マツタケやっと出た、でもいつまで続くか

東野真和
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 岩手県内で、マツタケがやっと土から顔を出してきた。猛暑で生える環境が整わなかったが、最近になって、気温が下がってきた。2020年の県内生産量は19・2トンで、全国1位だったが、その後2年間は、長野県にトップの座を譲り、2位に陥落。今年こそと収穫が期待される一方、今後の気象次第では、収穫期間が短くなる可能性もあり、関係者は気をもんでいる。

 9月30日、「岩泉まつたけ山づくり協力隊」の隊員たちが、岩泉町の森林組合が管理する山に入った。

 マツタケは枯れ葉に覆われず、下草も茂っていない日当たりのいいアカマツ林の斜面に生える。隊員は林の手入れをして、マツタケの収量を増やそうと、21年から毎年春と秋に、マツタケが生えていた場所付近の木にリボンをくくりつけたり、生えそうな場所の草木を切り、枯れ葉を取り除いて環境を整えたりする作業を行ってきた。

 この日は隊員のうち20歳代~70歳代の15人が活動。日頃の作業の「ごほうび」としてマツタケの収穫を期待したものの、1本も見つからなかった。参加者は「まだ早かった。タイミングが難しい」と悔しがった。

 岩泉まつたけ事業協同組合によると、今年は9月下旬から気温が低い標高の高い所でとれ始めた。10月に入って、町内4カ所のマツタケの集荷業者に1日10キロ前後集まるようになったという。町商工会が9月23日から、「松茸(まつたけ)小屋」と銘打ち、旅館などでマツタケ料理に舌鼓を打つ催事を企画していただけに、「とれないかと心配したが、間に合った」と胸をなでおろす。

 岩泉町と並ぶ県内有数の産地・山田町。マツタケとりの名人で、販売もする芳賀榮三さん(78)も「1週間前(9月25日ごろ)からぽつぽつと出始めた」と言う。毎朝、数時間かけて山に入って探している。「この3日間は1キロ弱。その前は2、3本。同じ時期に同じような場所に出るアミタケをよく見かけるようになったから、これから出てくる兆候だ」

 首都圏向けに直送される上質のマツタケは1箱400グラムで、繁忙期には1日100箱以上出荷するが、今はまだ半分以下の箱数だ。出荷量が少なく、例年の倍の値段で取引されているという。

 「夏こ」と呼ばれる夏場に出るマツタケは、今年はほとんど出なかった。「その分、これからまとまって出ればいいが」と期待する。

 ただ、気温が10度台前半まで下がると、出なくなってしまうので、一気に秋が深まると今年も不作で終わってしまう恐れもある。

 さらに、短期間に一斉に出れば、とり切れないうちに腐ってしまう。芳賀さんは「最近は、とる人も高齢化している。とれそうな山があるが、若い人はとりに行きたがらない。収穫量がだんだん減っていくかもしれない」と危機感を募らせている。東野真和

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