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シーンを泳ぐ 違和感の美学 サカナクションが新作アルバム

2010年3月20日

写真拡大山口一郎(中央)率いるサカナクション=高波淳撮影

 ロックでテクノで、文学的で躍動的。バンド「サカナクション」は、様々な要素を貪欲(どんよく)に取り込んだサウンドで人気上昇中だ。スマッシュヒットとなったシングル「アルクアラウンド」に続き、17日には4枚目のアルバム「kikUUiki」を発表した。

 ボーカルの山口一郎、ギターの岩寺基晴、ベースの草刈愛美(あみ)、キーボードの岡崎英美(えみ)、ドラムの江島啓一の5人組。2005年に札幌で活動を始めた。魚とアクションを合わせたバンド名は、音楽シーンに勝負を挑みつつ自分たちらしく泳いでいこうという意気込みを表す。

 新作タイトルを漢字で書けば「汽空域」。海水と淡水がまじり合うのが汽水域だとすれば、何と何とがまじってキクウイキになるのか、想像を刺激する。

 リーダーで作詞作曲を手がける山口は、文学と釣りが好きだという。「俳句や詩をよく読みます。その人の生きざまや、感じ方のルールを知りたくて」。寺山修司、萩原朔太郎、石川啄木、石原吉郎……影響を受けた詩人がよどみなく出てくる。自身の詞も、歌詞とは意識せず一編の詩として書くという。

 「多摩川の近くに住んでますが、都会と自然が融合した場所でナマズが釣れたりする。そんな『いい違和感』を感じると、『いい』と思った理由を考えるんです」。完成締め切りを何度も割り込んだという新譜の端々に、日常の中での違和感を詞やサウンドに変換しようという実験精神が感じられる。

 山口を含め4人が北海道出身だ。「コンパクトな街の近くに海や山がある。その中で培われた美意識もあると思う。サウンドにアーバンなものとあか抜けないものを同時に入れた」

 新曲を作るときは、まずホワイトボードに曲調や概念を書きながら5人でミーティングするという。だが、理詰めの堅苦しさはライブ会場にはない。「最も人とつながれるアレンジや構成をいつも練っている。曲はライブで完成するものだから」

 4月2日、大阪・なんばハッチから全国ツアーが始まる。(藤崎昭子)

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