企業は、労働基準法に基づいた労働時間でアルバイトを雇用しなければなりません。時間帯や上限など、そのルールは年齢や業種によって異なります。本記事では、そうしたアルバイトの労働時間について社労士監修のもと解説する内容です。曖昧な方はぜひ、ご参照ください。

アルバイトの労働時間について、上限など労働基準法に則り解説

  • 2022.12.19
  • 2024.01.05

企業は、労働基準法に基づいた労働時間でアルバイトを雇用しなければなりません。時間帯や上限など、そのルールは年齢や業種によって異なります。本記事では、そうしたアルバイトの労働時間について社労士監修のもと解説する内容です。曖昧な方はぜひ、ご参照ください。

アルバイトの労働時間に関する基本規定

非正規雇用

アルバイトの労働時間には、どのような決まりがあるのでしょうか。 

まずは、法定労働時間や18歳未満の未成年者をアルバイトとして雇う際のルールについて解説します。

法定労働時間と所定労働時間 

労働者の労働時間には、労働基準法で定められた「法定労働時間」と、会社ごとに定められた「所定労働時間」の2種類の労働時間があります。前者は、原則1日8時間・週40時間です。後者は、企業の就業規則や契約で定められた労働時間を指します。法定労働時間の範囲内であれば、所定労働時間は企業側で自由に設定できます。 

法定労働時間に関する基礎知識

労働基準法32条では、アルバイトの労働時間を1日8時間・週40時間と定めています。企業は基本的に、この時間内でアルバイトに働いてもらうわけですが、仮に、それ以上長く働いてもらいたい場合は「36(サブロク)協定」の締結が必要です。36協定とは、労働基準法36条に基づいた、労使間で結ぶ労働時間などに関する協定を指します。時間外労働を課す企業は、労働者との間でこの協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。 

法定労働時間には例外もある

原則として1日8時間・週40時間と定められている法定労働時間ですが、一部例外があります。それは、特定の業種で常時10人未満の従業員(パート・アルバイト含む)が働く職場です。該当する場合は「特例措置対象事業場」の対象として1日8時間・週44時間までの労働が認められます。従業員の数は、店舗や事業所ごとにカウントされる決まりです。ただし、特例措置対象事業場であっても18歳未満は対象外として扱われます。 

特例措置対象事業場に当てはまる業種は次のとおりです。 

商業…小売業・卸売業・倉庫業・理美容業・その他商業 
映画・演劇業…演劇・映画の映写・その他興業の事業 
保健衛生業…診療所・病院・浴場業・社会福祉施設・そのほか保健衛生業 
接客娯楽業…飲食店・旅館・ゴルフ場・遊園地・公園・その他の接客娯楽業 

時間外労働について

法定労働時間を超えた分は、時間外労働に当たります。ここで気を付けたいのは、無条件で従業員に時間外労働を課してはいけないということです。上述したとおり、36協定を締結した場合のみ、例外として認められます。

ただし、36協定を締結したからといって、際限なく時間外労働を課せるわけではありません。上限時間はきちんと存在します。具体的には、月45時間、年360時間です。基本的にこれを超えて労働をさせてはいけません。そうはいってもやはり、繁忙期や緊急時の対応が出てくることもあるでしょう。そこで必要なのが「特別条項付き36協定」です。これを締結することによって、以下の上限まで時間外労働を可能にします。

年720時間以下
2〜6ヶ月の平均が80時間以下(時間外労働+休日労働)
単月で100時間未満(時間外労働+休日労働)
1年のうち、限度は6ヶ月

自動車運転業務は年960時間が上限

2024年4月1日より、自動車運転業務(トラック、バス、タクシー)は、時間外労働の上限が年間960時間までに規制されます(従来は上限規制なし)。そこで危惧されるのが、残業代が削られることです。すなわち、給料のダウンを懸念して求職者が集まらなくなるかもしれません。そう、いわゆる2024年問題です。ただでさえ人手不足に悩まされる業界ですが、これがさらに加速化していくことが想定されます。

