System76の「Lemur Pro」は高性能でほぼ完璧に近いLinuxノートPC:製品レビュー

System76のLinuxノートPC「Lemur Pro」は、バッテリー持続時間、ディスプレイの性能、カスタマイズ性などすべてにおいて非の打ち所がない。あえて欠点を挙げるなら、同梱されている充電器がバレルタイプであることぐらいだ。
System76「Lemur Pro」レビュー:高性能でほぼ完璧に近いLinuxノートPC
PHOTOGRAPH: SYSTEM76

ずいぶん長い間、完璧なノートPCを探し求めてきた。それは『WIRED』での、わたしの仕事の一部にもなっていた。でも、もう諦めようと思う。残念ながら、完璧なノートPCは存在しないようだ。種類がたくさんありすぎるし、使い方もさまざま。すべてのユーザーを満足させられるノートPCは存在しないのだ。

しかしながら、これは完璧に近いだろうと思わせる製品もいくつかはある。そして、新たに発売されたSystem76の「Lemur Pro」は、Linux搭載のノートPCとしては、ほぼ完璧と言える存在だろう。理由のひとつは、シンプルかつ洗練されたデザインでありながら、高いカスタマイズ性を誇っている点だ。Lemur Proのファームウェアとソフトウェアは、かなり作り込まれたものとなっている。

申し分ないバッテリーもちとディスプレイ

System76のLemur Proシリーズは、薄型・軽量モデルという位置づけだ。これはゲーミングPCでもなければ、動画編集に最適なマシンでもない(とはいえ、動画編集ができないというわけではなく、わたしは大量の動画をLemur Proで編集した)。しかし、もしあなたが探しているのがLinuxのノートPCで軽くて頑丈、拡張性が高く、しっかり動くものが欲しいなら、Lemur Proはぴったりの製品だ。

PHOTOGRAPH: SYSTEM76

Lemur Proは14インチのオールラウンドモデルで、重さ2.5ポンド(約1.13kg)、厚みおよそ0.54インチ(約1.37cmと)なっている。薄くて軽いので小さなカバンにも入るし、持ち運んでいることを忘れてしまいそうになる。同社のラインナップには、よりパワフルで大きい製品もあるが、Lemur Proはその中で携帯性が圧倒的に高い。

Lemur Proの最新モデルは2023年初めに発表されたもので、搭載チップはインテルの第13世代だ。標準構成は1,150ドル(約17万4,000円)で、インテル「Core i5」と8GBのRAM、そして265GBのSSDを搭載している。今回テストしたのはインテル「Core i7-1355U」、16GBのRAM、250GBのOSドライブ、そしてストレージとして1TBのSSDを備えたモデルだった。

ハードウェア構成からすれば、価格面は妥当、あるいはやや高いレベルかもしれない。ただ、この製品のウリは、高いレベルのLinux互換性が備わっていることで、これは安価なPCにはない利点だ。また、Lemur ProはSSD(PCIe接続)やメモリを自分自身で交換可能で、自前アップグレードが可能なのもうれしいところだ。

PHOTOGRAPH: SYSTEM76

パフォーマンス面でも、専用グラフィックカード非搭載のモデルにしてはかなりいいほうだ。今回同じく製品テスト中だったアクションカメラの「GoPro HERO 12 Black」で撮影した動画はLemur Proで編集した。動画編集を仕事としている人は、専用グラフィックカードを購入したほうがいいだろうが、Lemur Proのパフォーマンスの高さにはかなり驚かされた。5.3Kのクリップを再生しても遅延はないし、レンダリングも素早かった。1080pの非光沢ディスプレイ(1920×1080、Full HD)の画質も申し分ない。そのおかげで、明るい日光のもとでも難なく作業できた。

このPCが特にいいポイントは、そのバッテリー持続時間だ。System76によると14時間だが、わたしが実作業した際も13時間以上使えた。1080pの動画を繰り返し再生するテストでも、バッテリーは11時間ほど持続した。これは、最近テストしたLinuxノートPCのなかで、群を抜いて高い性能だった。

なお、同梱されている充電器は65Wのバレルタイプだが、幸いなことにUSB-C充電(65W)にも対応している。わたしは主にSatechiの「108W USB-C 3-Port GaN Wall Charger」で充電していた。

ポートについては、Lemur ProにはType-Aの「USB 3.2 Gen2」ポートと「USB 3.2 Gen1」ポート、それに「Thunderbolt 4」ポートとmicroSDカードリーダー、そしてHDMIポートがひとつずつ搭載されている。また、Zoom向けに申し分ない画質を提供してくれる1080pのウェブカメラも備わっている。

OSは選べるが、標準でも十分に使いやすい

独自のハードウェアとソフトウェアを両方つくっているという点では、System76はアップルと似ているといえる。ただ、System76製品はアップル製品と異なり、自前での修理やメンテナンス、部品交換が可能な形になっていて、OSもオープンソースなものを採用している。つまり、好きなようにカスタマイズして使えるようになっているのだ。

今回のレビューは、標準の状態でテストしたかったので、お気に入りのディストリビューションやデスクトップをインストールするのではなくて、System76に標準で付いている「Pop!_OS」をそのまま使うことにした。

個人的にPop!_OSの元となった「Gnome Desktop」は好みではない。しかし、Pop!_OSは、わたしがGnomeでわずらわしく感じていた部分がうまくカスタマイズ・変更・修正されていて、使える(使いやすいと言ってもいいかもしれない)レベルまで高められていた。好みに合わせて少しカスタマイズしたが、標準設定のままでも十分だった。こうしたことが可能だったのは、System76の高いデザイン力のたまものだろう。

PHOTOGRAPH: SYSTEM76

今回のテストでは「Arch Linux」はインストールしなかったが、問題なく動作するだろうと思う。また、「Ubuntu Linux」が好きなら、注文時に選択することもできる(そこまでおすすめはしないが)。

ハードウェアをつくっているのはClevoというOEM企業だが、System76はClevo側にしっかりとLinux対応させている。また、ブートにはオープンソースのファームウェア「Coreboot」を採用し、ソース非公開のソフトウェアは搭載されていない。そして、System76は現代的なサスペンド機能を、最初から利用可能な形にして出荷している。

レノボのノートPCでS3サスペンド機能を使うために数時間、あるいは数日間も費やした経験から言えば、こうした点はLemur Proを選ぶ大きなポイントと言えるだろう。System76が自社製品に利用するためCorebootに加えた変更点はアップストリーム送信され、それがコミュニティへの貢献にも繋がっている。

つまり、System76のノートPCは高性能でメンテナンス性が高いだけでなく、Linuxコミュニティへの貢献もしているのだ。このあたりが、同社製品を選びたくなるポイントだろう。もし、いまLinux搭載ノートPCを買うとしたら、そして専用グラフィックカードが必須ではないとしたら、わたしが選ぶのはLemur Proだろう。

◎『WIRED』な点

軽くて薄いデザイン。自前で部品交換やアップグレードができる。バッテリー持続時間は素晴らしい。ポートの種類が豊富。Linux対応が申し分ない。

△『TIRED』な点

同梱されている充電器はバレルタイプ(USB-Cを使うことも可能)。

WIRED US/Translation by Naoya Raita/Edit by Mamiko Nakano)

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