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あなたの県の脱炭素目標は? WWFジャパンが日本地図「脱炭素列島」公開中

あなたの県の脱炭素目標は? WWFジャパンが日本地図「脱炭素列島」公開中
WWFジャパンの特設サイト「脱炭素列島」(https://www.wwf.or.jp/campaign/zerocarbonisland/)の画面

温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」が世界の潮流となっている。出遅れ感があった日本も首相が具体的な目標を打ち出したことで、動きが加速し始めた。排出削減の目標を設ける動きは自治体にも広がっている。世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン、東京)は6月、47都道府県の目標設定ぶりを見られる特設サイト「脱炭素列島」を公開した。あなたの住む地域はどうだろうか?(編集部・竹山栄太郎)

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カーボンニュートラル

二酸化炭素(CO)やメタン、一酸化二窒素(NO)、フロンガスといった「温室効果ガス」について、排出量から森林などによる吸収量を差し引いて実質的にゼロとすること。菅義偉首相は2020年10月の所信表明演説で、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言。さらに21年4月には米国主催の気候変動サミットで、2030年度に13年度比で46%削減する目標を表明した。

従来の中期目標は「2030年度までに13年度比26%削減」、長期目標は「2050年までに80%削減し、脱炭素社会を今世紀後半のできるだけ早期に実現」するとしていたが、いずれも目標値を大幅に引き上げた。産業構造の転換により、暮らしや雇用への影響が予想される。

世界では120カ国以上が2050年までのカーボンニュートラルを表明しており、最大の排出国である中国も2060年までの実現を表明済み。各国政府の動きに対応して、米アップルなどの大企業がサプライチェーンのカーボンニュートラル達成を目指すと表明する例も出ている。

目標設定に応じて6段階で評価

「脱炭素列島」は21年6月24日に公開された。4月23日時点で各都道府県が掲げた温室効果ガスの排出量削減目標をまとめている。(1)2030年までの削減目標がどのような内容か、(2)2050年ゼロカーボン(脱炭素)宣言をしているか――を基準に、AからFまでの6段階で評価している。つまり、各都道府県の「自己申告」を機械的にランク分けしたものだ。

サイトで示された日本地図は、目標設定のレベルが低い都道府県ほど面積が大きく表示され、目立つようになっている。都道府県別のページでは、それぞれが掲げる目標と、気候変動がさらに深刻化した場合の未来図を紹介する。

大阪府(Bランク)は「あともうちょいやん」、愛知県(Cランク)は「がんばりゃ-」などと、方言でエールを送っているのも見どころだ。

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Bランクとされた岩手県のページ

Aランクの群馬は「30年までに50%削減」目標

最上位のAランク(2050年ゼロ宣言あり、2030年までの削減目標が46%以上)と評価されたのは、山形、群馬、東京、徳島の4都県。

このうち、「すばらしいです」とされた群馬県は2019年12月、2050年の温室効果ガス排出量ゼロを宣言。さらに、今年3月に策定した地球温暖化対策の実行計画で、2030年度に13年度比で50%削減するという方針を打ち出した。ただし、いままでの施策を延長するだけでは30%しか減らせない見通しだそうで、「革新的技術・取り組みで突破する」必要があるという。

群馬県気候変動対策課の担当者は「50%削減は高い目標だが、再生可能エネルギーの拡大と省エネルギーの徹底を2本柱にし、達成に向けて取り組んでいきたい。脱炭素は県内産業にとっては新たなビジネスチャンスになる。温暖化対策を進める企業の支援を進め、環境と経済の好循環を実現したい」と話した。

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都道府県ごとの評価が一覧になったページ

最も多い評価はBランク(2050年ゼロ宣言あり、2030年までの削減目標が26%以上46%未満)で、全体の6割超の29道府県だった。このうち長野県は調査時点でBランクだったが、6月に「2030年度までに10年度比60%削減」の新たな目標を掲げたことから、Aランクに「昇格」した。

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北海道幌延町で連なる風力発電所の風車。再生可能エネルギーの導入拡大は、脱炭素社会実現のカギの一つだ(撮影・朝日新聞)

Fランクの静岡・香川も目標設定へ

今回は下位に位置づけられた県も、着々と手を打っている。

Fランク(2050年ゼロ宣言あり、2030年までの削減目標なし)の2県のうち、「全然足りんら」の烙印(らくいん)を押された静岡県は、今年度中に実行計画の改定を予定している。7月の県議会で副知事が「2030年度の削減目標設定は、国の掲げる46%が最低限の目標になると思う」と表明済み。県環境政策課の担当者は「将来世代への責任として、きちんと取り組んでいく」と話す。

同じFランクで「ぜんぜん足りん」とされた香川県も、10月に打ち出す新しい推進計画に、「2025年度に13年度比33%削減」との目標を盛り込む方針だ。2030年度の目標は明示していないが、「国と歩調を合わせ、46%削減をめざすことが前提」(県環境政策課の担当者)という。

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静岡県は「全然足りんら」という厳しい評価
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都道府県別のページでは、気候変動がさらに深刻化した場合の未来図も紹介している。香川県の名物、讃岐うどんの主な原料であるオーストラリア産小麦の生産量が減るおそれがあるとして、「うどん県、返上!?」と指摘されている

「脱炭素」世論で盛り上げて

WWFジャパンは、年度末に計画の改定を予定する自治体が多いとして、来年春ごろに情報を更新する予定。このときは静岡、香川も晴れて上位昇格できそうだ。

「脱炭素列島」開設のねらいについて、WWFジャパンの広報担当者は「日本全体で脱炭素社会を実現するためには、地域での取り組みや自治体のリーダーシップが重要になる。SNSでのシェアなどで脱炭素化促進の世論や空気感が生まれることで、自治体がより意欲的な目標を策定することを期待している」という。

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