比叡山延暦寺とは?
「比叡山延暦寺」は、延暦7(788)年に、伝教大師・最澄によって開かれた、天台宗の総本山です。仏教の総合大学的存在で、浄土宗の開祖・法然、臨済宗の開祖・栄西、曹洞宗の開祖・道元、浄土真宗の開祖・親鸞、日蓮宗の開祖・日蓮など、名僧を輩出してきました。平安京の鬼門に位置し、京都の寺社からは必ず比叡山が見えるようになっています。
1994年には、「古都京都の文化財」の構成遺産として世界遺産にも登録されています。
画像提供:比叡山延暦寺
延暦寺というと、比叡山全体のことを指し、「延暦寺」というお堂があるわけではありません。約500万坪(=甲子園球場およそ500個分!)という広大な敷地を、東塔(とうどう)・西塔(さいとう)・横川(よかわ)の3エリアに区分けし、3塔16谷あわせた比叡山全体が「延暦寺」なのです。
比叡山延暦寺の見どころ
画像提供:比叡山延暦寺
『広辞苑』を開いてみると、「山」=比叡山のことと書いてあります。梅雨は「山滴る(したたる)」、紅く色づく秋は「山装う(よそう)」、雪に覆われる冬は「山眠る」、雪がとけて暖かくなってくる春は「山笑う」と表現され、季節ごとに異なる表情を見ることができます。
比叡山の標高は848m、3エリアがある山の上は麓より気温が5~6℃低いので、夏は涼しく避暑におすすめ。秋の紅葉は麓より約1ヶ月早く、10月下旬~11月に見頃を迎えます。春の桜も麓より約1ヶ月遅く、4月後半から5月のゴールデンウィーク頃に満開になります。
画像提供:比叡山延暦寺
ちなみに、延暦寺は京都府にあると思われがちですが、敷地の約9割が滋賀県にあり、京都府にあるのは1割ほど。山の上からは、東に琵琶湖、西に京都市街を一望でき、絶景スポットとしても楽しめます。
それではここから、東塔・西塔・横川のそれぞれの見どころを詳しくご紹介していきます。
延暦寺に来たらまずはずせない「東塔エリア」
延暦寺のはじまりとなった「根本中堂」や、重要文化財「大講堂」など、延暦寺の中心となる建造物が集まる「東塔(とうどう)エリア」。延暦寺参拝でまずはずせないエリアです。
学問修行の道場「大講堂」
「大講堂」に向かう前に、延暦寺バスセンター側から入っていくと、正面に石碑が目に入ってきます。石碑に刻まれている「照千一隅此則國賽」とは、最澄の教えで、「一隅を照らす人こそが国宝である」、すなわち、「自分の役割をしっかりと全うする人こそが国宝である」の意。この言葉は境内の至るところで見られます。石碑の文字は最澄の直筆とされています。
画像提供:比叡山延暦寺
「大講堂」は、学問修行の道場で、重要文化財にも指定されています。法然や親鸞をはじめ、比叡山で学んだ僧侶がすべて祀られています。堂内にはそれらの僧侶の像があり、左端には聖徳太子の像を見ることもできます。
画像提供:比叡山延暦寺
大講堂の左隣には、先祖を供養する「阿弥陀堂(あみだどう)」、仏舎利と法華経が安置されている「法華総持院東塔(ほっけそうじいんとうとう)」が。どちらもきれいな朱色が印象的です。
大晦日の『ゆく年くる年』で中継される延暦寺の鐘
大講堂の横にある鐘は、大晦日のNHK『ゆく年くる年』の中継にも登場します。なんと重さは4.5tもあり、朱色の鐘楼の中に柱がある珍しいつくり。1回50円で誰でも鐘をつくことができるので、開運を願ってついてみては?
延暦寺最初の仏堂「根本中堂」
大講堂から坂を下っていくと、「根本中堂(こんぽんちゅうどう)」が見えてきます。延暦寺最初の仏堂で、国宝に指定されています。
画像提供:比叡山延暦寺
ここでの注目ポイントは、仏様を同じ目線の高さで見られること。奈良の大仏をはじめ、大仏様というと下から見上げるものがほとんどですが、根本中堂の仏様は私たちと同じ目線の高さにあります。下には「修行の谷間」と呼ばれる通路が見え、ここを修行僧が歩きます。
画像提供:比叡山延暦寺
もう1つの注目ポイントは、根本中堂の本尊・薬師如来像の前に灯る3基の「不滅の法灯(ほうとう)」。開創以来、1200年以上消えることなく灯り続けています。
画像提供:比叡山延暦寺
燃料は菜種油で、油が切れると火が消えてしまうことから、「油断大敵」の語源にもなっています。
そして、上を見上げると花天井が。護摩焚きのすすで黒くなっていますが、花模様が描かれているのがわかります。
画像提供:比叡山延暦寺
根本中堂は、2016年から10年をかけて行われる大改修中のため、現在はご覧の通り、覆屋に囲われています。外観を見ることはできませんが、中に入って参拝することは可能です。
現在の建物は、織田信長の焼き討ちにより焼失した後、寛永年間に、江戸幕府三代将軍・徳川家光の命で再建されたもので、屋根は一度すべてはがして葺き替え、朱塗り・漆塗りの塗り替えが行われます。
修学ステージから、こんな間近に屋根を見ることができます。外観は見えなくとも、屋根の葺き替えの様子は改修中の今しか見ることができません。改修はおよそ60年に一度しか行われないので、今のうちにぜひ見ておきましょう!