なお、対策含めて2024年問題については、こちらの記事でくわしく解説しています。
2024年問題とは~ドライバー不足の原因から対策までわかりやすく解説

さて、ドライバーの場合、前述した「2〜6ヶ月の平均が80時間以下」「単月で100時間未満」の条件はありません。そのため、ある月に時間外労働が100時間に達したとしても別の月で調整することが可能です。結果的に年間960時間を超えなければよいとされています。

とはいえ、これはあくまで臨時的な事情があっての上限です。原則として、時間外労働は月45時間(年360時間)だと認識しておいてください。

18歳未満の未成年者を雇う場合 

18歳未満の未成年者を雇う場合は、勤務時間と雇用年齢に注意が必要です。 

18歳未満は深夜労働が禁止されているため、午後10時から午前5時までは働かせることができません(労働基準法第61条)。また、休日出勤も時間外労働も禁じられています。 

裏を返せば、18歳の誕生日を迎えた時点で高校生であっても深夜勤務が可能になりますが、学校側の許可は必須です。 

ちなみにアルバイトとして雇用するには、彼・彼女らが15歳の誕生日を迎えたうえで3月31日を過ぎていなければなりません。法的に定められている条件です。この点もあわせて把握しておきましょう。 

アルバイトが残業した際の賃金

アルバイトのタイムカード

アルバイトが労働時間を超えて働く場合には、残業代が発生します。それはどのように算出するのでしょうか。 

法定労働時間を超えた場合の割増賃金 

法定労働時間を超えた場合、当然、企業はその分の給料を支払わなければなりません。ここで知っておきたいのは、所定労働時間とは異なり割増賃金が発生する点です。 

以下、各シチュエーションで割増賃金の計算式をまとめました。 

【法定労働時間内で所定労働時間を超えて勤務させたとき】 
通常時給のまま 
【法定労働時間を超えて勤務させたとき(時間外労働)】 
通常時給×1.25以上 
【22時から5時までの間に勤務させたとき(深夜労働)】 
通常時給×1.5以上 
【法定休日に勤務させた時(休日労働)】 
通常時給×1.35以上 
【深夜労働+休日労働】 
通常時給×1.6以上 
【1ヵ月以内に60時間以上を超えて勤務させたとき】 
通常時給×1.5以上 

残業時間には上限がある

かつては上限のなかった残業時間ですが、働き方改革によって労働基準法が改訂される際、具体的に「月45時間・年360時間」と設けられました。 

これは1日あたりに換算すると、約2時間の残業に相当します。 

大企業では2019年4月から、中小企業でも2020年4月から適用。特別な事情がない限り、この時間を超えて働かせることはできません。そして仮に、特別な事情がある場合でも、次の規定にしたがう必要があります。 

アルバイトの労働時間に関係する休憩時間・休日・有給休暇

アルバイトの労働時間に関係する休憩時間・休日・有給休暇

労働基準法では、アルバイトにも正社員と同様に、休憩時間や休日、有給休暇の付与が義務付けられています。 

アルバイトの労働時間を深く理解するうえで、これらは確実に把握しておくべき知識です。 

アルバイトの休憩時間 

正社員・アルバイト・パートなど、雇用形態にかかわらず、すべての労働者には休憩時間の取得が法律で義務付けられています。 

労働基準法34条では「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定められています。 

つまり、労働時間が6時間以下であれば休憩時間は不要、6時間を超え8時間以下なら45分以上の休憩を付与、そして8時間を超えるなら1時間以上は休憩してもらってかまわないわけです。休憩時間は一度に取らず、分割で取らせることもできます。 

もしも休憩時間を与えない場合はペナルティ対象です。6ヶ月以下の懲役または30万以下の罰金刑に処される可能性があるので、企業側は注意が必要です。 

アルバイトが休憩時間に働いた分の給料 

いうまでもなく、休憩時間は労働時間ではなく、給与は発生しません。労働基準法第11条でも給料を支払う必要はないと定められています。 

時給1,000円のアルバイト従業員が8時間その会社に拘束された場合、休憩時間が1時間含まれているのであれば、その日の給料は、1,000円×(8時間-1時間)の計算式のもと、7,000円です。 

