X
3
: Terran Conflict
【えっくす とらい てらん こんふりくと】
ジャンル
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スペースコンバット + 交易シミュレーション
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対応機種
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Windows Vista sp1/XP/7/8/10 Mac OSX 10.7-10.14
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開発・発売元
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Egosoft
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発売日
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2008年10月16日(欧)
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定価
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1,580円 |
プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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日本語対応
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地球は人類のゆりかごである。
しかし、いつまでもゆりかごに入っているわけにはいかない。
概要(TC)
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『X: Beyond the Frontier』(1999年)から連なるX-Universeシリーズの5作目。
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3D空間のオープンワールド(ただし、セクターによって分断されている。)を舞台とした、スペースコンバット + ストラテジー。
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日本語版が株式会社ズーから発売されていた。
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Steamでは2017年4月19日から日本語対応版が配信された。
ストーリー(TC)
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『X: Beyond the Frontier』と2作目『X-Tension』はカイル・ブレナンが主人公、『X
2
: The Threat』と『X
3
: Reunion』はカイル・ブレナンの息子ジュリアン・ブレナンが主人公であった。
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本作は時系列的に『X
3
: Reunion』の約20年後の話ではあるが、ストーリーとしては前作で一区切りついており、本作のイントロムービーを見れば、前作までのストーリーはそれ以上知らなくともプレイ可能となっている。
このため、本作は名目上は『X
3
: Reunion』の拡張パック扱いだが、事実上、独立した作品となっている。
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本作のイベントで前作の主人公とおぼしきジュリアン・ブレナンが行方不明となる。同姓同名なのか本人なのかは言及されない。
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本作内の地名には過去作の重要イベントが有った場所にちなんでいるものもある。
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本作は前作までと異なり、無名の一般人としてスタートする。
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ゲーム開始時に下記の中から主人公を選ぶことになる。
+
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主人公一覧
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シナリオ名
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名前
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種族
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難易度
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備考
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テラン守護者
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エリン・イオボス
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テラン
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普通
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ストーリーイベントにスムーズに入りやすいので初回プレイ向け。
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アルゴン志士
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ケル・アイリン
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アルゴン
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普通
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卑しい商人
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ハリ・グル
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アルゴン
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それほど難しくない
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チュートリアルの「パイロット学校」を卒業不可
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破産した暗殺者
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オーレン・ロック
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アルゴン
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間違いなく難しい
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追憶のアルゴン
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ブラント・カート
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アルゴン
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普通
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自滅のイカ
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ラー・ナミナウス
