【解説】SIREN2の自衛隊ネタ【永井・三沢・沖田】

SIREN

前作「SIREN」から基本コンセプトを引き継ぎつつ、さまざまな面で進化した本作には、戦闘に長けたキャラクターが登場します。

三沢岳明と永井頼人。

職業は陸上自衛官です。

彼らの登場により、ゲームのアクション性が大きく向上しました。

この記事では、SIREN2における自衛隊描写の解説をします。


日常生活には なーんの役にも立たない知識を長々と披露していきますよー

(一部間違っていたり古かったりするかもしれません)


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自衛官登場の経緯

彼らは本作においては完全な巻き込まれ型のキャラクターです。

物資輸送訓練にて、物語の舞台となる夜見島近海の上空をヘリにて移動している最中に、怪異に巻き込まれました。

このことから、夜見島を中心に円柱状に影響範囲が及んでいることが分かります。

怪異発生時にヘリパイロットが原因不明の死を遂げることにより、機体は制御を失い、島に不時着します。


余談ですが、ヘリはエンジントラブル等の際に、オートローテーションと呼ばれる操縦方法で比較的安全に不時着することが可能です。

ローターの回転速度の低下を検知すると、クラッチが外されローターが自由回転するようになり、落下の際に発生する風圧でローターを回転させることである程度の減速と滑空を行うことができます。

アーカイブにある機上無線の記録から、パイロット死亡後もしばらく飛行を続けていたようですので、乗組員が必死に機体の姿勢制御を行っていたものと推測されます。


その結果、海面ではなく現代の夜見島の森にヘリを不時着させることができましたが、機体は大破炎上する大惨事となってしまいます。


パイロット死亡の原因は明かされておらず、初代SIRENの石田巡査のように、たまたま怪異に対する抵抗力が弱かったのかもしれません。


墜落の結果、三沢岳明と永井頼人のみがほぼ無傷で助かり、三沢の部下であり永井の先輩でもある沖田は瀕死の重傷を負ってしまいます。

同乗していた十数名の自衛官は全員死亡してしまいました。


その後、沖田も怪我が原因で死亡しますが、二人の目の前で屍人として活動を再開。

持っていた9mmけん銃を永井の頭部に向けて発砲し、ヘルメット(88式鉄帽)を弾き飛ばします。


あれこれあって沖田を撃退しますが、いつの間にか島にはかつての仲間である自衛官屍人が複数徘徊しているのでした。


彼らを避け、時には無力化しながら探索を続けているさなかに、赤い津波に飲まれて異界の夜見島に流されることで、本格的に怪異に巻き込まれることになります。


自衛隊ネタの解説(セリフ編)

「今から私が緊急避難の指揮を執る」

ヘリの墜落後、瀕死の沖田を機体の残骸から運び出した際に三沢が宣言した言葉です。

ご存じの通り、自衛隊というのは厳格な階級社会であり、上位の指示に下位の隊員は従わなければなりません。

では、部隊の指揮官が死亡等して職務から離脱した場合はどうなるのか。

残存している隊員の中で最も階級が上の人間が指揮を継承することになります。


物資輸送訓練に参加していた部隊の指揮官は一藤二孝(いちふじ・にたか)一等陸佐(いっとうりくさ)でした。

自衛隊の知識がない方には馴染の薄い言葉だと思いますが、一等陸佐は諸外国でいう「大佐」に該当します。


一藤が墜落により死亡してしまったことにより、指揮官としての職務を果たすことができなくなりました。


生存者は次の通りです。

三沢(三等陸佐=少佐)

沖田(二等陸曹=二等軍曹)

永井(陸士長=一等兵)


この中で最上位なのは三沢になりますので、彼が緊急避難において生存者たちの指揮官となるわけですね。


「危害射撃だ」

屍人化した沖田に発砲された際に、9mmけん銃を永井に差し出しながら三沢の言ったセリフです。

耳慣れない言葉でしょうが、文字通り相手を殺傷するために発砲することを意味します。


基本的に、自衛隊は以下の流れで危害射撃に移行します。

  1. 警告:要警戒者に対して、指示に従うよう警告する。
  2. 武器を構える:警告を聞き入れず迫ってくる場合には、要警戒者に対して銃口を向けるなどの動作を行う。
  3. 威嚇射撃:上空に発砲、止まらなければ足元に発砲。
  4. 危害射撃:なお敵対的な態度の場合、もしくは攻撃を受けた場合は、殺傷を目的にした発砲を行う。


