【世界の街から】フィリピンの珍味試す ふ化直前のアヒルのゆで卵

ふ化直前のアヒルのゆで卵「バロット」=9月、マニラ近郊(共同)
ふ化直前のアヒルのゆで卵「バロット」=9月、マニラ近郊(共同)
2017年10月25日 16時00分

 その食べ物との出合いは予期せぬものだった。

 出張の途中、マニラ近郊の高速道路のサービスエリアで軽食を取ることにした。フィリピンでも人気があるたこ焼きの屋台があり、注文して待っていた。

 屋台の隣に置かれたふた付きのバケツに気付いた。側面に「バロット」の文字。ふ化直前のアヒルのゆで卵だ。珍味と言われ一度は試したいと思っていたものの、心の準備ができていなかった。

 鶏肉とゆで卵を一緒に食べるようなものだと聞いたことがあるが、何しろふ化する一歩手前である。産んでから時間がたった卵は、ひなの形がかなりできあがっていることもあるという。

 「殻を割って、目が合ったらどうしよう」。普段は何も考えず食べ物に飛び付くのに、余計な想像をしてひるんだ。緊張が伝わったのか、屋台の若い店員は「1個20ペソ(約44円)だよ」と笑いながらせかす。

 殻を少し割ってむいてみると、薄い膜に覆われた白と茶色と黄色の何かが見える。凝視はできなかった。大きさと食感が似ているだろうからと、まずたこ焼きで“練習”。その後、軽く塩を振りかけたバロットを一気に口に放り込んだ。

 味は濃厚なゆで卵といったところか。いろんな食感が混じっていたが、あまりかまずにのみ込んでしまった。

 和歌山県太地町でイルカ漁をする漁師を取材したことがある。反捕鯨団体から批判されながらも漁協幹部は「無意味に殺しているわけではない。食べるという行為は命をいただくということ。伝統を理解してほしい」と話していた。この言葉の重みはかみしめた。(共同通信=マニラ支局・岩橋拓郎)

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