自分の分身を百貨店で買う。そんなSF映画の1シーンが、現実になる時代がやって来ました。

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来

 2023年10月17日(火)18時より、大丸松坂屋百貨店は『VRChat』対応のオリジナル3Dアバター計5体を発売します。販売プラットフォームはBOOTH。

 発売に先駆けて、同社はプレス向けの試着会(記者会見)を『VRChat』で実施。大丸松坂屋百貨店の担当者や、アバターの制作に関わるクリエイターのみなさんが登壇しました。

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いまは3Dアバター業界が超熱い‼

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来

 大丸松坂屋百貨店は2020年より"リアル×デジタル戦略”を掲げています。

 百貨店として、いち早くメタバース業界での取り組みをスタート。これまでに世界最大のVRイベント“バーチャルマーケット”に5回の出展を行い、商品や食品3Dモデルの販売はもちろん、メタバースのユーザーをアルバイトとして雇った接客施策などにも積極的です。

 メタバース施策に関わる担当者さんは、調査をかねてプライベートでも『VRChat』にログイン。日常的にプレイをするだけでなく、ユーザー主催のイベントに参加し、VR空間をユーザー目線で体験しているそうです。

 ちなみに、ファミ通.comでは『VRchat』の始めかた等の記事も掲載しています。『VRChat』ユーザーがどのような日常を送っているのか、興味がある方はぜひ。

 閑話休題。大丸松坂屋さんは新たな試みとして『VRChat』対応のオリジナル3Dアバターの販売へと踏み切りました。メタバースになじみがない方は「なぜ、オリジナル3Dアバター?」と疑問に思うこともあるでしょう。

 ここで指す"オリジナル3Dアバター”とは、『VRChat』や『cluster』、『Virtual Cast』といったメタバースのユーザー向けに制作・提供されている3Dモデルのこと。2023年現在、数えきれないほどの3DモデルがBOOTHを介して販売されています。

 平均価格5000~7000円ほどで購入したアバターを自身でカスタマイズ(改変)して利用するカルチャーが大人気。これらの楽しみ方はおもに個人クリエイターさんに支えられており、ファミ通.comでもアバター文化に迫る記事を公開しています。

 個人ユーザー中心のカルチャーと侮るなかれ。BOOTHが2023年の1月に公開した"BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書”では、3Dモデルカテゴリの取引高は2020年に7.5億円、2021年に14億円、2022年には24億円と、右肩上がりで急成長しています。

 近年は、“LOWRYS FARM”や“niko and…”といったファッションブランドを展開するアダストリアさんがオリジナル3Dアバターや洋服モデルを販売するなど、企業の参入も増加。ゲーム関連で言うと、アークシステムワークスがアバター向けに、『ギルティギア』シリーズの人気キャラクター・ブリジットの衣装販売をスタートしたのは記憶に新しいです。

 すでにメタバースで実績を重ね、ユーザーからの支持も厚い大丸松坂屋さんが、アバター業界へと第一歩を踏み出しました。"百貨店”というブランド力と資本を活用し、業界にどのような未来を創り出すのか。いま、多くの期待が向けられているのです。

ユーザー目線でプロデュースされたハイブランドアバター

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来

 試着会は『VRChat』のオリジナル展示ワールドで実施されました。大丸松坂屋さんが、プロジェクトの制作進行を務める企業・Vさんと共同で用意したものです。入場すると関係者の皆さんとクリエイター陣が勢ぞろいしており、和気あいあいと賑わっていました。

 まずは、大丸松坂屋の経営戦略本部 DX推進部の岡崎路易さんが挨拶。プロジェクトの仕掛け人であり、前述した"プライベートで『VRChat』をプレイする”人物です。

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来

 岡崎さんによれば、本アバタープロジェクトは約半年をかけ、15名のクリエイターとともに制作を進めたとのこと。また、「告知は大丸松坂屋にとって初の万バズ」とも発言しており、ユーザー内外からの注目度が高いことを示唆します。

 第1弾として公開されたのは、“正装”を共通コンセプトにした5種類のアバター。販売価格はそれぞれ30000~36000円[税込]で、百貨店らしいハイブランド路線と言えるでしょう。

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 試着会では、その中から4体のアバターを担当クリエイターのみなさんがひとつひとつ丁寧に紹介してくれました。

風璃(ふうり)

