垂直磁気記録方式のハードディスク、米で出荷開始

今月開催された『CES』では、東芝が垂直磁気記録方式ハードディスクの2代目を披露したが、このたび米シーゲイト社も、同方式ハードディスクの出荷を米国で開始した。同社では、この新技術によって今後3〜5年間で最大ディスク容量が5倍に増える見込みだと予測している。

AP通信 2006年01月17日

カリフォルニア州サンノゼ発――米シーゲイト・テクノロジー社(本社カリフォルニア州スコッツ・バレー)はこのほど、ハードディスク容量のさらなる拡大、ひいてはストレージ業界全体の成長を妨げるのではないかと懸念されてきた大きな問題を克服する、新しいノートパソコン用ハードディスクの出荷を開始した。

記録ビットを水平方向ではなく垂直方向に並べる新方式により、シーゲイト社は――そして他のハードディスクメーカー各社も――データが混乱する危険性を増大させることなく、ディスク密度をさらに高められるようになる。

1956年に最初のハードディスクが発売されて以来、記録ビットは高速回転する円盤上に平らに、水平方向に並べられてきた。この記録ビットの磁気の状態により、実際にデータを記憶するわけだ。そしてエンジニアたちは、ディスク容量を増やすため、記録ビットのサイズを縮小してきた。

しかし、500GBを超える大容量ハードディスクが登場している現在、記録ビットの小型化はほぼ限界に達している。密度をこれ以上高めると、隣接する記録ビットの磁気との干渉が起きる可能性がある。そうなればデータにとっては致命的だ。

ビットを垂直方向、つまり縦に並べて記録すれば、そのぶん空いたディスク表面を利用して容量を増やすことができる。

これはすべてのハードディスクメーカーがいま取り組んでいる大きな転換だと、リサーチ会社の米トレンドフォーカス社のジョン・ドノバン副社長は言う。

「まったく新しいやり方だ。考え方を変えなければならないだけでなく、製造法やヘッドとディスクが相互に作用する方法まで変える必要がある」とドノバン副社長。

シーゲイト社によると、ノートパソコン向けの新しい2.5インチハードディスク『モメンタス5400.3』の出荷が16日(米国時間)の時点ですでに始まっている。垂直磁気記録方式を採用したことにより、ノートパソコン用ハードディスクの最大容量を120GBから160GBに増やしたという。

モメンタス5400.3の160GBモデルの価格は325ドルとなっている(120GBのモデルの価格は240ドルほど)。シーゲイト社では新しい記録技術を、他のノートパソコン用ハードディスクだけでなく、ハンドヘルド機器に使われる1インチディスクや、デスクトップパソコン用の3.5インチディスクにも採用する予定だ。

シーゲイト社のパーソナル・ストレージ部門の総責任者カール・チッカ氏は、「垂直記録技術に移行したことにより、成長を続ける顧客基盤のニーズにさらに応えられるようになる」と述べている。

他のハードディスクメーカー各社も垂直磁気記録方式を採用した製品を発表、または計画している。今月開催された『コンシューマー・エレクトロニクス・ショー』(CES)では、東芝がこの新技術を利用した2代目の1.8インチハードディスクを披露した。

シーゲイト社によると垂直磁気記録方式には、記録密度を高めるだけでなく、部品を追加する必要性を減らすという利点もあるという。「部品の数を減らすことができれば、消費電力が抑えられ、熱の発生も少なく、部品の消耗や劣化を減少させられる」と、同社は説明する。

シーゲイト社では、この新技術によって今後3〜5年間で最大ディスク容量が5倍に増える見込みだと話している。

[日本語版:平井眞弓/福岡洋一]

WIRED NEWS 原文(English)