朝ドラ「ブギウギ」伝えた魅力と残念さ 笠置シヅ子評伝の作家が語る

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多知川節子
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 NHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」のヒロインのモデルになった歌手、笠置シヅ子(1914~85)は香川県出身。ノンフィクション作家の砂古口早苗さん(74)=高松市=は、ドラマ制作の参考となった評伝を14年前に刊行した。3月29日の最終回が近づいた今何を思うのか、聞いた。

 ――評伝「ブギの女王・笠置シヅ子 心ズキズキワクワクああしんど」は朝日新聞香川版に2007年から1年掲載した連載に加筆をして刊行されました

 笠置さんは、明日食べるものさえない敗戦後の日本を、夢と希望にあふれるブギで熱狂させた人です。昭和を生き抜いた国民的スターだったにもかかわらず、生涯を伝える評伝が連載時は見当たりませんでした。世代の違う人からは、すでに忘れられた人かのように。これはもう「私が書くしかない」と思いました。

 ――彼女の魅力とは

 伝えたかったテーマは大きく二つあります。

 一つは、笠置さんが夢をかなえることと経済的自立の両面から自己実現を果たした女性だという点です。昭和を生きた女性が誰にも依存せずに、すごいことだと思います。

 実の親に手放され、宝塚歌劇団には身長不足で入れず、愛した男性も結核で早世し、確かに不幸は多かった。ただ、それ以上に幸運もあったと思います。

 貧しくても育ててくれる養父母に恵まれ、愛する男性との子どもを生み、シングルマザーとして育てあげました。何より作曲家の服部良一さん(1907~93)と出会えた。笠置さんが残した歌のほとんどは彼の作曲で、才能と努力を認め合えた師弟関係でした。

 たくさんの偶然が重なったドラマチックで波瀾(はらん)万丈な生涯だったと思います。

 ――もう一つとは

 激動の時代にあって、芸能界の闇に足をすくわれず、潔癖なまでにまっすぐ生きたという点です。

「ブギウギ」制作陣が参考にした評伝の筆者である砂古口さん。後段では、朝ドラへの率直な思いについて語っています。

 当時の芸能界には興行を成功…

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    松谷創一郎
    (ジャーナリスト)
    2024年3月26日12時39分 投稿
    【解説】

    『ブギウギ』は今日の放送を終えて残すところあと3回となってしまいました。今週は主人公の福来スズ子が歌手を引退するプロセスが描かれています。 彼女がそう決意したきっかけとなったのは、若い歌手の台頭です。ドラマでは、水城アユミというキャラクター

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    西岡研介
    (ノンフィクションライター)
    2024年3月26日19時6分 投稿
    【視点】

    たとえ昔の話とはいえ、「興行とヤクザ」の関係に触れるのは、朝ドラでは難しかったか。そう言えば、服部良一と笠置シヅ子のアメリカ巡業のくだりも、ドラマではサラッと流していたな。ロスでの公演の際に、現地で2人のお世話役を務めていたのが、後の「ジャ

    …続きを読む