とはいえ、相手が撃ってきたなど、明確に攻撃を受けた場合は、危害射撃による正当防衛が認められています。

余談ですが、「武器の使用」という日本語は、法律上は武器を用いて言うことを聞かせることを意味します。構成要件に傷つけることは含みません。

なので、上記でいえば「武器を構えた」段階で武器使用とみなされます。

もっと言えば、銃剣を構える、警棒を構える、銃を手に取るだけでも武器使用になります。


言うまでもありませんが、ゲームだから悠長に「危害射撃だ」などと言っていますが、ヘルメットを飛ばされるような明確な攻撃を受けた際は、わざわざ宣言せずに撃ち返すのが普通です。


「了!!」

これは短いですが、自衛隊用語です。

(もしかしたら警察も?)


文字からして想像できるでしょうが、「了解」の短縮語です。

そのまま「りょう」と発音します。


時間に余裕のある時は「了解」ということが多いですが、時間がなかったり、息が上がっていたり、急いでいるときは「了」とだけ叫び返します。

事故のショックと沖田の大けがで動揺して泣いている永井ですが、訓練の成果からか、三沢の指示に絞り出すように返答するのが印象的ですね。


自衛隊ネタの解説(武器装備編)

照準眼鏡(スコープ)付き64式小銃

三沢が所持している64式小銃です。

作中に登場する他の自衛官(屍人闇人含む)が所持していないことから、三沢の専用武器といえます。


こちらは現行(後継)の89式小銃です。


プレイヤーが使用するには、三沢のシナリオをプレイするか、

裏技的に三沢が同行者の場合に攻撃を加えることで、たまに武器を落としますので、それを拾って使用するかの二択になります。


ゲーム中での性能は、主観照準時のズーム倍率が他の通常の64式より高倍率ということのみで、攻撃力等は変わりません。


しかし、ゲーム内性能以外の特徴として、三沢の優秀さがよくわかる装備になります。

現在では対人狙撃銃(M24)が配備され、専門的な狙撃手が育成されていますが、作中年代の2000年代初頭の自衛隊には、狙撃手(スナイパー)はいませんでした。


代わりに、部隊内で射撃成績の良い隊員に照準眼鏡付きの64式が貸与され、選抜射手(マークスマン)として活動していました。


選抜射手とは、狙撃手と歩兵の中間の距離での戦闘を想定した区分になります。

基本的には高精度の小銃にスコープを乗せ、通常戦闘+中長距離戦闘を行います。


諸外国では精度の高い小銃個体をチューニングして使用しますが、

64式はもともと命中精度の高い小銃でしたので、スコープを乗せるだけで運用が可能だったそうです。


三沢はレンジャーMOSを有しているだけでも自衛官として優秀な戦闘能力を誇る上に、選抜射手に抜擢されるほどに射撃の腕が高いのだということが分かります。


9mm機関けん銃がやたらと登場する。

永井がムービー中に時折使用していた小型の機関銃が9mm機関けん銃です。

(三沢を射殺した銃といえばわかりやすいですかね)


