<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

乳酸菌とビフィズス菌の違いはなに? 大腸・小腸とのかかわりは?

消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(7) 2大善玉菌の腸での役割

2020.09.30

 乳酸菌とビフィズス菌は、腸活によい「善玉菌」の代表格です。どちらも整腸作用で知られていますが、じつは、菌の種類や特徴も、腸内での居場所や働き方も大きく異なります。大腸と小腸の役割とも関係する、その違いとは、どういうものか。消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんに聞きました。

ヨーグルトとキムチ

ビフィズス菌は大腸、乳酸菌は小腸で活動

――「腸内細菌は、大腸と小腸で違いがあるのか」(60代男性)、「腸活に有効というヨーグルトを見ると乳酸菌の種類が多い。菌の特徴を教えて」(50代男性)など、腸内細菌の特徴や役割についての質問がきています。

 腸内環境を整える「善玉菌」の代表として、よく知られているのは乳酸菌とビフィズス菌です。ヨーグルトに入っていたり、整腸剤として用いられたり。どちらも発酵で乳酸を作り出すという共通点がある。このため「二つの菌はおなじもの」「ビフィズス菌は乳酸菌の一種」と思っているひとも少なくないようです。しかし、この二つの菌、もともと細菌の種類が異なり、腸内での働き方も違います。

 最大の違いは、腸内での活動場所です。ビフィズス菌は大腸にすみついて、腸内フローラ(腸内細菌叢)の主役メンバーの一員として活動しています。これに対し乳酸菌は大腸というよりも、その手前、小腸での役割に特徴があります。

乳酸菌とビフィズス菌

――乳酸菌とビフィズス菌で、なぜ、腸内での活動場所が違うのですか。

 どちらも酸素が嫌いな「嫌気性菌」なのですが、乳酸菌はある程度、酸素があっても生きていけます。ヨーグルトのほか、チーズやみそ、キムチ、漬物など、様々な発酵食品に乳酸菌が使われているのは、このためです。一方、ビフィズス菌は酸素があると、生きて活動することができません。このため人間の消化器のなかでビフィズス菌がすめるのは、酸素がほとんど届かない大腸の最後部、S状結腸から直腸にかけて群生する腸内フローラの中になります。

 大腸の腸内細菌はざっと1千種、数にして数十兆~100兆個といわれます。このうちビフィズス菌が1兆~10兆個ほど、乳酸菌は1億~1000億個ほどとされ、大腸内では、圧倒的にビフィズス菌が優勢といえるでしょう。これとは逆に、酸素が残る小腸は、ビフィズス菌をはじめ腸内細菌の大半はすむことがきわめて難しい環境といえます。その分、乳酸菌にとっては活躍の場が広がっているといえるわけです。

大腸でつくった酢酸、粘膜保護や肥満抑制に

――ビフィズス菌は大腸で、乳酸菌は小腸で、どんな役目を担っていますか。

 ビフィズス菌の役割として古くから知られているのは腸内環境を整える整腸作用です。胃や小腸とくらべ、大腸はアルカリ度が高くなりやすく、その分、有害な細菌が増えやすい消化器です。ビフィズス菌は自分が生み出す乳酸や酢酸で腸内環境を中性から弱酸性に保とうとします。これが大腸内の有害菌の繁殖を抑え、おなかの調子を整えることにつながります。

 さらに近年の研究で、「短鎖脂肪酸」を生み出す菌としての効果にも注目が集まっています。

 短鎖脂肪酸とは、酢酸や酪酸、プロピオン酸などの総称で、大腸のぜん動運動を活発にしたり、腸管を保護する粘液づくりにかかわったり、脂肪細胞への脂肪蓄積を抑制し、肥満や糖尿病予防に寄与したりしているとみられています。ビフィズス菌は、この短鎖脂肪酸の一種、酢酸を大量に作り出し、腸内フローラにすみついたほかの酪酸産生菌などと共存しながら、これらの作用に寄与しているといわれています。

大腸と小腸

小腸の免疫機能を高めるアクセル役

 一方、乳酸菌も、ビフィズス菌と同様、自らが作り出した乳酸で腸内を酸性化させ、悪玉菌などがすみにくくする整腸効果が知られています。それに加えて最近は、小腸にある免疫細胞を刺激して体の免疫力を高めるのではないかという点に注目が集まっています。

 胃のなかで分解された食べ物は、小腸で栄養素として体内に取り込まれます。消化管のなかを「体の外側」と考えれば、栄養素を吸収する小腸は、体外からの異物を体内に取り込む初めての場所となります。このため小腸には、体に有害な毒素などを栄養素と一緒に取り込んでしまった場合、免疫力により攻撃し発症しないようにする、多くの免疫機能を備えています。小腸のこうした免疫機能を活発にさせるアクセルの役目を乳酸菌がしているというわけです。

 以前から整腸効果で知られていた乳酸菌とビフィズス菌ですが、近年の研究で、それぞれがより多くの役割をもつことが明らかになってきました。こうしたことを念頭におきながら、二つの善玉菌が腸にすみつきやすくなるよう、食べ物や食べ方をぜひ工夫してほしいと思います。

 Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に、消化器病専門医の松井輝明さんが答えます。次回は「ヨーグルトや発酵食品の効果的な食べ方は?」を取り上げます。

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  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

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