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ボロン
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死は死
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steam版のみ。 最高難易度。死ぬとそのシナリオのセーブデータが全て消される。
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苦痛のテラディ
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テラディ
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実績取得で選択可能に
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信心深いパラニド
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パラニド
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実績取得で選択可能に
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その他、「カスタムゲーム」メニューからユーザー作成modで作成された主人公を選べる。
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配布されているユーザー作成modには、海賊勢力からスタートのものもある。
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用語
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各勢力
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各勢力
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テラン
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地球人。日本語を使用している設定で「距離保持」などの表記もゲーム内で見かけるが、ゲーム内では皆、英語を話している(吹き替えなし)。
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アルゴン
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元は地球人。
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ボロン
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イカ型宇宙人。女王陛下を頂いている。パラニド、テラディとは通商条約を結んでいる。平和主義と言われるけれども、戦力差がつくとスプリットに攻め込むこともまれによくある。
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スプリット
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ヒューマノイド宇宙人。封建主義で荒っぽい。ボロンと交戦中。
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パラニド
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3つ目の宇宙人。宗教国家である。テラン以外とは通商条約を結んでいる。
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テラディ
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爬虫類型宇宙人。商業主義である。テラン以外とは通商条約を結んでいる。
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海賊
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種族は混合している。
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Gonor
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種族を超えた宗教団体。
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YAKI
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アルゴンの海賊。通常の海賊とも敵対関係が有る。宇宙船の名前が"ライジン", "テンジン", "アクマ", "アクレイ"などと厨2病を発病している。
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Xenon
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日本語版表記はゼノン。ゲーム内の音声では「キセノン」と呼ばれている。
人類が作った自動テラフォーミング船団が暴走して作り上げた機械化帝国。いまや全宇宙生物の敵。
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Kha'ak
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日本語版表記は「カハーク」、ゲーム内の発音は「カーク」。昆虫型宇宙人。話は通じない。特定セクターに湧くポイントが有る。
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システム(共通)
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アップデート(時期は不明)によりゲームパッドでプレイ可能となっている。
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ただし、やれることが多いゲームなので戦闘時以外はキーボードのショートカットに頼ることが多くなる。
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3人称視点(テンキーで操作)と1人称視点を切替可能。
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SETA
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"特異点エンジン時間加速装置(SETA)"を搭載した宇宙船に乗っている時だけ、最大10倍まで時間経過を早めることができる。
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船外活動
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宇宙船から外に出ることができる。
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外部から宇宙船を修理できる。
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宇宙船は故障箇所があると速度が低下する。また、造船所などで修理すると費用が高く付く。
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無人の宇宙船を「クレーム」して自身の所有物とする。
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『X
2
』ではステーションや大型母船内を歩き回ることもあったそうだが、本作ではそのような場面はない。
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おかげで、作戦のブリーフィングが基地内ではなく基地のすぐ外の宇宙空間で行われるという場面がある。
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自動操縦
