掛けてきたジョナサン・ノーラン氏。エンターテインメントの第一線を走るクリエイターによって映像化された「Fallout」の世界は、ゲームシリーズのファンでなくとも、ぜひ注目しておきたい1作だと言える。

ゲーム作品の実写ドラマ化が盛り上がりを見せる理由

Fallout 4 オフィシャルトレーラー

 ゲーム業界では直近、人気タイトル/シリーズの実写ドラマ化が相次いでいる。2022年には、Microsoftが発売を手掛けるFPS「HALO」や、カプコン開発・発売のサバイバルアクション「バイオハザード」が、2023年には、ノーティードッグ開発のアクションアドベンチャー「The Last of Us」や、ソニー・コンピュータエンタテインメント開発・発売のカーシューティング「Twisted Metal」が、Paramount+やU-NEXT、Netflix、Huluなどで配信開始となった。2024年以降も、本稿で紹介した「Fallout」のほか、セガ開発・発売の横スクロールアクション『ソニック&ナックルズ』(『Knuckles』として2024年初夏に)や、ユービーアイ開発・発売のステルスアクション「Assassin's Creed」、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)開発・発売のアクションアドベンチャー「God of War」、おなじくSIE発売のアクションRPG「Horizon Zero Dawn」(すべて時期未定)が配信を予定している。ゲームカルチャー発メディアミックスのひとつの形として、実写ドラマ化に熱視線が注がれている現状がある。

 “ゲーム作品の映像化”という意味ではこれまでにも、数多くのタイトル/シリーズが実写、アニメーションといった分類にかかわらず、テレビ、映画などのメディアで製作されてきた。実写ドラマ化の事例として紹介した「バイオハザード」は、ミラ・ジョヴォヴィッチが主演した映画作品も広く知られている。

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 なぜテレビや映画といったメディアで繰り返されてきたゲーム作品の映像化が、昨今になり、ふたたび盛り上がりを見せつつあるのか。背景にあるのは、VODの台頭によるメディアの多様化だ。NetflixやU-NEXT、Amazonプライムビデオなど、インターネット経由で鑑賞できるサブスクリプションサービスが広がったことで、時間や場所のかぎりなく、世界中でひとつの映像作品を観られるようになった。そのような土壌が整備されたことによる見込み客の増加がゲームの実写ドラマ化の盛り上がりにつながっているのだろう。

 多くのゲーム作品はクリアまでに長いプレイ時間を必要とする。そこに描かれる物語は、要点をかいつまんだとしても、10時間弱ほどのボリュームにはなるだろう。その前提に立つと、2時間前後の尺で製作されるケースの多い映画は、原作に描かれた世界観を再現するにはあまりにも短く、適切なメディアとは言いづらい。一方、ドラマであれば、数話などの短い構成であっても、映画の数倍の内容を盛り込むことが可能だ。実際に実写ドラマ版『Fallout』は、全8話で構成されている。

 先にも述べたとおり、ここ数年でさまざまなタイトル/シリーズが、VODを通じて実写ドラマ化されてきたが、その多くが配信前のファンの不安に反し、好評を博していることも特徴的だ。そうした前例に漏れず、『Fallout』も2024年4月15日時点では、星4.5の高評価を獲得している。4月14日には、シーズン2の配信が決まっていることも一部報道で明らかとなってきた。なかには原作の世界観を再現できず、低評価となってしまった作品もあったが、本質的にドラマは、ゲーム作品の映像化にとって好相性のメディアであるのだ。

 だからこそ、VODが台頭し、視聴者との接点が多様化したいま、メディアミックスのひとつとして実写ドラマ化が盛り上がりを見せているのではないか。今後も現時点では未発表のタイトル/シリーズが、さまざまなサービスで映像化されていくのだろう。無論、すべてが成功を掴み取るとは言えないが、先述の好相性を考えると、少なくともこうしたトレンドが見えてくる以前にゲームフリークが抱えていた不安を、良い意味で裏切るケースが多くなると予測することもできる。

 次に実写ドラマとなるのは、どのゲーム作品だろうか。「このタイトル/シリーズが観たい」という話で盛り上がるのも一興なのかもしれない。

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