ランス再び   作:メケネコ

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お町との再会

「久しぶりじゃな、ランス、レン、日光」

 お町はくつくつと笑いながらランスの肩を叩く。

「おお…本当に成長したな」

 昔はミルよりも幼く、ランスも全く反応しなかったが今は違う。

 ランスが戦った時のお町程大きくは無いが、それでも十分に色気を感じさせる体つきになっていた。

「…スラルの姿が見えぬな」

「我はここだ」

「声はすれど姿は見えず…いや、ここか」

 お町はランスの手の中の剣を見る。

 スラルの声はそこから聞こえていた。

「久しぶりだな、お町」

「ああ。しばらく見ない内に随分と変わったな」

「それはお互い様…と、言いたいがお前の方は200年以上経過しているのだったな」

 お町は胸を張って笑う。

「フフ…これで妖怪王としての貫禄も出てきたか?」

「出てきた出てきた。お前も立派な妖怪王だな」

 ランスはぐふふと笑いながらその体を見る。

 何しろ今のお町は出る所はしっかりと出ている体をしている。

 ただ、年齢としては18~20くらいの外見で、LP期のような体では無い。

 それでもランスのハイパー兵器は十分に反応する体だ。

「…予想はしていたが、やっぱり我をそう見るか」

 お町は自分の体を隠すようにしてレンの背後に隠れる。

「それにしてもお前はここで修行をしていたという事か」

 スラルの言葉にお町は頷く。

「ああ。天志教の残した書物を読み漁り、そして実際に魔物を狩ったりな。まあそれ以上に厄介な奴に見つかったのだが…」

 お町は苦々しい顔をする。

「厄介な奴?」

 日光の言葉にお町はため息をつく。

「…魔人ザビエルの使徒、戯骸だ」

「魔人ザビエルの使徒!?」

「うげ、ホモ焼き鳥か。あ、でも今は女だったな」

 使徒戯骸…魔人ザビエルの使徒にして、恐らくは最強の使徒。

 ランスの尻を狙っていた使徒だったが、幸いにも今は女として生きている。

「で、その戯骸は?」

 レンは周囲を見渡すが戯骸が側に居る様子は無い。

「ああ。あいつは今寝てるらしい。主が復活する時まで寝てる事が多いぞ。200年ずっとあいつと戦っていた訳では無いからな」

「主の復活…魔人ザビエルが復活するというのですか」

 お町の言葉に日光の目が細くなる。

 魔人ザビエルはJAPANの者にとっては間違いなく敵だ。

 ザビエルは倒された訳では無く、封印されているだけだ。

 ならば、その封印が何時解けるか…確かにその不安はあるだろう。

「何時になるかは分からんがな。それは直ぐかもしれないし、1000年先かもしれない。だが、今の時代に目を覚ませば大変だろうがな」

 ランスはザビエルが何時目覚めるかは知っている。

 LP期に復活し、JAPANを散々荒らしまわり、ランスの友人の信長の体を乗っ取り更には香に酷い事をした奴だ。

(今ザビエルの奴をぶっ殺せばどうなるんだ?)

 そんな事も考えるが、問題なのはザビエルの強さだ。

 魔人ザビエルは本当に強く、ランスも結構苦戦させられた相手だ。

 ゼスやリーザスからの援軍、そしてJAPANに住む有力な実力者たち、そして未来の妖怪王である正宗といった者達と渡り合った魔人だ。

 元魔人四天王の名は伊達では無く、ランスも今の戦力でザビエルとその使徒と戦うのは危ないと考えていた。

(今考えてもどうにもならんな。それよりもサイゼルだサイゼル)

「とにかくここから離れるぞ。お町、お前もそろそろ大陸に行きたいだろ」

「…ちょくちょく大陸には行っていたがな。まあここから離れるのは賛成だ」

 取り敢えずランス達は移動をする。

 時間は有限なので、ランスとしてもグズグズしている暇は無い。

 そしてランス達が居なくなった後、一人の女が姿を現す。

「あらあら…どうやら一番星様が来てたみたいですね。何とタイミングの悪い」

 そこに現れたのは使徒戯骸。

 戯骸は肩をすくめると、そのまま再び眠りにつくために移動を始めた。

 