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自機は目的地を設定するか、自動追尾を設定することで自動操縦が可能。
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慣れないうちは宇宙ステーションとのドッキングは自動操縦に任せたほうが無難。
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ただし、自動操縦は完璧ではなく、妙に遠い経路を取ることもあれば、避けるべきものが多いと同じ場所を行ったり来たりする場面もあったり、最悪宇宙ステーションなどに衝突してゲームオーバーとなったりする。
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自機以外の宇宙船を遠隔コントロールできる。特定の艦船を自動追尾させたり、対応するプログラムを搭載することで護衛も可能。
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貨物船に自動売買プログラムをインストールすることで、自動交易が可能となる。
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自機の自動操縦の精度を見ていると、自動操縦で交易なんて事故るだけだと思いがちだが、自機の居ないセクターでは厳密なシミュレーションは行われておらず、当たり判定を考慮しないため、交戦以外での損傷はめったに無い。自機がいるセクターだと、自分の所有する自動航行中の船やNPCの事故は起こりうる。実際、パイロット学校の教師役の船が宇宙ステーションに衝突してリスポーンしたのを見たことが有る。
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ランク
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戦闘ランク
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PCが戦果を上げるとランクが上がる。戦闘ランクに応じて各所の戦闘が激化、兵装も上がる。
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経済ランク
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PCが物品を売買するとランクが上がる。経済ランクに応じてゲーム全体で宇宙ステーションの建設が活発化し、経済が回るようになる。
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名声
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各勢力ごとにPCに対する友好度パラメーターが存在する。
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各勢力の任務をこなすことで友好度が上昇する。任務に失敗すると少し友好度が下がる。
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各勢力の艦船を攻撃すると友好度が下がる。
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勢力との友好度パラメーターが規定値以上になると肩書がつけられる。
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一定以上の肩書がないと、その勢力下で装備の購入ができない。
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任務
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ストーリー任務
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どの主人公で始めても、同じストーリー任務を進めることになる。
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ストーリー任務の開始トリガーがある登場人物に話しかけることで任務が始まる。
一定単位でぶつ切りとなっているため、一般任務で資金を稼いで装備を整えてからストーリー任務にチャレンジする猶予が有るというか、初期装備は、そんな装備で大丈夫か?というレベルの装備なので、エンジンのグレードアップなどを行ったほうが良い。
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一般任務
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モブNPCから、防衛、人員輸送、宇宙船の回収、宇宙船の購入、宇宙ステーションの建設などの依頼を受けることができる。任務を遂行すると、依頼者の所属する勢力に対する友好度が上がる。セクターを支配している勢力と、依頼主の所属している勢力が異なることがよくあるので注意が必要。
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一般任務は系統ごとに内部的にランクが有るらしく、同じ系統の任務を受け続けるとあからさまに難易度が上がってゆく。
人員輸送の場合、最初は3名だったのが6名->10名->15名と増えてゆく。
白タク任務は制限時間がどんどんタイトになる。
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宇宙ステーション
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造船所にて宇宙ステーションのプラントが売られており、購入して任意の場所に宇宙ステーションを建設できるが、そのためには輸送のためのTL級貨物船が必要。なお、TL級貨物船をNPCから借りてもよい。
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"Complex Hub"で複数の宇宙ステーションを連結して複雑な宇宙ステーションを建設可能となっている。
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宇宙ステーションを2つ建てて、それを"Complex Hub"でつなげてゆくという手順となる。
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例えば、シリコン鉱山プラントとクリスタル工場をつなげて、クリスタルを一貫生産する事ができる。
評価点(TC)
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箱庭ではないオープンワールド
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200以上のセクターがあり、非常に広大なMAPとなっている。
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その中を数え切れないほどの艦船が行き来し、工場が生産を行っている。それをリアルタイムで遅滞なく処理しているのだから恐れ入る。
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経済ストラテジー部分の作り込み
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ゲーム開始時点では銀河全体の経済は停滞しており、経済復興はプレイヤーが行わなければならない。
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戦争に必要なミサイルやシールドも品薄であり、それらを作る工場を建てないとXenon殲滅など行えない。
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設定が細かい
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太陽光発電プラントは、プラントが存在するセクターの明るさによって生産力が変化する。
太陽光発電プラントはクリスタルを消費するため、シリコン鉱山-クリスタル工場-太陽光発電と"Complex Hub"でつなぐと、エネルギーの自給自足になる。
太陽光発電プラントは大量のエネルギーセルを生産するため、輸送がネックとなるので、シリコン鉱山付近に建てるよりはエネルギーセルの消費地に建てるべき。