延暦寺内にある宿泊施設「延暦寺会館」
東塔エリアには「延暦寺会館」という宿泊施設があり、宿泊だけでなく、精進料理をいただいたり、坐禅や写経を体験したりできます。
- ■写経体験■
- 所要時間
- 約90分
- 料金
- 1人 1,080円(税込)
- ■坐禅体験■
- 時間
- 11:00~、14:00~(約60分間)
- 料金
- 1人 1,080円(税込)
- 予約
- 要事前予約、2名以上から受付
そして、延暦寺会館にはもう1つのおすすめポイントが。1階にある喫茶「れいほう」からは、琵琶湖を一望でき、ここで絶景を眺めながら一息つくのもおすすめです。
喫茶「れいほう」で提供しているお茶やコーヒーは、琵琶湖の水ではなく、比叡山の湧き水を使っていて、とってもまろやかな味なので、ぜひ味わってみてください。
- ■朝のお勤め■
- 時間
- 6:30~7:00(12~2月は7:00~7:30)
- 料金
- 無料
受験合格祈願は「文殊楼」に
根本中堂を上がったところにある重要文化財「文殊楼(もんじゅろう)」は、知恵をつかさどる文殊菩薩(もんじゅぼさつ)が祀られていて、学業にご利益があるとされています。そのため、受験の合格を祈願する絵馬がたくさん!
中に入ることもできますが、ほぼ垂直のすごく急な階段を上り下りしなければいけないので、くれぐれも気をつけて!
まだある!東塔エリアの開運スポット
画像提供:比叡山延暦寺
画像提供:比叡山延暦寺
「萬拝堂」の堂内には、人間の煩悩の数と同じ108個の大きな数珠玉が並び、この玉を手で回しながらぐるりと一周すると、煩悩が消えるとされています。
画像提供:比叡山延暦寺
「摩尼車(まにぐるま)」は、真ん中の車輪部分を手で回すと、お経を1回唱えるのと同じとされます。境内にいくつかあるので、見つけたらぜひ回してみましょう!
- 東塔 拝観時間
- [1~2月] 9:00~16:30
[3~11月] 8:30~16:30
[12月]9:00~16:00
(受付は30分前まで)
美しい木々や苔に囲まれた「西塔エリア」
画像提供:比叡山延暦寺
杉木立の中にたたずむお堂と、青苔が美しい「西塔(さいとう)エリア」。弁慶の「にない堂」や、延暦寺最古の建物「釈迦堂」などが集まるエリアです。
弁慶が担いだ!?「にない堂」
西塔に入って最初に現れるのが、重要文化財の「にない堂」。法華堂(ほっけどう)と常行堂(じょうぎょうどう)、2つのお堂が渡り廊下で結ばれた形になっています。
10歳頃に比叡山に預けられた弁慶は、大柄で力があり、2つのお堂と渡り廊下を天秤のように担いだという伝説から「弁慶のにない堂」と呼ばれるようになりました。
この渡り廊下は、京都府と滋賀県にまたがっていて、入り口から向かって左側が京都府、右側が滋賀県です。2つのお堂は、中に入ることはできません。
比叡山延暦寺で最古の建物「釈迦堂」
画像提供:比叡山延暦寺
にない堂の渡り廊下をくぐって進んでいくと、西塔の本堂にあたる「釈迦堂」があります。こちらも重要文化財に指定されています。
本尊の釈迦如来にちなんで「釈迦堂」と呼ばれていますが、正式名称は「転法輪堂(てんぽうりんどう)」。信長の焼き討ち後、豊臣秀吉が比叡山の麓にある三井寺(みいでら)から移築したもので、比叡山山内最古の建物です。
- 西塔 拝観時間
- [1~2月] 9:30~16:00
[3~11月] 9:00~16:00
[12月] 9:30~15:30
(受付は30分前まで)
西塔から横川に向かう途中にある「峰道(みねみち)レストラン」からも琵琶湖を一望できます。
比叡山名物のごま豆腐や湯葉・生麩がのったあんかけ丼「平和丼」(1,200円)、近江牛の手作りハンバーグ・エビフライ・コロッケの定食「近江定食」(1,500円)、ごま豆腐のぜんざい(650円)など、比叡山ならではのメニューがそろいます。ここで絶景を見ながら、ランチやティータイムを楽しむのもおすすめです。
