獲物捕獲は一瞬 ”水辺のハンター’’タガメ 浜松で撮影【動画】

 水中で身動きをせず、鎌状の前肢を広げる日本最大の水生昆虫タガメ。待ち伏せをして一瞬で獲物を捕らえる姿から“水辺のハンター”とも呼ばれる。6月下旬、県内唯一の生息地とされる浜松市内の山間部で繁殖の様子を撮影した。

水辺のハンターと呼ばれるタガメ。たくましい前肢の先端は鎌状になっている=7月初旬、浜松市内
水辺のハンターと呼ばれるタガメ。たくましい前肢の先端は鎌状になっている=7月初旬、浜松市内
卵の乾燥を防ぐため、卵塊に覆い被さって、給水をするタガメの雄=6月下旬
卵の乾燥を防ぐため、卵塊に覆い被さって、給水をするタガメの雄=6月下旬
飼育下で、魚の体液を吸収するタガメの雌=7月初旬
飼育下で、魚の体液を吸収するタガメの雌=7月初旬
飼育下で魚を捕食するタガメの幼虫。成長するにつれ体色が変化する=7月初旬
飼育下で魚を捕食するタガメの幼虫。成長するにつれ体色が変化する=7月初旬
水辺のハンターと呼ばれるタガメ。たくましい前肢の先端は鎌状になっている=7月初旬、浜松市内
卵の乾燥を防ぐため、卵塊に覆い被さって、給水をするタガメの雄=6月下旬
飼育下で、魚の体液を吸収するタガメの雌=7月初旬
飼育下で魚を捕食するタガメの幼虫。成長するにつれ体色が変化する=7月初旬

 繁殖期は5月下旬~7月。池沼や水田に生えるイネ科植物の茎や木のくいなど、水面から突き出た場所に産卵する。交尾は数回に分けて行われ、約80~100個産卵する。
 雌は産卵を終えると卵を守る役目を雄に任せ、戻ることはない。子孫を多く残すため、再び栄養を蓄え、一夏に別の雄と2、3回の繁殖行動を繰り返す。
 交尾を終えた雄は水面から呼吸管のある尾を出し、ふ化までの約1~2週間水中からじっと卵を見守る。卵の乾燥を防ぐため、水中から出て卵塊に覆いかぶさって給水したり、鳥などの外敵を追い払ったりする。
 体長は約5センチで、雌のほうが大きい。魚類やカエルなどを好み、獲物を捕らえると、とがったストローのような口から消化液を注入し、肉を溶かして体液とともに吸収する。はるかに大きいヘビやカメを捕食した例もある。
 水田や池沼に生息し、水温が低くなる冬季は、里山の落ち葉の下や池沼の泥の中で越冬するとされる。
 (浜松総局・二神亨)  

個体数激減 絶滅危惧種に


 かつて全国の水田で見られたことから「田亀(たがめ)」と名付けられたとされる。谷津田やため池の減少、放置水田の増加、農薬や肥料などの流入による成育環境の変化で全国的に個体数が激減し、環境省の絶滅危惧種に指定されている。2020年には国内希少野生動植物種にも指定され、販売、頒布(無料で広く配布する)目的での捕獲、譲渡が禁止されている。研究目的や趣味での採集譲渡は規制の対象外。

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