彫刻家・舟越桂さん死去、72歳 詩的な人物像で人気 小説の装丁も

 クスノキによる詩的な人物像で高い評価と人気のある彫刻家舟越桂(ふなこし・かつら)さんが29日、肺がんのため亡くなった。72歳だった。葬儀は4月6日午後1時から東京都渋谷区代々木5の16の3のカトリック初台教会で。

 父は、文化功労者の具象彫刻家・保武さんで、東京造形大と東京芸術大大学院で学んだ。80年代に、日常的な着衣の半身像の木彫に着彩し、目には大理石を入れる作風を確立。端正で詩的、ときに憂愁や孤独も感じさせる精神性の高い作風の背景には、キリスト教信仰があるとされる。評価と人気を得て、木彫に着彩という潮流を作った。

 独・ドクメンタ展に選ばれるなど国際的評価も高く、東京都現代美術館など国内各地の美術館で何度も個展が開かれた。近年は、社会の不条理や戦争への怒りから、半人半獣のスフィンクスなどを主題にした異形の像を展開した。

 作品は天童荒太さんの小説「永遠の仔(こ)」などの装丁に多く使われたほか、素描の名手でもあり、朝日新聞で連載された大江健三郎さんの「伝える言葉」の挿絵も担当した。作品集、画文集も多い。

 芸術選奨文部科学大臣賞や毎日芸術賞など受賞多数。編集者の末盛千枝子さんは姉、彫刻家の故・舟越直木さんは弟。

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