現在高専に通っている人のなかには、「将来大学に行ってみたい」と思っている人も多いのではないでしょうか?
大学には高専とは違った魅力があります。また、大学編入は大卒資格を得ることができ、就職の選択肢が増えるなど、将来のステップアップにつながります。
そこでこの記事では、どうやって高専から大学へ編入するのか、高専卒と大卒の違い、大学編入することのメリット・デメリット、さらに大学編入するのにかかるお金などについてわかりやすく解説します。
「大学編入に興味はあるけれど、知らないことが多い」という人にとって役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
高専に通うなかで、もっと深く研究したいテーマが見つかった、より高いレベルで勉強したいと思うようになったなどの理由から、大学編入を考える人も多くいるでしょう。
高専から大学へ編入する方法としては主に以下の方法が挙げられます。
方法1:推薦編入
推薦編入は、高専内での成績が重視される選抜方法です。
大学により、求められる成績の条件は異なりますが
などがあります。1年生から成績上位であることを求める大学もあります。
推薦編入を希望する場合は、早くから行きたい大学の条件を調べることが大切です。
方法2:一般編入
一般編入は、基本的に筆記試験で合否が決まる選抜方法です。
大学により、面接や小論文の試験があるケースもあります。
高専のときの成績はあまり重視されませんが、筆記試験の範囲が広いため、十分な対策をすることが大切です。
高専から大学に編入することは、一般的には以下の理由から難しいと考えられています。
しかし、だからといってあきらめる必要はありません。
高校からの大学入試と比べ編入試験の方が科目数が少ない傾向にあるため、集中して専門知識を深めることができます。
国立高等専門学校機構が公開している資料によると、令和4年度進路状況(本科)において、進学(大学編入)は25%となっています。
一方、就職は56%であり、就職する人と比べると大学編入をする人は少ないことがわかります。
出典:KOSEN 2023年度 NationalInstitute of Technology
ただし、大学編入する人の割合は学校や年度によってばらつきがあるので、「編入したいと思う自分は少数派なんだ」と落ち込む必要はありません。
高専生の場合、5年生を卒業したあと、大学の工学部や理学部といった学部の3年生または2年生に編入することができます。
学部3年生に編入することが一般的ですが、これは15歳で中学を卒業し高専に入学した人が5年生になり、年齢が20歳(多くの学部3年生と同じ年齢)になるためです。
なお、単位認定の都合から、一部の難関大学は学部2年生への編入となります。
このように、編入できる年次は目指す大学によって異なりますので、自分が行きたい大学の情報をしっかりリサーチすることが大切です。
続いて、高専卒と大卒の違いについて解説していきます。
高専は卒業後の就職率も高いことから、すぐに就職する人も多い傾向があります。
高専卒と大卒でそれぞれ違ったメリットがありますので、一つ一つチェックし、自分はどちらの道が合っているのか考えてみましょう。
高専卒の大きなメリットは、就職率の高さです。
国立高等専門学校機構によれば、就職率は例年ほぼ100%となっており、希望する人のほとんどが就職できていることがわかります。
出典KOSEN 2023年度 NationalInstitute of Technology
また、求人倍率も20倍を超え、他の学校種と比較しても高い基準になっています。
求人倍率とは、仕事を探している人1人あたりに対して、何件の求人があるかを示すものです。
この数字が高いことは、就職のしやすさを意味します。
高専卒の就職率がこれほどまでに高い理由は、高等教育機関として企業からの信頼が厚いことが挙げられます。
専門知識を持った人材は企業の即戦力となるため、常に企業からの需要が大きいです。
また、高専を卒業してからすぐに就職した場合、専門知識を身につけた状態で働き始めることができます。
大学に編入した場合、高専のころと比べて授業数や授業時間が少なくなるため、アルバイトや遊びなどを優先してしまい、学業に集中できなくなったり、覚えた知識を忘れてしまったりするケースがあります。
以上のように、卒業後の就職がしやすく、また高専で学んだことをすぐに仕事として活かせるという点が高専卒のメリットと言えます。
大卒のメリットとしては、就職先の選択肢が広がるという点が挙げられます。
先ほどご紹介した通り、高専卒の就職率は高いですが、基本的には専門知識を活かす技術職に就くことになります。
大学を卒業すると、「学士」という資格を得ることができます。
学士は主に4年生大学に通い、所定の単位を取得して卒業した場合に取得できるものです。
ちなみに、高専に5年間通い得られるのは「高専卒」という資格であり、準学士の学位となります。
学士の資格を持っていると、技術職以外の職業に就くという選択肢も広がります。
企業によっては大卒資格を持った人のみを採用している場合もあります。
また、学校を卒業した直後の就職だけでなく、その後転職活動をするとなったときにも、大卒であることが書類審査などで有利にはたらくこともあるようです。