アルバイトの労働時間と休日

労働基準法では休日に対して、毎週1日、4週間で4日以上の休日を付与しなければならないと定められています。当然、アルバイトも対象です。ただし、36協定を結んでいる場合や、フレックスタイム制や変形労働時間制を導入している企業では、法律で定められた限度内であればこれに該当しない場合もあります。フレックスタイム制とは、企業が定めた時間の範囲から従業員自身が働く時間を選択できる制度です。たとえば、8時から18時の間で8時間と決められている場合、8時から16時、10時から18時といった具合に出勤をずらすことができます。自由度が高く、人気の働き方です。変形労働時間制のもとでも、企業が定める一定の期間内で労働時間を自在に調整できます。仮に労働時間を1ヶ月150時間としましょう。あくまで固定されるのはその部分だけで、忙しい日は10時間勤務し、余裕のある日は5時間で帰宅するといった働き方が可能です。これは、労使協定もしくは就業規則で定めることができます。

アルバイトに有給休暇の付与は必要?

企業には、たとえアルバイトであっても、正社員と同様に有給休暇を与える義務があります。 

▶関連記事:パートの有給休暇取得の条件、付与する日数、賃金の計算方法など解説

従業員に有給休暇を付与しなければならない条件は次のとおりです。 

アルバイトやパートに関しては以下の条件もマストです。

付与される日数は、勤務年数や日数によって変わります。 

有給休暇の取得可能な日数
有給休暇の取得可能な日数

有給休暇の賃金について 

有給休暇を取得したアルバイトに支払う賃金には、主に3パターンの算出方法があります。 

通常の規定に沿って賃金を支払う

基本、有給休暇における月給、週給、日給、時給、加えて出来高制・請負制については次の計算式が成り立ちます。 

月給…月給÷当月の所定労働日数 
週給…週給÷当週の所定労働日数 
日給…日給をそのまま支払う 
時給…時給×所定労働時間 
出来高制・請負制…賃金算定期間の賃金総額÷賃金算定期間の総労働時間数×1日の平均所定労働時間数 
平均賃金を支払う 

一定期間に支払った賃金から平均額を算出して支払う方法も存在します。具体的には次のとおりです。 

・労働者の直近3ヵ月間の賃金総額÷総日数
直近3ヵ月間の労働日数が不足している時は、下記いずれか高い方  
・直近3ヵ月間の賃金総額÷暦日数 
・直近3ヵ月間の賃金総額÷期間中の労働日数×60% 
標準報酬日額を適用して支払う 

標準報酬日額とは、健康保険料の計算を円滑にすべく健康保険法第3条より定められています。有給休暇1日分として支払われる賃金は、標準報酬月額(あるいは上限額)を30(日)で割った額です。この方法を適用するには労使間での協定を結ぶ必要があります。 

アルバイトの労働時間についてのポイントまとめ

アルバイトの労働時間についてのポイントまとめ

アルバイトの労働時間はあらゆる法のもと定められています。拙稿でお伝えしたとおり、残業時間に上限があることや休憩時間や有給休暇も正社員と同様に付与しなければならない点など、人事担当者であれば確実に知っておかないといけません。新たにアルバイトを採用するにあたっても大事なことだと考えます。ここで触れた内容は、折に触れて復習できる教材として扱ってもらえると幸いです。 

そうしたなか、実際にアルバイト募集を行うのであれば掲載料金プランも幅広く選べる「バイトル」の利用をおすすめします。お問い合わせは無料。気になる方はぜひ、導入をご検討ください。

求職者と企業を素早くマッチング!
⇒バイトルに関するお問い合わせ(無料)
掲載料金やプラン、そのほか気軽にご相談ください。

【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所の代表を務める荒武慎一氏

アラタケ社会保険労務士事務所 

代表 荒武 慎一

同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。

TOP