天安門事件、切り取った 親日写真家が向けたレンズの先

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今村優莉
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 「タンクマン」と呼ばれる有名な写真がある。30年前に北京で起きた天安門事件で、戦車の前に1人で立つ若者をとらえたものだ。撮った米誌ニューズウィークの報道カメラマン、チャーリー・コールさんが、日本に暮らし、長野の温泉を愛し、奥多摩をバイクで飛ばしていたことを知る人は多くない。9月に64歳で亡くなったコールさんをしのび、日本の友人らが遺作の展示会を開いている。

 1955年、米テキサス州で生まれた。父が米軍の従軍牧師だったことから、幼い頃から各国の米軍基地を転々とした。80年、父が日本に来ることになり、フリーカメラマンだったコールさんも新天地を求めて来日。米軍横田基地(東京)で暮らした。

 友人らによると、両親が帰国したあとも日本に残り、米ニューズウィーク誌のカメラマンとして、東京を拠点にアジア地域をカバーした。ポル・ポト政権崩壊後のカンボジアや、80年代後半の韓国の学生運動などを取材した。

 89年4月。中国共産党の改革派指導者、胡耀邦の死を機に始まった学生の追悼デモが民主化を求める運動に発展すると、コールさんは北京へ飛んだ。

 中国軍天安門広場に突入した直後の6月5日未明。それまで雑誌で何度かコールさんの写真を使っていた講談社の元編集者・吉井順一さん(63)は、ニューズウィーク誌から「チャーリーと連絡が取れない。何か知らないか」と連絡を受けた。現地ではホテルの電話回線が切られていた。

 吉井さんは、後にコールさんからその時のいきさつを聞いた。

コールさんは撮影後に連行され、カメラからフィルムが引き出されていました。それでも「タンクマン」が無事に世に出た経緯とは。記事後半で紹介します

 コールさんは当時、他社のカ…

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