また、企業や職種にもよりますが、高専卒と大卒では給与・昇格・昇給などの待遇に差があるケースが多いです。
以上のように、就職先の選択肢が広がり、待遇面でもより良い条件で働くことができるという点が大卒のメリットと言えます。
はっきりと将来就きたい職業が決まっていない場合や、さまざまな仕事に就職できる可能性を残しておきたいと考える場合は、大学編入をして大卒を目指すことを検討してみてください。
ここからは、大学編入することでのメリットとデメリットの双方を解説します。
大学編入について気になっているけれど、すべきなのかわからないと悩んでいる方は、ぜひ以下にご紹介するメリットとデメリットを比較・検討してみましょう。
まず、大学編入することでのメリットとしては、主に
「最先端の研究に関わることができる」
「規模の大きな場所でさまざまな人と知り合え、視野を広げることができる」
「就職先の選択肢が広がる」
の3点が挙げられます。
1点目の「最先端の研究に関わることができる」ことは、自分が興味のある分野について、より高いレベルで勉強したい人にとって魅力となるでしょう。
それぞれの大学によって多少の差はありますが、一般的に大学は高専と比べて研究施設が充実していたり、より高度な研究ができる設備が整っています。
そのため、関心のある分野の最先端の研究を間近で見ることができたり、関わることができたりします。
研究分野によっては、高専では見ることのなかった実験装置や数値解析ソフトなどが揃っている場合もあります。
高いレベルで、より深く専門分野を学ぶことができるのは、大学ならではと言えるでしょう。
2点目の「規模の大きな場所でさまざまな人と知り合え、視野を広げることができる」ことも、大学に編入するからこそ得られるメリットと言えます。
こちらも大学によって学生数やキャンパスの大きさなどは異なりますが、高専の専攻科と比べると規模は大きくなります。
大学は学生数が高専よりも多いだけでなく、理系分野以外のさまざまな学部があったり、サークルの数なども多いです。
そのため、大学に通うことで、自分の興味関心、また研究分野とは異なる人とも知り合うことができます。
さらに、大学では自分が所属する学部の講義だけでなく、「一般教養」として語学や文学、社会学や政治学など、幅広い講義を受けることができます。
自分の専門分野を深く掘り下げていくことはもちろん大切ですが、新たな知識を得て視野を広げることも貴重な体験になるでしょう。
3点目の「就職先の選択肢が広がる」ことは、特に今のところ将来やりたいこと、就きたい職業などが具体的に決まっていない人にとって大きなメリットとなります。
先ほどもご紹介した通り、大卒資格を持っていることで、事務職や営業職、企画職など、技術職以外の就職の可能性が広がります。
大学に編入し、多くの人と知り合うことで新たな興味が出てきたり、別の専門分野に関心が移ることもあるでしょう。
そのような場合に、大学に編入し大卒資格を取得しておくと、就職しやすくなります。
一方、大学編入することでのデメリットとしては、主に
「一から新たに人間関係を築いていく必要がある」
「授業料が高い」
「自らの力で就職活動をする必要がある」
の3点が挙げられます。
1点目の「一から新たに人間関係を築いていく必要がある」というのは、大学編入は学部2年または3年に入ることが理由です。
学部1年生のときから友人を作ることのできる他の学生と比べ、大学編入の人の場合はすでに出来あがっているコミュニティに入り、人間関係を新しく築いていく必要があります。
2点目の「授業料が高い」こともデメリットと言えるでしょう。国立大学の学費は標準額53万5,800円です。私立大学は大学ごとに異なりますが、国立大学より高くなります。
3点目の「自らの力で就職活動をする必要がある」ことも大学編入を考える際の不安材料の一つになるでしょう。
先ほどご紹介した通り、大卒資格を持っていると就職先の幅は広がりますが、大学は高専のような手厚い就職サポートが受けられないこともあります。
研究をしながら自分の力で就職活動をしなければならないのは、精神的な負担となります。
このように、大学編入にはさまざまなメリット・デメリットがあります。
高専を卒業した後に何をしたいのか考え、それに大学編入が適しているかどうかを検討してみましょう。
大学編入をするときにかかる受験料は、1校あたり約3万円です。
大学によって試験日が異なることから、国立・私立大学を何校でも受験することができますが、受験校が増えれば増えるほど受験料の合計も大きな金額になります。
また、受験料に加えて受験対策のための参考書・過去問代や、予備校に通う場合はその授業料もかかります。
編入後の授業料なども考慮し、親御さんにも相談してみることが大切です。
高専から大学に編入することには、興味のある分野をより専門的に深く学ぶことができたり、新たな人との出会いで視野が広がったりと、さまざまなメリットがあります。
しかし、就職率が高かったり、勉強して身につけた専門知識を活かして仕事ができたりと、高専を卒業してそのまま就職することのメリットもあります。
高専から大学に編入するかどうか迷っている人は、ぜひ今回の記事でご紹介したメリット・デメリットをじっくりと比較・検討してみてください。
自分が高専を卒業したあとに何をしたいのか考えることで、自分に合う進路を選択できるはずです。