「活断層の上には作らない」。かつて国は、原発の安全性を示すパンフレットにこんなフレーズを用いていた。
1995年の阪神大震災で活断層が注目を集め、説明の必要に迫られた。この年に当時の通商産業省資源エネルギー庁が作製したパンフにはさらに、こう書かれている。
「建設用地を決める際には、徹底した地質調査を行い、地震の原因となる活断層を避けています」
しかし、日本原子力発電敦賀原発(福井県)の敷地内、つまり「建設用地」には、明らかな活断層が通っている。
浦底断層と呼ばれ、国の地震調査研究推進本部(地震本部)はマグニチュード7・2程度の地震と、2メートル程度の横ずれを起こすと見積もっている。その活断層が二つの原子炉(うち1号機は廃炉作業中)からわずか200~300メートルの位置にある。
現在、敦賀原発をめぐり問題になっているのは、この活断層とは別の2号機直下にある断層だ。この断層が、活断層である浦底断層と一緒に動くかどうかが再稼働に向けた審査の焦点になっている。原電は「動かない」と主張するが、その根拠となる資料の不備が絶えず、原子力規制委員会が4月、書類の出し直しを求めた。
不備は単なる誤記にとどまらない。
2020年に発覚したのは、生データともいえるボーリング観察記録の書き換えだった。断層の「未固結」「固結」の記述を変更し、履歴を示さず上書きしていた。
今年3月に明らかになったのは、顕微鏡で観察するための試料採取の位置の取り違えだ。最新の活動の部分から抜き出したとされた試料は、古い部分のものだった。
いずれも、断層の科学的な評価の根幹にかかわる部分で、「まともに審査ができない状態」(山中伸介委員長)だ。
過去にも「ねじ曲げた解釈」
原電は、規制委の発足前にも、断層調査の資料をめぐって専門家から厳しい「ダメ出し」を受けたことがある。
08年2月、当時の原子力安全委員会の検討委員会で、浦底断層をめぐる地質断面図が問題例として取り上げられた。
「地質学の基本をねじ曲げた解釈」
「専門家がやったとすれば犯罪」
専門家から発せられた強い言葉は、検討委を傍聴していた記者の記憶に焼き付いている。
「どこかから変な力が働き…
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