住民より多いキョンに苦悩 伊豆大島、特産品食害も 根絶へドローン導入【スクランブル】

 伊豆大島(東京都大島町)の住民が、シカ科の特定外来生物「キョン」による特産品アシタバの食害や、鳴き声に頭を悩ませている。強い繁殖力に捕獲が追いつかず、一時は約7千人いる人口の3倍近い推定2万匹まで増加。都は毎年10億円近い予算を投じ、捜索にドローンを導入するなど根絶に取り組んでいる。

伊豆大島に生息するキョン=3日、東京都立大島公園動物園
伊豆大島に生息するキョン=3日、東京都立大島公園動物園
東京・伊豆大島のキョン(東京都提供)
東京・伊豆大島のキョン(東京都提供)
キョン捜索のドローン=3日、東京・伊豆大島(ALSOK提供)
キョン捜索のドローン=3日、東京・伊豆大島(ALSOK提供)
キョン捕獲のため張り巡らされた網をチェックする東京都職員=3日、東京・伊豆大島
キョン捕獲のため張り巡らされた網をチェックする東京都職員=3日、東京・伊豆大島
伊豆大島のキョン生息数
伊豆大島のキョン生息数
伊豆大島に生息するキョン=3日、東京都立大島公園動物園
東京・伊豆大島のキョン(東京都提供)
キョン捜索のドローン=3日、東京・伊豆大島(ALSOK提供)
キョン捕獲のため張り巡らされた網をチェックする東京都職員=3日、東京・伊豆大島
伊豆大島のキョン生息数

 「ギョー」「ギャー」。大島町役場がある元町地区の住宅街を夜に歩くと、キョンの鳴き声が聞こえてきた。住民の40代男性は「かわいい見た目と違っておじさんみたいな声で、寝ている時に鳴かれるとうるさい。車とぶつかった話もよく聞く」とため息をつく。
 キョンは体高50センチ程度で、元々は中国や台湾に分布。濁った声で鳴き「ホエジカ」とも呼ばれる。観賞用として島内の動物園に持ち込まれ、1970年に、台風で壊れた柵から十数匹が逃げ出し野生化したとみられる。アシタバや伊豆諸島の固有種サクユリを食べ、農作物や生態系の被害は深刻だ。繁殖は千葉県の房総半島でも問題となっている。
 都は2007年から捕獲を開始。年間千匹弱を捕まえていたが、「年に1・2倍増える」(都の担当者)という繁殖力が上回り、生息数(推定)は06年の約4500匹から、19年には約1万9500匹に達した。
 年数千万円だった都の関連予算は16年度に億を超え、ここ5年は約7億~9億円を計上。網やかごのわななどを広範囲に設置し、柵で区切ったエリアで複数のハンターがキョンを追い込む手法も取り入れた。20年度以降は毎年5千匹を捕らえ、生息数はようやく減少に転じたものの、昨年末時点でまだ1万7千匹がいる。
 今年10月からは、警備大手ALSOKに委託してドローンでの捜索を開始。赤外線カメラで草むらに隠れたキョンの熱源を上空から探知し、ハンターに場所を伝える。毎月1週間ほど実施予定で、同社担当者は「捕獲につなげたい」と話す。
 都は捕獲したキョンを安楽死させ、焼却処分している。台湾では高級食材として扱われており、都の有識者検討委員会ではジビエ(野生鳥獣肉)としての利活用も話題となったが、委員からは「生態系の保全という目的を見失うべきではない」との慎重意見があった。
 都の佐藤基以・野生生物担当課長は「捕獲の効果が出てようやく個体数が減少に転じている。ただ、依然として食害は深刻で、一刻も早い根絶に向け取り組んでいく」としている。

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