 

 

「で…突然我をこんな所に連れてきて何をするつもりだ」

 その夜、食事が終わり風呂に入った後で早速ランスはお町を部屋に連れ込んだ。

「がはははは! この時間に男と女がやる事は一つ! セックスだ!」

 ばばーんとランスは全裸になる。

「雷撃」

「あんぎゃー!」

 お町の雷撃を受けてランスが倒れる。

 が、直ぐに起き上がる。

「何をする!」

「それはこっちの言葉じゃ。いきなり閨に連れ込むとは…相変わらずな男だな」

「前は全く反応しなかった。が、今のお前なら話はちがーう! 俺様のハイパー兵器が反応しているからな」

 ランスの股間のハイパー兵器は天を向いており、それを見てお町は尚も呆れたため息をつく。

「まあ待て。正直言うと、我はお前が嫌いでは無い。先代妖怪王黒部殿がお前に傅くのも理解は出来る」

「だったら問題無いだろうが」

「じゃがな…お前の本当の強さを我は見たい。魔人を倒す手は見つかったのか?」

 お町の言葉にランスは胸を張る。

「おう。今は日光があるからな。日光があれば魔人の無敵結界なんぞ意味が無いからな」

 ランスの言葉にお町は目を細める。

「…それはあの女の力なのであって、お主の力では無いのではないか」

「む」

 お町の指摘を受けてランスは思わず口ごもる。

 確かにお町の言う通り、日光の力は日光自身が手に入れた力だ。

 昔お町に語っていた魔人を倒す力をランス自身が手に入れた訳では無いのだ。

「お主がその力を手に入れていないのであれば我はお前に抱かれる気は無い。我は黒部殿の後を継いだ2代目妖怪王、その矜持も誇りも有る」

「むぅ…」

 お町の顔を見てランスも思わず唸る。

 確かにお町の言う通り、今の彼女からは昔のような弱さは感じられない。

 自信と強さに満ち溢れた、LP期の彼女に近づいていっているのは間違いなかった。

 ただ、容姿がLP期よりもまだ若いので若干背伸びをしている印象を受けるのも事実だ。

「取り敢えず着替えろ。正直見苦しい」

「見苦しいとは何だ! 全く…失礼な奴だ」

「いきなり全裸になる奴にそんな事を言われる筋合いは無いのだが」

 明確な拒絶ではあるが、道は彼女自身が作っている事を理解してランスは着替える。

(結局は俺が無敵結界を何とか出来ればお町は俺の女になるという事だからな)

