東京に「赤ちゃんポスト」は必要? それとも不要? 視聴者を交えて生議論

2022.10.11(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。10月3日(月)の放送では、新企画「GENERATION」がスタート。視聴者を交え、“東京に赤ちゃんポストは必要か・不要か”をテーマに議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。10月3日(月)の放送では、新企画「GENERATION」がスタート。視聴者を交え、“東京に赤ちゃんポストは必要か・不要か”をテーマに議論しました。

◆全国で二例目、東京で2024年に“赤ちゃんポスト”設置へ

新企画「GENERATION」は、Twitterの「スペース機能」を活用した新コーナー。幅広い世代の視聴者に参加してもらい、番組に出演するZ世代のコメンテーターとともに、ひとつのニュースについて生放送で議論します。

記念すべき第1回のニュースは「東京の赤ちゃんポスト構想」

都内の医療法人社団モルゲンロートは、親が育てられない子どもを匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」を都内に設置する計画があると明らかにしました。

ポストは2024年秋頃、江東区に新たに開設する産婦人科医院に併設する計画。24時間スタッフが常駐し、内密出産にも対応します。預かった赤ちゃんの里親探しや行政機関との繋がりなど、今後具体的に検討していくということです。

小暮裕之理事長は「賛否両論あるが、子どもの命を守るための取り組みとして各地に広がってほしい」と話しています。

そこでスタジオでは「東京に“赤ちゃんポスト”は必要か不要か」を議論。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、この赤ちゃんポスト構想について「必要だと思う」とした上で、「東京云々という話ではなく、今回は国からガイドラインが出た。そこに触れる必要がある」と訴えます。

そのガイドラインとは、法務省と厚労省が共同で出したもので、大空さんは「非常に画期的な一歩」と高く評価。この契機のひとつに熊本市の慈恵病院があります。同院では、2007年から赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を日本で初めて設置。外から保護室に赤ちゃんを預けるとブザーで職員に知らせる仕組みで、2022年3月までに161人を保護。また、親たちが保護責任者遺棄罪などに触れないよう、児童相談所や警察と情報を共有しながら共同で運営しており、2019年からは内密出産制度も導入。病院以外に身元を明かさず出産した例がこれまでに5例あります。

現状、赤ちゃんポストはこの慈恵病院にしかなく、「院長をはじめ慈恵病院のみなさんは本当に試行錯誤しながら、自分がもしかしたら犯罪者になってしまうんじゃないか、逮捕されてもいいというほど追い詰めてしまっている状況が仕組みとしてあった」と現状を解説する大空さん。そして今回、非常に細かな手続きまで網羅されたガイドラインができましたが、一方で「当然課題はたくさんある」とも。

なかでも一番の問題は「子どもの出自を知る権利」。つまり「子どもが大人になった時などに自分の出自をいかに知るのか」ということで、例えば親がどうしても身元を明かしたくない場合、慈恵病院では職員のひとりにだけ情報を伝え、その人が情報を守り抜いているそう。こうした状況に大空さんは「本来、データベースを作って国が管理しないといけない情報管理をひとつの病院に任せてしまう。今回もクリニックに任せてしまうことになるが、やはり国がもう一歩踏み込む必要があると思う」と主張。

キャスターの堀潤も「確かに相当な覚悟がある病院でないと、この制度には参画しづらいのかもしれない」と案じ、「だからこそ将来的に幅広に、公の仕組みとしての整備をさらに求めたい」と今後の改善に期待します。

スペース上で参加している視聴者は、賛否については「微妙」としながら、「どうしても命が失われる状況があるなら」という条件で赤ちゃんポストの存在を認め、「(赤ちゃんポストが)最後の網になるのではなく、いろいろと複合的な対策を行わなければいけない問題」と訴えます。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんも同様に「『こうのとりのゆりかご』も赤ちゃんを救済する目的で始められたものだと思うし、失われてしまう命があるならばというところで、(病院も)覚悟を持ってやっていることだと思う。必要か不要かで言えば、ある程度必要性があると思う」と赤ちゃんポスト設置に賛成。

平和教育を研究する東京大学3年生の庭田杏珠さんも「必要」と明言し、その上で「失われてしまう命がひとつでも救われることは重要だと思うし、当事者がその後どういうふうに人生を送るのかも見ていく必要がある」と私見を述べます。

◆東京の大きな問題点は、各所と連携できるのか…

賛成の声が多いなか、ある視聴者からは「僕は賛成半分。課題が大きいので反対という部分も」との意見もあり、「日本は法治国家であり、慈恵病院の件にしても犯罪者になるかもしれないという課題を、法的にクリアしていかないと(赤ちゃんポストを)推進していくのは難しいと思う」と持論を述べます。

すると大空さんは「まさにそう」と頷き、「ただし、さっき言った問題はある程度解消されていて、(親の身元については)例えば、空欄や仮名でもいいということになっている。その問題は国会の野党議員の質疑によって非常に進んだところはある」と示唆。

とはいえ、課題が大きいことも事実で、慈恵病院はすでに実績があり、児童相談所や警察といった地元の機関との連携が図れていますが、大空さんは「東京でやるとなった場合、果たしてどれだけ連携してやっていくことができるのか」と危惧。というのも、東京の児童相談所は地方とは比較できないほどに逼迫しているため、「どの程度連携できるのかという問題もある」との指摘も。

赤ちゃんポストに対して「子どもを捨てる場所になるんじゃないか」という反対意見もあるため、庭田さんは「教育の観点も考えないといけない。センシティブな部分だが、性教育をもっと充実させていくことも重要だと思う」と主張します。

古井さんも、「子どもを産み・育てていくことに関する授業は家庭科で少しやったぐらいの記憶しかない。命に関わることなので、そこはしっかりやるべきだと思う」と性教育の在り方について言及。

こうした意見に対し、大空さんは「この問題は性教育を充実させても大して解決はしない」と主張。望まない妊娠を防ぐことにはつながるものの、「これは性教育の問題という話ではなく“責任”」と強調。例えば、フランスでは男性側の子どもに対する責任もしっかりと追求し、離婚をした場合には養育費を給料から天引きされる法律があるとか。しかし、日本はそうした面が乏しく「女性だけに責任を押し付けている」と大空さん。

堀も「(赤ちゃんを)遺棄した母親だけが容疑者として報道されることが多いが、その前段階で男性(父親)はどこにいったのか」と憤ります。

さらに大空さんは「あらゆる問題の着地点をみんな安易に“教育”としてしまう。それも大事だが、効果が出るのは50年も100年も先」と憂惧。その上で「教育現場の逼迫問題も指摘しないままに(要因を教育と)言うのは無責任であり、その前にやはり制度として確立することを優先すべき」と力説。

対して古井さんは「制度でやる部分と、やはり教育も両立すべき。優先順位というところで議論があるのかなと思う」と述べていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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