ベラルーシが送り込む移民・難民 欧州の排外主義、空気は高まるのか

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聞き手 シニアエディター・尾沢智史 聞き手・池田伸壹
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 ベラルーシからポーランドに越境する移民・難民が急増している。欧州連合(EU)はベラルーシのルカシェンコ政権が意図的に送り込んでいると非難。ベラルーシは関与を否定し、越境者を虐待しているとEU側を批判している。この状況をどう見たらいいのか。

ベラルーシの抗議と制裁は継続を 国際政治学者の東野篤子さん

 ――ベラルーシが移民・難民を送り込んでいるとすれば、その理由は何でしょうか。

 「6月にEUが科した経済制裁への意趣返しでしょう。世界的な注目が集まったのは今秋ですが、7月からすでにポーランド、ラトビアリトアニアの国境地帯で移民・難民の越境は始まっていました。ルカシェンコ政権は非常に戦略的に送り込みを進めてきたといえます」

 ――国際社会からの非難を予想しなかったのでしょうか。

 「国際社会から非難されることなど織り込み済みでしょう。ルカシェンコ氏の手法は時期を追うごとに過激化しています。2020年の大統領選以降は、政治犯の弾圧や組織的な暴力など、従来の路線を継続していました。しかし今年になって、民間航空機を強制的に緊急着陸させて反政権派のベラルーシ人ジャーナリストを拘束するなど、国際社会に衝撃を与える奇策に出ています。移民送り込みもそうした奇策の延長線でしょう」

 ――過激化した理由は?

 「『何をしでかすかわからない』と思わせ、ベラルーシ現政権に批判的な欧米から妥協を引き出したいのではないでしょうか。時には背後にロシアがいる可能性をちらつかせながら、国際社会からの干渉をかわす狙いがありそうです」

 ――ロシアの関与についてはどう見ますか。

 「ルカシェンコ氏とプーチン・ロシア大統領の間で、一定程度の意思疎通があるのは間違いありません。強制着陸や移民送り込みについても、ロシアは自ら積極的に手を出さないまでも、多くを黙認しているようです。しかし、ルカシェンコ政権がやることすべてに、ロシアがお墨付きを与えているわけではないことも垣間見えます。ベラルーシがガスのパイプラインを止めるとEUを脅した時、プーチン氏は強く反発しました」

ベラルーシからの越境者に解決法はあるのか。後半では、在欧ジャーナリストの宮下洋一さんの論が続きます。

 ――EUの対応をどう見ていますか。

 「EUは周辺国の航空会社や…

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