 LP期においては出会った時には既にあの目玉の妻だったようだが、今の時代なら十分に自分の女にできる。

 それを見越しての無理矢理襲うような事はランスはしないだけの理性はあった。

「大陸の話は聞いている。魔人を倒したというのはお前なのか?」

「おう。本当だぞ。俺様は魔人をぶっ殺した。なんつー魔人かは忘れたがな」

「自分が倒した魔人の事も覚えていないのか…お前がそう言うならそういつは男だったのだろうな」

 相手が女ならランスが覚えていないはずがない。

 それを理解している自分に不思議な感覚を覚える。

「それが例の聖刀日光の力という訳か。成程、魔人の無敵結界を斬るか」

 お町は以前に魔人レキシントンに絡まれ、その時は無敵結界の前に手も足も出なかった。

 いや、無敵結界が無かったとしてもあのレキシントンには勝てなかっただろう。

 正直今でも魔人には勝てるとは思っていない。

 それくらいの自覚はあるのだ。

「ランス、今の我はお前の力になれるか」

 お町は真っ直ぐな目でランスを見る。

「戯骸とやりあえるくらいには強くなったんだろ。だったら大丈夫だろ」

「…正直手加減されているのは分かってはいるがな。だが、それでもやりあえると言われれば出来るだろうな」

「じゃあ問題無いぞ」

 戯骸は使徒の中でも本当に強い。

 LP期でも変身されればランスも危なかっただろう。

 戯骸のあの性格を利用し、LP期でもNC期でもランスは戯骸に勝利したのだ。

 その戯骸と渡り合えるのであれば、戦力として全く不足は無かった。

「そうか…お前の側に居たのは魔人や使徒だったからな…」

 ランスと共に旅をしたが、お町はその時はあまり役には立っていなかった自覚が有る。

 それは妖怪王の名を継いだつもりのお町には苦しい時間でもあった。

 自分は先代妖怪王黒部に近づけたのか、それがお町の悩みだった。

 何しろ先代妖怪王黒部がどれ程強かったのか、それを知っているのは目の前の男とその仲間だけなのだから。

「で、これからの目的は有るのか」

「おう。まずは魔人サイゼルとヤる。そうすればもっと強くなる、それだけだ」

 ランスの剣には魔人ハウゼルの力が宿っている…のだと思う。

 きちんと確かめた訳では無いが、炎の魔法をこの剣で無効化出来たので、それがハウゼルの力なのだろう。

 ランスはそれを本能的に察知していた。

「そうか…それがあの時言ってた事か。だが、その魔人サイゼルとやらに会えるのか?」

「それは…何とかなる、はずだ。うむ」

 それを言われるとランスとしても弱い。

 ハウゼルの時はケッセルリンクとその使徒と色々な策を練った結果、ハウゼルと戦う事になった。

 その戦いもランスが1対1で戦った事で彼女に認められた。

 だが、そのためには色々と準備をし、彼女の弱点を突いても尚ランスは苦戦させられた。

 ハウゼルが全力を出せない状態で戦っても正直厳しかった。

 それを考えればサイゼルとの戦いはそう上手くは行かないだろう。

 幸いなのは、ランスはLP期でサイゼルと戦っていたのでその性格、そして戦い方はある程度把握しているというのは強みだろう。

 ただ、それでも戦う場所は選ばなければならないだろう。

「とにかく! お前も俺の女になるのは確定な訳だ」

「まだ確定はしておらんぞ」

「いいや、俺に出来ない事は無い。だからお前は俺の女なのは間違いない」

 ランスの言葉にお町は目を丸くする。

 最早魔人を倒すという事は決定していると言わんばかりの態度だ。

 前から自信家だったが、ここまでとは思っていなかった。

 だが、お町は以前に魔王ククルククルの触手を倒した事を知っている。

「まあ出来ないとは思わんがな。お前はそういう男だ」

「当然だ。俺様に不可能は無い。だから先にこうしても良い訳だ」

「何を…むぐっ!」

 何を言っている、と言おうとしたところでお町はベッドに押し倒され、唇を奪われる。

 突然の出来事にお町は目を白黒させるが、特に暴れたりはしない。

 経験が全く無いのでどうしていいのか分からないというのもある。

 なので自分の口の中にランスの舌が入ってきているのだが、なすがままになっている。

 それが何秒なのかなのか、それとも何分だったのかはお町自身にも分からなかった。

「…突然何をする」

「報酬の前払いだ。どうせ俺は魔人を倒すからな。だからもうお前は俺の女だ」

「本当に自信過剰な奴だ…」

 お町はランスを体から退けると、そのまま部屋を出ていこうとする。

「あ、こら何処にいく」