宇宙ステーションは安全なセクターに建てるべきである。正規軍のパトロールの目が届かない辺境セクター「労働の輪」「宝箱」では海賊が幅を利かせている。コアセクターでも「琴座Ο」「大取引所」はゼノンの通り道である。
では最適解は一体何なのか?悩ましい。
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自然には需要は増えないため、同じタイプの工場(例えば鉱山)を乱立すると鉱物がだぶついて儲けられなくなる。
特定種族の主食などの汎用品ではないものは、そもそもの需要が少ないので、プラントが安く売られていても結局儲からない。
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勢力間の争いに巻き込まれる
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友好ではない勢力のステーションへは着艦が許可されず、取引ができない。
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通常の勢力のステーションでは名声が高くないと武器を売ってくれない。ただし、海賊基地は敵対でない限り、武器や艦船搭載用ソフトウェアを売ってくれる。
一部の艦船搭載用ソフトウェアは特定の勢力の宇宙ステーションでしか購入できない。特に貨物業を自動で行うための「交易コマンドSoftware MK3」は重要なソフトウェアなのであるが、これはテラディでしか販売していない。また、無人機に(安全な)セクター内を探査させる「探査ソフトウェア」もテラディでしか販売していない。
エンジンのブースト拡張機能はスプリットでしか販売されていない。
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ある特定の勢力に肩入れしすぎると、力を合わせるべき時であるのに種族間の戦争に力を入れ始める奴らがいる。プレイヤーが死の商人になってしまう。
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ロールプレイして縛りを入れるか、割り切って金儲けに明け暮れるかはプレーヤーの自由である。
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多彩な艦船
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戦闘機はもちろんのこと、戦艦、空母、輸送艦、タンカーまで操縦できる。
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輸送艦に戦闘機を載せて軽空母化し、荷物輸送に見せかけて敵対地区へ侵入もしくは通過したりできる。使い方の幅が広い。
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輸送艦は生命維持装置を載せて客船、もしくはマリーン(海兵隊?)を載せて強襲艦にもできる。
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TL級タンカーも武装化が可能で艦載機を格納でき、貨物をミサイルと戦闘ドローンで埋めておき、海賊をおびき出して仕留めることができる。
賛否両論点(TC)
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意外にランダム性がある。
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既存の工場プラントの需要を勘案して工場を建てたのに、その工場が海賊に破壊され、自分の工場の生産物の買い手が居なくなったりする。
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勢力の正規軍が海賊の基地をいつのまにか破壊していたりする。違法な物品で儲けようとしていた場合は困ることになる。
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逆に、かなり通行量のあるセクターに海賊基地が出来たりする。
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海賊、Xenonの出現ポイントは予想がつくが、Kha'akはいきなりワープアウトしてくるため、予想外のところが戦場となる。
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再プレイ性があるとも言える。
問題点(TC)
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ソフトウェアの機能が分かりにくい
プレイヤーを助けるために船にはいろいろなソフトウェアを搭載できるのだが、説明を読んでもよくわからない。
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例えば、特殊コマンドソフトウェアの「鉱山と鉱物の交易」機能。これには全く説明がない。
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英語では「Mine and Trade」で、輸送船に"モバイル ドリル"と"鉱物センサー"と"鉱物コレクター"と"特殊コマンドソフトウェア"を搭載してこのコマンドを実行すると、セクター内の小惑星から自動で採鉱し、積載量がフルになると最高値で購入してくれる宇宙ステーションへ自動で販売する。大変有用なコマンドであるが、意味不明の日本語訳かつ何の説明もないので見過ごしがちである。
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一部のソフトウェアはプレイヤーがその船に乗っている状態では使えない。「鉱山と鉱物の交易」機能も無人船でのみ有効化できる。その説明もない。
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マルチコアプロセッシングに最適化されていない。
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前作『X
2
: The Threat』のエンジンがそのまま流用されている。このため、マルチコアの流れに乗れていない。
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コア数ではなく、シングルスレッドの処理が早いCPUのほうが処理が早くなる傾向がある。
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ただし、膨大な処理を行っているはずであるのに、発売当時のintel core i5の性能があれば十分遊べる。驚愕のプログラミング技術である。
総評(TC)
とんでもないスケールで行われる銀河交易RTS。無名の一般人から銀河の英雄まで上り詰める想像を絶する立身出世物語。
しかし、それを成し遂げるには、ほんの少量の貨物輸送から始めなければならないという現実。そういう下積みを経て、自分の工場を建てて「おかえりなさい」と言われたときの感慨はひとしおである。
しかしそれはまだまだ通過点。敵の基地を破壊できる戦力の艦隊を手にしなければ目的は達せられない。そして他人から搾り取った税金ではなく、自分で稼いだお金で買った艦船が戦闘で溶けてゆく・・・。
そんな犠牲を払った先の勝利が嬉しくないはずが無いのである。
その後の展開(TC)
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2011年12月16日に続編のDLC「X
3
: Albion Prelude」が発売された。
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戦争状態で始まるため、全勢力の名声を上げようとすると難しくなっている。
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2021年5月に新作DLC「X
3
: Farnham's Legacy」がリリースされ、DLC「X
3
: Albion Prelude」所有者に対して無料で配布された。リリース時には日本語訳は無かったが、2021年内に日本語訳が追加された。
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「Farnham's Legacy」は「Albion Prelude」のおよそ10年後のXユニバースが舞台とされており、奇しくも両者の発売日もおよそ10年後となっている。
最終更新:2021年04月07日 04:30