プーチン氏の盟友の娘死亡、「ウクライナの特殊部隊の犯行」とロシア

Darya Dugina

画像提供, Reuters

画像説明, ダリヤさんはロシアのウクライナ侵攻を支持するコメンテーターとして知られ、日常的にテレビ出演していた

ロシア連邦保安庁(FSB)は22日、ウラジーミル・プーチン大統領の世界観に大きく影響したとされる国家主義思想家の娘が乗った車が爆発して死亡した事件について、ウクライナの特殊部隊による犯行だと非難した。ウクライナ当局は爆発への関与を否定している。

思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏(60)の娘ダリヤさん(29)は20日夜、首都モスクワ近郊で、運転していた車が爆発して死亡した。

ドゥーギン氏は当初、同じ車に同乗する予定だったが、直前に別の車に乗ることにしたとロシア・メディアは報じている。「プーチンの脳」とも呼ばれるドゥーギン氏を対象にした攻撃だった可能性が、指摘されている。

FSBは22日、ダリヤさんの事件を解決したと発表。ウクライナが直接関与していたとした。7月に娘と共にロシアに移住したウクライナ人女性が、ウクライナ特殊部隊から仕事を請け負っていたと、FSBはロシアメディアに語った。

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FSBは、この女性が1カ月前からダリヤさんと同じアパートに部屋を借り、攻撃の準備をしていたとしている。女性は3種類のナンバープレートを使い、ミニクーパーでダリヤさんを尾行し、モスクワ中を移動していたとされる。

FSBによると、容疑者は爆発の後にエストニアに逃亡したという。

ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、FSBの説明は「架空の世界」からの「ロシアのプロパガンダ」だと述べた。

FSBはその後、容疑者の車がロシアに入国した時のものだとされる動画を公開。さらに、容疑者がダリヤさんの自宅とされる建物に入った時と、ロシアを出国した時の様子だという監視カメラ映像も公表した。

Alexander Dugin
画像説明, 死亡したダリヤさんの父アレクサンドル・ドゥーギン氏(写真)は、超保守的な国家主義者で、その思想はプーチン大統領の世界観形成に大きく影響したとされている

「ウクライナのナチス政権」のテロ行為と

捜査当局によると、ダリヤさんが運転していたトヨタのランドクルーザーの下に爆発物が仕掛けられていた。

オンライン上に投稿された爆発現場を捉えた動画には、炎上する車両を震えながら見ているドゥーギン氏が映っている様子。

家族ぐるみのつきあいがあるコンスタンチン・マロフェーエフ氏はドゥーギン氏に代わって声明を発表し、ドゥーギン氏の娘の殺害は「ウクライナのナチス政権によるテロ行為」だと決めつけた。

ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻の主な理由の1つに、ウクライナ国内に強力なナチスの存在があるという根拠のない主張を繰り返している。ドゥーギン氏側の発言はこうした主張を引用したもの。

「私の娘ダリヤ・ドゥギナは私の目の前で残酷に殺された」と、ドゥーギン氏はメッセージアプリ「テレグラム」に書いた。「娘は美しい正教徒で、愛国者で、戦争記者で、中央テレビの専門家かつ哲学者だった」。

「我々に必要なのは勝利だけだ。娘は若い命を犠牲にしてその祭壇に捧げた。だから、どうか成し遂げてください!」

プーチン氏は22日にクレムリン(ロシア政府)が発表した声明の中で、個人的にダリヤさんに敬意を表し、「卑劣で残酷な犯罪」による死だとした。また、ダリヤさんに勇敢勲章を授与し、「職務遂行において示された献身」を称賛した。

ダリヤさんは父親が設立した国際ユーラシア主義運動組織の政治評論家で、親ロシア政権のメディアにも定期的に寄稿していた。

ダリヤさんはロシアによるウクライナ侵攻を声高に支持していた。7月には、「ウクライナに関連した偽情報に頻繁に加担する著名な人物」としてイギリスの制裁対象となった。

父親のドゥーギン氏はロシアの反・欧米運動の生みの親とみなされている。2014年にはBBCに対し、ウクライナとの戦争は「避けられない」と語っている。同年、ドゥーギン氏が長らく求めていたウクライナ南部クリミア半島の併合が実現した。

同じくこの年、ドゥーギン氏がロシア語で「(ウクライナ人を)殺せ、殺せ、殺せと、私は考えている。それ以外の話などありえない」と発言しているとみられる動画が浮上。多くのウクライナ人の激しい怒りを買った。