「部屋に戻る。それと…我の唇を奪ったのなら、必ず実行して見せろ。そうで無ければお前を殺す」

 そう言ってお町は部屋を出ていく。

 ランスは少しつまらなそうにベッドに横になると、そこにスラルが話しかけてきた。

「いきなり襲うという事はしないんだな」

「無理矢理襲ったら今までの事が無駄になるだろうが。それに将来俺の女になるのはもう決定しているからな」

「本当にそういう自信だけはあるのだな…で、昼の件を我に話したいのなら話していいのだぞ」

 スラルの言葉にランスが顔を歪める。

「…何を言っておる」

「我はお前の剣の中に居る。だからお前の不満も手に取るようにわかる」

「フン。スラルちゃんには剣は分からんだろうが」

「確かに剣は我には分からない。だが、助言は出来る。お前よりも長い時間を生きているし、何より我もまた臆病故に無敵である事を願った存在だからな」

 自嘲するなスラルの言葉にランスは剣を持つ。

 相変わらず手に馴染む。

 馴染みはするが、その剣を振るった時の感覚がしっくり来なくなっていた。

「スラルちゃんが余計な事を言うから俺の剣がおかしくなったではないか」

「それは我の責任では無いだろう。お前自身の力を使いこなせないお前自身の問題だ」

「今すぐ出てこい。おしおきしてやる」

 ランスは剣を振り回すが、カオスと違ってスラルには特に影響は無いようでけらけら笑っている。

「正直我の言葉をお前が受け入れてくれて嬉しい。で、何がおかしいのだ?」

 スラルの言葉にランスは詰まらなそうな顔をする。

「俺様は強いのだ」

「それは知っている」

「俺の剣のレベルが3というのは本当なのだろうな」

「ああ、それは確信している。そうで無ければカミーラのブレスを斬るという技は出来ない。剣の達人であるガルティアにだってそんな真似は出来ないからな」

 技能レベル3、それはこの世界では本当に数えるほどしか存在していない技能。

 それこそ色々な力があるという事をランスも知っている。

「何が出来るのかさっぱり分からん。というかスラルちゃんに指摘されて初めて気づいたぞ」

「前々から言ってはいたが…お前がそれを自覚したのは恐らくはカミーラ、そしてジルとの戦いだろう。お前の戦士としての嗅覚がそれを気づかせたと我は思っている」

「………」

 魔人カミーラ、そして魔王ジル…それらの強敵にランスは負けていた。

 相手が人間ならランスも強がりの一つも言うだろうが、相手は魔人、そして魔王だ。

 本来であれば負けても仕方ない…というよりも、普通に勝つ事は不可能な相手だ。

「正直我が剣について言える事は無い。だが、お前ならば自分の剣の歴史について理解しているはずだ」

「フン」

 自分の剣の事をランスは振り返る。

 元々は女戦士に鍛えられ、生きるための知識を叩き込まれた。

 女戦士が死んだ後でキースギルドに入り、シィルと出会い、それからはリーザスに関わったりカスタムの4魔女とも知り合った。

 そのカスタムの件でランスが身に着けた必殺技がランスアタックだ。

 勿論完全に見つけるまでに時間はかかった。

 そして今までの戦いで磨き上げて鬼畜アタックまで生み出した。

 ランスアタックを完成させるまでは結構時間がかかったが、それはランスが割と本気で努力をしたからだ。

 自分が使う格好良くそして威力も十分な技…それで今までの危機も切り抜けてきた。

 実際にゼスでもカオスを持ったランスの必殺の一撃が決まり、形勢逆転が出来たのだ。

 そして今のランスの技は確かにその時よりも遥か上のランクに至ってはいる。

 ランスアタックを連続して出しても全く苦にならないし、鬼畜アタックもあっさりと撃てるようになった。

 だが、逆に言えばそれだけなのだ。

 あくまでもランスが得たのは新しいものではなく、既存の技がパワーアップしただけだ。

 それを考えるとランス本人に不満が出てくるのも無理は無かった。

「いかんな。俺様ともあろう者がこんな事にも気づかんとは」

「…どうせ碌でも無い事だろうが、どんな事に気づいた」

「やかましい。まあいい…俺様に必要なのはもっと格好いい必殺技だ」

「そうか。で、お前の格好いい必殺技とは何だ?」

「む…」

 畳みかけるようなスラルの言葉にランスは思わず口ごもる。

 口には出してはいるが正直思い浮かばない…というよりも、全く道筋すら出来ていない。

「ランス、普通の人間…いや、魔人にすらも出来ない事を出来るという事を当然だと思う事が必要だ。お前の技にはそれだけの力がある。カミーラのブレスを斬った時の感覚が必要だ。まあ、あのカミーラと対峙するという事も中々厳しいが」