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 原画をBALANCEさん、モデリングは頭部をもちひよこさん、素体を明日葉わがみさん、衣装をYzhaさんが担当。VTuberとしても知名度の高いもちひよこさんが関わるアバターであり、ご本人によれば「なるべくクールに! それでいて、表情豊かなモデルにしています!」とのこと。ちなみに、髪型の変更なども可能。

 『VRChat』ユーザーから人気を集めるクリエイターの3人が共同でモデリングを担当した1体でもあり、体を作る明日葉わがみさんは「女性らしい細さが魅力の雰囲気を壊さぬよう、原画のシルエットの細さを再現しています」とコメントしていました。

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 “空気を纏う”ような衣装やアクセサリーを担当したYzhaさんからは「ふわっとしたスカートやアクセサリーの造形を原画の雰囲気に寄せつつ、破綻しないように忠実に再現。テクスチャの影の具合も原画に雰囲気を寄せるような形で試行錯誤しています」とこだわりが語られました。

龍青(りゅうせい)

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 原案を米室さん、モデリングは頭部をおとぎ かたりさん、素体を(仮)さん、服をRADIKAさんが担当。"中国の青磁器”がモチーフで、筋肉質な体つきや長いポニーテールが特徴的です。

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 何よりの注目ポイントは、近くで見れば見るほどイケメンということかもしれません。顔を担当したおとぎさんによると「横顔や斜め顔が男性的に見えるよう、彫りを深くしたり鼻を高くしたり、顔のシルエットをとても意識した」。

 名前の由来にもなった龍柄の白いスーツを作り上げたRADIKAさんは、モチーフとなった青磁器を深くリサーチ。柄の線をぼかしたり伸ばしたりなどの手法を使わない青磁器と同じく、べた塗りの輪郭だけで柄を再現するように細かく書き込んだそうです。

彩千華(さちか)

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 原案をナナカワさん、モデリングをみりのさんが担当。デルフィニウムという花がモチーフになっており、その花言葉は「あなたは幸福をふりまく」。

 ツインテールや細部まで丁寧に作り込まれた美しいデザインが特徴であり、モデリングを担当したみりのさんによれば帽子やタイツの模様は非常に長い時間をかけて作り上げたのだとか。

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来
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 「VRで着用したときにすっと入ってくるような着心地がいいように仕上げた」そうで、"自身で着て動く”というVRSNSの仕様を想定したモデリングは、この世界では重要なこだわりです。

鳳蝶(あげは)

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来

 原案を7日さん、モデリングを伊ノ本カズラさんが担当。プロジェクトのコンセプトである"正装”を正面から体現するスーツタイプの男性で、蝶と華のイメージが盛り込まれたアバターです。

 衣装の生地感や華やかなアクセサリーも特徴的。伊ノ本さんによれば、光に当たると少しざらっとした光沢感が出るのがこだわり。髪のモチーフはカラスアゲハで、黒髪にグリーン系の差し色が美しいです。

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来

企業が作るアバターの指標になり得るか?

 以上の4つに、サンゴや海藻をモチーフに作成された“瑚紅姫(ここひめ)”を加えた全5体が、大丸松坂屋さんが送り出す初のアバター。それぞれまったく別の雰囲気をまとっており、自身の好みに合ったセレクトができます。参加した取材陣も、それぞれにお気に入りのアバターは違うようでした。

 筆者は彩千華ちゃんを着用した瞬間に体の動きにフィット! 動くのがとっても楽しくて、気づけばたくさん自撮りしていました。

【メタバース】百貨店で『VRChat』アバターを買う時代が来た! 大丸松坂屋がユーザーと協力したハイブランド路線から見える未来
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 それぞれのアバターが細部まで作り込まれているだけでなく、専用のアバターギミックなども用意。早期購入特典として、特定のアバターには特別なアクセサリー(髪飾りや扇風機)が付属されているそうで、どれを選ぶのか迷ってしまいます。

 10月17日のリリースが目前に迫る大丸松坂屋さんのアバタープロジェクト。今後のメタバースカルチャーにとって、アバターは非常に注目度の高いアイテムです。そこにいち早くユーザー目線で切り込んだ大丸松坂屋さんの挑戦は、企業が作るアバターの指標となり、楽しい未来を予感させてくれました。

 百貨店がプロデュースする、ちょっぴり特別なアバターを自分の分身にしてはいかが?

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