寄生獣の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『寄生獣』は、岩明均による日本のマンガ。人間を捕食する寄生生物と右手に寄生生物を宿した高校生シンイチの数奇な運命を描く。
人間の存在が地球に害であるというテーマを掲げており、タイトルの「寄生獣」は前述の寄生生物ではなく、地球に害をなす人間を指している。
その重厚なテーマを背景に、キャラクターによるメッセージ性の強いセリフが多く、作中で多くの名言が登場している。

田宮「人間には命令が来てないのか?」

シンイチの通う高校に教員としてやってきた寄生生物「田宮良子」。その田宮良子に対峙したシンイチは、人間を食べなくても他の栄養素から寄生生物は生きていけるのではないかと問いかける。

その問いに田宮良子は生物は皆、生まれたときから「命令」受けているのだと応え、そして本セリフでシンイチに「人間には命令が来てないのか?」と問いかけ直す。この時のシンイチはまだ田宮良子の言っている意味がわからなかった。

短いセリフだが、「命令」を受けた自覚がない人間の生物としての存在理由をシンイチに問うと同時に、読者にも問いかけている重要なシーンとなっている。

田宮「わたしが人間の脳を奪ったとき 1つの“命令”がきたぞ…… “この種を食い殺せ”だ!」

上記の問いに応えられないシンイチに対して、田宮良子は自分たちが受けた命令を明かす。

「わたしが人間の脳を奪ったとき、1つの命令がきたぞ…」
「“この種を食い殺せ”だ」

ここでパラサイトたちの「同種喰い」という性質の根本が明らかになり、「脳を奪ったとき」に命令がきたことから、ミギーとジョーが人間を食べない理由は脳を奪えなかったからだと分かる。

生物としての「本能」と呼べるものを、「命令」と表現する田宮良子。
「この種を食い殺せ」は、地球に対しての人間の罪をあぶり出す大事な設定であり、「寄生獣」を哲学的な作品に昇華させている最も大きな要素となっている。

田村「三人いれば勝てると思ったのか?」

仲間同士の意見の食い違いにより、田村を危険視した寄生生物たちは3人がかりで彼女を始末しようとする。田村はこれを「寄生生物の精神が成熟した証拠」として歓迎する一方、獰猛な笑みを浮かべて「三人いれば勝てると思ったのか?」と笑う。田村の恐ろしさがよく表れたシーン。

田村「彼はわたしが実験により創りあげたか弱い「仲間」の1人ではあるが…無敵だ」

田宮良子が最強の寄生生物「後藤」についてシンイチに語るシーン。一見矛盾したセリフであり、事実シンイチもよくわかっていなかった。

田宮良子はこうも語る。
「あわせて一つ 寄生生物と人間は一つの家族だ 我々は人間の子供なのだ」
「我々はか弱い それのみでは生きてゆけないただの細胞体だ だからあまりいじめるな」

このセリフには、寄生生物は結局は人間という依代がないと生きられない弱い立場であるため、お互い共存しあっていくべきだという彼女の思いが込められている。
個体としては最強に戦闘力が強い後藤も、単独では生きられず、子孫も残せず、一代で滅びる運命にあり、生命力がか弱い。

実際にシンイチを苦しめた「後藤」は人間が不法投棄したゴミの毒であっけなく死んでしまう。読者はそこで改めてこのセリフを思い出すことになる。
何気ないセリフが後の布石となっているのも、本作品が人気の所以でもあり、印象深い名言として読者の記憶に残っている。

田村「ずうっと考えていた… 私は何のためにこの世に生まれてきたのかと… 一つの疑問が解けるとまた次の…疑問がわいてくる… 始まりを求め…終わりを求め… 考えながらただずっと 歩いていた…何処まで行っても同じかもしれないし…歩くのを辞めてみるならそれもいい…全ての終わりが告げられても…“ああ そうか”と思うだけだ」

警察に銃撃により死期を悟った田宮良子の最期のシーンでのセリフの1つが「ずうっと考えていた… 私は何のためにこの世に生まれてきたのかと… 一つの疑問が解けるとまた次の…疑問がわいてくる… 始まりを求め…終わりを求め… 考えながらただずっと 歩いていた…何処まで行っても同じかもしれないし…歩くのを辞めてみるならそれもいい…全ての終わりが告げられても…“ああ そうか”と思うだけだ」である。自分たち寄生生物が何のために生まれてきたのかの答えをずっと探し求めていた、田宮良子の生き様を端的に表したセリフである。

田村「………この前人間のまねをして………鏡の前で大声で笑ってみた……… なかなか気分が良かったぞ………」

上記に続いて、息絶える田宮良子の最期のセリフが「………この前人間のまねをして………鏡の前で大声で笑ってみた……… なかなか気分が良かったぞ………」だ。人間のことを研究し続けた彼女もミギーと同じで、作中で少しずつ人間の心を理解し変わっていった。
最後の最後、親として自身と人間との間に産んだ子供を守る姿に感動した読者は多い。

里美「きみ………泉 新一君………だよね?」

シンイチのガールフレンドである、村野里美のセリフ。ミギーが宿ったことによるシンイチの変化を感じていたが、その変化を理解できず悩むことが多かった。

この「きみ………泉 新一君………だよね?」というセリフは作中、シンイチに変化がある度に村野から問いかけられる。寄生生物と人間の狭間にいるシンイチの応えはその時の自身の心境により大きく変わっている。村野の視点を通して、シンイチの心境が読者に伝わる大事なシーンである。

ジョー「こいつ、何で泣くんだ?本当に人間てのはよく分からねえな」

「母が寄生生物に体を乗っ取られた。その肉体を使われたまま誰かが殺される前に、母の遺体ごと母の仇の寄生生物を殺す」という新一の壮絶な覚悟を聞いた宇田は、号泣しながら彼に同情する。それを見たジョーは、涙を流す宇田を見て「こいつ、何で泣くんだ?本当に人間てのはよく分からねえな」と語る。ジョーもまた寄生生物であること、ミギーと同様の冷徹さを持っていること、その上で宇田とそれなりにうまく共生していることがよく分かるセリフである。

広川「環境保護も動物愛護もすべては人間を目安とした歪な物ばかりだ。なぜそれを認めようとせん!」

組織化した寄生生物のボスといえる広川市長。このセリフは寄生生物が潜伏していた市役所に強行突破をかけてきた警官隊に対する広川の演説の1つ。
寄生生物たちの中でも存在感を放っていた広川だったが、実は寄生生物ではなく人間であり、真に地球を護るためには人類の間引きが必要だという思想を持って寄生生物と手を組んでいた。
この「環境保護も動物愛護もすべては人間を目安とした歪な物ばかりだ。なぜそれを認めようとせん!」というセリフは人間の広川が言うからこそ、深い名言と言える。

広川「人間に寄生し生物全体のバランスを保つ役割を担う我々から比べれば 人間どもこそ地球を蝕む寄生虫!! いや……寄生獣か!」

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