 カミーラのブレスを斬った時、その衝撃を完全に無効化出来た。

 ゼスであれほどカミーラのブレスに苦しめられたのが嘘のようだ。

 ただ、カミーラの強さはブレスだけでなく、その強力な身体能力と魔法にもあるというだけだ。

「うーむ、まさか俺様がこんな事で悩むとは…」

「自分の強さに悩まないお前がおかしいだけだ。かく言う我も魔王で無くなってから悩み始めたが…何か切っ掛けが有ればとも思うがな」

「…まあ何とかなるだろ。俺様だけの完璧な技を作ればいいだけだ」

 ランスは剣を構えていつもの様に笑う。

 そう、いくら悩もうがどうせ解決なんてしないのだ。

 何時もと同じように、ぶっつけ本番でやるのも悪くない。

「話終わったー?」

 その時レンが扉を開けて入って来る。

「何だレン」

「お町を誘ったけど断られてたみたいだし。そのお町も今日光と話してるしねー」

 レンはそのままベッドの上で寝転がるとその豊かな胸が弾む。

 勿論その行為はランスを誘っている。

 ランスも当然その誘いに乗り、一瞬で全裸になるとレンに覆いかぶさった。

「がはははは! お前もかなりエロい奴だな!」

「…否定しない」

 今日もランスは元気にセックスを楽しんでいた。

 

 

 

