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ピーター・タスカ氏、漫画に込めた未来図-アベノミクスで現実

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英運用会社アーカス・インベストメントの共同設立者で、日本株ストラテジストの草分け的存在であるピーター・タスカ氏は長期デフレで閉塞感漂う4年前、希望を込め日本の未来予想図を1つの漫画にしたためた。その後誕生した安倍政権が日本銀行と連携しこれまでにない大規模金融緩和を実施、成長戦略などアベノミクスを進めたことで、多くのシナリオが現実化し始めた。

  出生率を上げ、訪日外国人を増やし、カジノを合法化し、デフレから脱却する--。これらは、タスカ氏が2011年に制作した漫画「I am a Digital Cat : A Japanese Future」の中で示した日本変革への処方箋で、人型ロボットの猫が主人公と話している。「当時は全くの夢物語のようだったが、今は成し遂げてもらいたいと考えていた多くのことが実際に行われてきている」と、同氏は13日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。

I am a Digital Cat: A Japanese Future. (2011)

I am a Digital

Cat: A Japanese Future. (2011)

  安倍晋三首相は9月24日の自民党総裁再選後の会見で、名目国内総生産(GDP)を600兆円に拡大することを目標に掲げ、強い経済、子育て支援、社会保障を「希望と夢と安心のための新3本の矢」と位置付けて取り組む考えを表明。「もはやデフレではない、という状態まで来た。デフレ脱却はもう目の前だ」と述べた。安倍政権が誕生した12年12月26日から今月15日までにTOPIXは76%上昇している。

  タスカ氏は、「ニューノーマルと呼ばれる世界では、デフレが常に関心事としてある。安倍政権が名目GDPに注目した点は非常に面白い」と指摘。仮に、1990年当時からこれまでに2-3%伸びていたならば、「税収は増え、借金は減る。全く違う世界を見ることになっただろう」と言う。

  初めての訪日から30年以上が経過するタスカ氏は、常に日本に対し楽観的だったわけではなく、「1980年代から90年代はとても悲観視していた」と振り返る。現状については、「日本人は不平を言うことが好きだが、実際には日本はそれほど悪くない。政策も概して良い」との認識で、銀行融資や預金、所得税の動向などから国内経済は堅調とみている。

デフレ脱却への自信、日本人自身が高めよ

  日本株市場について同氏は、企業統治改革の動き、個人投資家による貯蓄から投資への流れが下支えすると分析。バリュエーション面でも、ITバブル期の2000年には企業業績が悪かったにもかかわらず、日経平均株価が2万円を超えた状況と比べても割安感があり、「人々がまだ日本株に対し強気でない証拠だ」と話した。

  多くの人はまだ安倍首相が約束を果たさないと疑っている、とタスカ氏。市場は常に急速な変化を求めるが、企業構造や社会の変化には年月がかかるため、「日本人自身がデフレ脱却への自信を高めていくことが大切だ」と指摘する。現状の日本株市場で大きな存在感を見せる海外投資家は、世界で何かが起これば資金を退避させてしまうため、国内の投資家、特に個人が株に資産を費やしていく環境を作るべきで、そのためには「ボラティリティを下げ、企業がより高い配当を出していく必要がある」とした。

  アーカスが日本株の割安銘柄を買い、割高銘柄を売る手法で運用する「アーカス・ジャパン・ロング・ショート・ファンド」は、タスカ氏によると、99年4月の運用開始からことし8月までのトータルリターンがプラス343%。同期間のTOPIXはプラス47%だった。アベノミクス以前から同ファンドは好パフォーマンスを上げており、「われわれはファンドの利益を得るために安倍政権が必要なのではない。アベノミクスを支持するのは、それが日本を前に進める唯一の方法だからだ」と同氏は述べた。

  ことしのTOPIXは、8月11日に一時1702.83と2007年以来の1700ポイントを回復。その後中国経済の減速や米国金融政策の不透明感などを材料に調整色を強め、9月29日には1371.44まで下げた。足元ではやや戻し1500付近で推移、16日午前時点で年初来パフォーマンスはプラス7.3%となっている。タスカ氏は、「もし年末まで上昇し続ければ、上昇相場は80年代以来の4年目に突入する。変化するのに時間はかかるが、少しずつ兆しは見え始めている」と言う。
  

Arcus Japan LS Fund

Arcus Japan LS Fund chart

(文末に日本株の動向、見解を追記します.)
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