東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
“健康保険の適用対象である「保険診療」と適用対象外である「自由診療」について”ご存知でしょうか?
詳しいことはわからないけれど、なんとなくは聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
交通事故による怪我の治療にも健康保険は利用することができます。
「3割負担だし使った方がよいのかな?」
「こっちは被害者なんだから自分の健康保険は使いたくない!補償してもらいたい!」
などと思われる方も少なくなく、それも自然な感情です。
交通事故問題では、専門的な知識が不可欠であり無事解決に至るまでには、色々な疑問が湧いてくるものです。
そこで、今回は「交通事故の怪我の治療は健康保険を使うべきか否か」をテーマに周辺情報を整理していきます。
ご参考にしていただければ幸いです。
目次
結論から言えば、加害者が「任意保険」に加入しているケースであれば健康保険を使うべきではありません。
「自分は被害者なのに、なんで自分の健康保険を使わなければいけないんだ!」
被害者感情としては、なんとなく自分の健康保険を使うことに抵抗を覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本来であれば、加害者に治療費を負担してもらいたいと思われるのが普通です。
ここで、病院での治療についてみていきましょう。
ご存知の方も多くいらっしゃるでしょうが、上記のように2種類に分かれます。
それではなぜ、加害者が「任意保険」に加入しているケースであれば健康保険を使うべきではないのでしょうか?
その答えは、保険診療を利用した場合のメリットを知ることで理解できるはずです。
確認していきましょう。
健康保険を利用した場合の メリット | 診療報酬が比較的低額に設定されている |
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被害者の費用の負担を軽減することができる(患者自己負担3割) |
上記の表のとおり、健康保険の診療報酬は、費用面での心配をせずに平等に医療を受けられるように低額に設定されています。
そのため、患者は3割の自己負担金で安心して医療を受けることができます。
つまり、経済面の負担が軽く済むということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
それでは、デメリットに関してはどのようなものが挙げられるのでしょうか?
メリット・デメリットの両方を理解し、被害者ご自身の事情に沿い適切に選択することが大切です。
健康保険を利用した場合の デメリット | 未認可の新薬の利用や先進的な医療を受けることができない |
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保険の適用に関して厚生労働省が認めている治療内容(検査方法、治療方法、薬など)に限られる | |
個々の患者に応じたきめ細かい診療を行うことには限界がある |
制度の仕組み上は仕方のないことかもしれませんが、上記の表からもお分かりいただけるように、自由診療に比べて個々の患者に応じたきめ細かい診療を行うには限界があります。
また、治療に対する期待可能性が高まっていながらも、厚生労働省が認めていなければ一定の治療内容に限られてしまいます。
逆に言えば、自由診療を行う経済的な余裕や加害者から自由診療に対する治療費の負担が得られるのであれば「健康保険を使わない」という選択肢もあります。
ですが、一般的には健康保険を使わない選択をする被害者の方が多いようです。
自由診療を利用した場合の メリット | 治療内容や薬に関して制約がないため、未認可の新薬の利用や先進的な医療を受けることができる |
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個々の患者に応じたより丁寧な治療を行うことが可能 |
自由診療の最大のメリットは、治療内容などに制約がなく、個々の患者に応じたきめ細かい治療を受けることができることではないでしょうか。
治療回数や時間も増やして、健康回復に向けて治療を行うことができます。
自由診療を利用した場合の デメリット | 治療費が高額になる(全額自己負担) |
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やはり、自由診療のデメリットは費用面です。
これらをクリアすることができれば、治療内容などの制約を気にせず治療を受けることができます。
なにか方法はないのでしょうか?
加害者側が任意保険会社に加入していれば、保険会社が自賠責保険の限度額を超える費用を負担してくれます。
このことからも、被害者は費用面の心配をすることなく自由診療での治療を行うことが可能となります。
すなわち、健康保険を使う必要性はありません。
続いて、健康保険を利用できないケースについてみていきましょう。
いったいどのようなケースが該当するのでしょうか。
一つずつ確認していきましょう。
これまでも見てきたとおり、未認可の医療行為には健康保険の適用はありません。
そのため、怪我の状況次第で新薬や治療の内容を広げたいという希望がある場合は「全額自己負担の治療」である点に気をつけなければなりません。
ある程度治療が進んでくると、自宅から通いやすいなどの理由で接骨院や整骨院での治療を希望する被害者の方も珍しくありません。
整形外科医の同意が得られれば、“健康保険が利用できる”接骨院や整骨院に通うことができます。
以下のような場合は健康保険を利用することができません。
接骨院や整骨院に通いたいと思われたら、主治医に相談してみましょう。
医学的にみて、治療の必要性や重要性がない診療のことです。
主治医の判断に従い、適切な通院頻度で治療を受けるようにしましょう。
場合によっては、治療費の支払いが認められないケースもありますので注意しましょう。
ご心配な場合は、主治医や保険会社に事前に確認されることをおすすめします。
仕事中に交通事故に遭った場合は「労災保険」の対象になります。
したがって、健康保険を使うことはできません。
労災保険のメリットは以下のとおりです。
仮に、ご自身の過失割合が大きい場合や、相手方が任意保険に未加入者である場合も補償対象となりますので、安心して治療を受けることができます。
健康保険を利用した場合でも、後から労災保険に切り替えることはできますので、病院などに確認してきましょう。
被害者自身に以下のような重大な過失や故意がある場合は、健康保険を使うことはできません。
貴重な財源なのですから、このような重大な過失がある人を補償する必要はなく、当然のことと言えるのかもしれません。
保険会社は、あくまでも営利を追求する企業です。
加害者の加入している保険会社が、健康保険の利用を進めてくるのには理由があります。
いったい、どのような理由なのでしょうか?
それは、自賠責保険の限度額の範囲内(120万円)で収めたいからです。
任意保険会社は、自賠責保険の補償範囲を超える部分を負担する仕組みとなっています。
言葉を選ばずに端的に言えば“支出を免れるため”と言えます。
これは、大きな社会問題となっており、被害者感情としては少なからず腹立たしさを覚えてしまうでしょう。
被害者にとって、健康を回復するために必要な治療は不可欠であり、その補償は加害者の義務です。
保険会社の利益追求のために、制約の多い健康保険の適用範囲内の治療しか受けさせず、被害者の健康を犠牲にすることは許されません。
また、健康保険の財政もひっ迫している事情があることから、貴重な財源を使い、任意保険会社が利益を得ているという点も懸念されています。
交通事故に遭い被害者となってしまったら、早い段階で弁護士に相談されることをご検討されてみてはいかがでしょうか?
健康保険の利用に関して、加害者側の保険会社と揉めてしまうことは珍しいことではなく、むしろ多い問題です。
健康保険の問題だけではなく、無事に示談が成立するまでにはたくさんのことに対応していかなければなりません。
保険会社の担当者は交渉のプロであり、場合によっては威圧感をもって被害者に話をしてくることもあります。
「そろそろ治療費を打ち切らせてくださいね。」
「むち打ちならそろそろ治ってる頃ですよね?」
などとプレッシャーをかけてきます。
また、示談金の交渉に関しても、不当な過失割合や低額な慰謝料を提示してくることがあります。
保険関係者か法律問題のプロでもない限り、“提示された金額の妥当性”を知らないことの方が普通です。
これらの妥当性を知らないまま示談に合意してしまうと、後々後悔することになります。
治療開始の段階から、疑問点や注意点について適切なアドバイスを受けながら進めていくことが大切です。
示談交渉で“損をしないため”にも、弁護士のサポートが功を奏するといっても過言ではありません。