作中では、敵が持っていることも多いため頻繁に入手する機会がある武器です。

使用弾薬は9mmけん銃と同じ9mm×19弾(有名な9mmパラベラム)で、非常に高レートで連射することが可能です。


プレイ中はシステムの都合か、9mmけん銃と同じ構え方をしますが、実際には備え付けの前部握把(フォアグリップ)を握って射撃します。


実はこの銃は、自衛隊においては結構レアなもので、一般部隊の隊員が使用することはほぼありません。


陸自においては266丁しか調達されず、配備先も限定的です。


基本的に幹部自衛官の自衛用火器として運用されているので、三沢はともかく永井の個人装備になることは考えにくいです。

とはいえ所詮は銃ですので、使う(発砲する)ことは容易です。

が、厄介なのはこの銃のもつ特性です。


見てわかる通り、銃床(ストック)がなく、射撃の反動を両手で抑えなければなりません。

しかし、射撃レートが毎分1,000発を超える高レートのため、反動がすさまじいことになります。


とてもプレイ中のように腕を伸ばして構えて連射、なんてことはできません。

そのためか、永井編のラストで周囲の闇人に乱射する他は、三沢を射殺する際も単発での発砲にとどまっています。


永井は異常な服装をしている

プレイヤーの心にトラウマを残すエンディングに落ちてしまった永井について、

パッと見は軽装備の自衛官ですが、実は異常な服装をしているのです。


ご存じの通り、自衛隊の戦闘服は迷彩柄であり、分類としては「迷彩服2型」となります。

ズボン、上衣ともに同パターンの迷彩服を着用しますが、肌着として使用するシャツもガラや色が指定されているのです。


現実の自衛隊においては、同じ迷彩パターンのシャツもしくはOD色(オリーブドラブ)のシャツでなければなりません。



しかし、永井の来ているシャツは赤色で、さらに胸元を大きく開いています。


おそらく、永井の性格を表すための演出なのでしょうが、実際はあり得ない格好といえます。


かつて、現実の自衛隊において「輝号計画」と呼ばれる服務規程緩和措置が取られたことがあります。


バブル期以降の経済成長に伴い、一般社会とはかけ離れた職場かつ3Kで有名な自衛隊は志願者不足に悩んでいました。


そこで、自衛官の待遇を民間と同等にするのを目的に、規則の緩和を行う輝号計画が実施されました。

例えば、

  • 居室(だいたい10名前後の相部屋)にパーテーションを設置することで、プライバシーの確保。
  • トイレを和式から様式に変更。
  • 外出制限の緩和。
  • 週休二日制への移行。
  • 身体・精神的な暴力の規制。


これらは、平成17年に、一部(週休二日制など)を除いて廃止された計画です。

廃止理由としては、ゆとり世代の入隊により規律維持が困難になったことと、防衛庁から防衛省へ移行する関係での任務の複雑化からとされています。


作中年代が2005年であることを考えれば、輝号計画の影響を受けているという細かなネタなのかもしれませんね。


余談ですが、

インナーの柄まで指定されている理由としては、迷彩効果を極限まで高める狙いがあります。

他にも、暑い環境で活動する際は、上衣を脱いでシャツになることも想定されます。

その際にも可能な限り迷彩効果を発揮するためです。


さらに余談ですが、

自衛官が支給される迷彩服には「難燃加工」と「対IR加工」がされています。


難燃加工は、その名の通り火が燃え移りにくい加工のことです。


対IR加工は、IR(赤外線)の反射を抑える加工のことです。

これが何を意味しているかというと、暗視装置に移りにくいというと性能を持つということです。


暗視装置には光増式(パッシブ型)と赤外線照射式(アクティブ型)の二種類があります。


光増式はその名の通り、星明りなどを何万倍にも増幅して視界を確保する方式です。


赤外線照射式は、肉眼では視認できない赤外線を照らして視界を確保する方式です。

目に見えないだけで、懐中電灯と同じ仕組みで暗闇を見ることができるのです。

この照射される赤外線の反射を抑えることで、目立たなくさせるのが対IR加工です。


ちなみに、これらの加工は、アイロンがけで性能が落ちてしまうのですが、

自衛隊は見栄え重視なので信じられないほど戦闘服にアイロンがけ(プレス)をします。


さらにさらに余談となりますが、

「1型」は、1970年代から使用されていた旧式迷彩です。

当時の情勢から戦場となる可能性が高いのは北海道と想定されていました。

そのため、北海道に広くみられる熊笹と赤土にマッチするパターンの迷彩服が使用されていたのですが、

本土以南の植生においては返って目立つという欠点がありました。


そこで採用された2型(新迷彩とも呼ばれた時期がありました)は、日本全国で汎用的に効果を発揮する迷彩パターンが採用されています。

現在では4型まで更新されていますが、ポケットの位置など細部のデザインが変更されているのみで、迷彩パターンは同一です。

いわば日本専用の迷彩服ですね。


まとめ

いくつか、現実ではありえない描写も紹介してきましたが、

なにも私は「こんなのありえない!リアルじゃない!」と声高に喚き散らすつもりはありません。


目的は私の持つウンチクを一方的に披露することであり、

それで私は気持ちいいし、誰かの参考になればもっと嬉しいというだけのことです。



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