- ■峰道レストラン■
- 営業期間
- 3月16日~12月中旬(予定)
- 営業時間
- 9:00~17:00(ラストオーダー16:30)
紅葉の名所「横川エリア」
親鸞が20年、法然が30年もの歳月を過ごしたとされる「横川(よかわ)エリア」。このエリアの中心となる大堂「横川中堂」や、おみくじ発祥の地「元三大師堂」などがあります。また、紅葉の名所としても知られています。
立派な石垣の上に建つ「横川中堂」
参拝受付から奥に進んでいくと、石垣が見えてきます。そして、石垣の上には、朱塗りの立派なお堂が。
画像提供:比叡山延暦寺
これが横川エリアの中心となる「横川中堂」で、下から見上げると船が浮かんでいるようにも見えます。848年に創建されたもので、ご本尊として観音様が祀られています。
波打つような珍しい形のお堂の屋根にもぜひ注目を。
おみくじ発祥の地「元三大師堂」
比叡山中興の祖として崇められる元三大師の住居だった「元三大師堂(がんざんだいしどう)」。正月の3日に亡くなったため「元三」大師と呼ばれていますが、四季を通して講義が行われていたことから、「四季講堂」が正式名称です。
元三大師はおみくじの創始者で、じつは元三大師堂がおみくじ発祥の地。ここのおみくじは、迷いが生じたときに、本当にひいていいのかお坊さんに問うてから引くという、ちょっと変わったおみくじです。
元三大師堂の前にある石碑(=上の画像)を、撮って、携帯の待受にすると運気があがるとか…?
- 横川 拝観時間
- [1~2月] 9:30~16:00
[3~11月] 9:00~16:00
[12月] 9:30~15:30
(受付は30分前まで)
1200年に渡る歴史を持ち、名だたる僧侶を輩出してきた「比叡山延暦寺」。参拝するだけでなく、桜や紅葉など四季を楽しむことができ、琵琶湖や京都市街の絶景を見ることもできます。
関西や名古屋方面からドライブしながら訪れるのもちょうどいい距離で、遠方からでも京都旅行とセットで訪れるのもおすすめです。
ちなみに、東京・上野の「寛永寺」は、延暦寺を真似てつくられたもので、不忍池(しのばずのいけ)は琵琶湖、中洲にある辯天堂(べんてんどう)は琵琶湖に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)に見立てたもの。名前も、延暦年間に建てられた「延暦寺」、寛永年間に建てられた「寛永寺」、山号は東の比叡山の意で「東叡山」と、延暦寺にならって付けられています。延暦寺と寛永寺、両方訪れて、比べてみるのも面白いかもしれません。
比叡山延暦寺へのアクセス
【電車】
京阪電鉄「出町柳」駅→叡山電鉄「八瀬比叡山口」駅→叡山ケーブル「ケーブル比叡」駅→叡山ロープウェイ「比叡山頂」駅→シャトルバス「延暦寺バスセンター」下車
「京都」駅→JR湖西線「比叡山坂本」駅→江若バス(約6分)→坂本ケーブル「ケーブル坂本」駅→「ケーブル延暦寺」下車
京阪電鉄「三条」駅・地下鉄東西線「三条京阪」駅→京阪京津線「びわ湖浜大津」駅→京阪石坂線「坂本比叡山口」駅→徒歩約10分→坂本ケーブル「ケーブル坂本」駅→「ケーブル延暦寺」下車
【バス】
「京都」駅、京阪電鉄「三条」駅から比叡山ドライブバスで約70分、「延暦寺バスセンター」下車
【車】
名神高速「京都東」ICより「比叡山ドライブウェイ」経由で約30分
比叡山延暦寺 巡拝料
- 東塔・西塔・横川 共通券
- 大人 700円、中高生 500円、小学生 300円
※2020年3月1日からは、大人 1,000円、中高生 600円、小学生 300円
- 国宝殿(宝物館)拝観料
- 大人 500円、中高生 300円、小学生 100円
- 巡拝料+国宝殿セット料金
- 大人 1,200円、中高生 800円、小学生 セット料金なし
※2020年3月1日からは、大人 1,500円、中高生 900円、小学生 セット料金なし