 大陸へと向かう途中、当然のようにランス達はモンスターに襲われる。

「…空を飛んでいる敵というのは厄介ですね。向こうの攻撃も避けるのは比較的容易ですが」

 日光は愚痴りながら攻撃を避ける。

 アイロンヘッドやぱたぱたといった空を飛ぶモンスターが襲って来たのだ。

 当然戦士である日光、ブリティシュの攻撃は相手には届かない。

 なのでその手のモンスターには魔法が一番有効だ。

「フン、この程度どうという事も無い」

 お町の放つ雷撃がモンスターをバタバタと落としていく。

 レンもライトボムでモンスターを一掃する。

 それは当たり前のような光景であり、ランスも普段の通り魔法使いに任せればいいと思っていた。

「どうした、ランス」

 不満そうな顔をしているランスを見てスラルは内心ニヤニヤしている。

 普段のランスの行動を知っているので、スラルとしてはこうしたランスの変化が嬉しいのだ。

「なんか嬉しそうだな、スラルちゃん」

「いや、そんな事は無いぞ」

 姿も顔も見えないはずの自分の感情を見抜かれたようで、スラルは内心で驚く。

 ランスという男はある意味女の心に非常に敏感だという事を思い出す。

「ちなみに藤原石丸ならばあの程度のモンスターなら苦も無く倒していただろうな」

「なんだそりゃ」

「お前は興味が無かったようだが、あの男は空を浮かぶ妖怪でも簡単に倒していたぞ」

 スラルの指摘にランスはあからさまに苛立った顔をする。

 藤原石丸はランスにとっては嫌いな人間だ。

 まあランスは男ならば誰だって好きでは無いのだが…その中でも藤原石丸は特に嫌っている人間だった。

 それは藤原石丸がランス同様女好きで、数多くの女を囲っていたのが一番の原因だろう。

 ランスは女にもてる男が大嫌いで、そんな人間は本当に殺そうとするくらい短絡的だ。

 なので藤原石丸に関しては本当に殺そうと行動していたのが、JAPANでの戦乱の原因の一つでもある。

 そんなランスが藤原石丸と比較されるのは非常に不愉快だという事もスラルは分かった上で敢えて口にしている。

「その辺りがお前と藤原石丸の差なのだろうな。それが当然だと思っていた藤原石丸と、出来ない事が当然だと思っていたお前のな」

「俺があのボケナスに負けてるなどありえん。よーし、あのクソボケモンスターをぶっ殺す」

 ランスは剣を構えると、それが闘気の刃となってモンスターに襲い掛かった。

 だが、アイロンヘッドはその翼を使ってランスの剣を避ける。

「む」

「命中精度は高く無いか。流石に空中に浮かぶ敵が相手だとお前でも難しいか」

「やかましいぞ」

 ランスにとっては相手の土俵で戦うなどありえない事だ。

 相手が空を飛ぶ敵なら、空を飛ばせない所で戦い、その場所を作るのがランスという男だ。

 それが相手に『勝つ』という事であり、過程や方法などランスにとっては些細な事だった。

 それで卑怯だの鬼畜などと言われようが、ランスにとっては全て負け犬の遠吠えでしかないのだ。

「うーむ、いかんな。俺様があの馬鹿以下と思われるのは俺様の汚点だ」

「そんなに藤原石丸が嫌いだったのか…まあお前とは絶対に合わない人間だとは思ったが」

 同族嫌悪…とも違うのだろう。

 ランスを評価し部下に誘った藤原石丸と、絶対にその手を掴むことは無いランス。

 藤原石丸の器が大きいと見るべきか、ランスの心が狭いと言うべきか…それは人次第だろう。

 絶対に合わない人間というのは誰にでも居るものだ。

 そんなランスの対抗心、そして魔人に対する危機感がランスを動かしていた。

「俺様の一撃を避けるとは許せんな。だったら避けられないようにすればいいか」

 そう言いながらランスは剣を振る。

 モンスター達は既にレンとお町によって蹴散らされた。

 その様子を見て日光がランスに近寄って来る。

「ランス殿」

「何だ日光」

「…いえ、ランス殿が悩んでいるようでしたので」

「俺様なら問題無い」

 そう言うランスだが、日光にはランスが苛立っているように見えた。

「スラル殿の言葉が原因ですか?」

「お前には関係無いだろ」

「そうかもしれませんが…」

 日光はランスが修行をすると言っていた事に驚いた。

 勿論それは日光にとっても良い事だと思っていた。

 ランスが強くなればそれだけ聖刀日光を手にしたときの力が上がる、それは日光も良く分かっていた。

 あれからもう何日も経っているが、ランスは成果が出ない事に苛立っているのは分かる。

 それは日光自身も経験していた事で、自分も強くなるために悩みもした。

 その自分の時間に比べればランスの悩みの時間など短すぎる。

 ただ、ランスと自分では剣の才能が圧倒的に違う。

 ランスの悩みは自分には全く理解できない事だろう。

 だからこそ、日光はランスの助けになる言葉を言う事を決意した。

「ランス殿…その…ランス殿が新たな剣を見いだせるのなら、私は何だってします」

 それは日光なりの恩返しのつもりだ。

 自分を鍛え、そして助けてくれ、更には仇も討たせてくれたランスへの返しきれない恩がある。

「何を言っている。お前はもう俺の女なんだから、好きな時にヤルぞ」

「そうではなく…わ、私を好きに抱いてくれて構いません」

「はあ?」

 ランスは既に日光を好きに抱いているつもりだ。

 日光も少し勘違いしているが、ランスは性癖については本当に普通だ。

 確かに女を拷問したりと色々とやるが、その拷問もプロの調教師であるタマネギも『優しい』と言うほどだ。

「どんな事にも私は耐えます。ですから、ランス殿も耐えて己を高めて下さい」

「…ほー」

 日光の言葉にランスはニヤリと笑う。

 その笑みに日光は早まったかなと思ったが、一度出した言葉を引っ込めるような事はしない。

「何でもするんだな?」

「…はい」

「がはははは! 俄然やる気が出てきたぞ!」

 こうしてランスはあっさりと機嫌を直し、日光は自分の言葉を少しだけ後悔したのだった。




年末に向けて忙しいので更新速度はどうしても落ちてしまいます
あと寒くて辛い…

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