辻村深月さん、本屋大賞受賞作への思い語る「子どもとかつて子どもだったすべての人に」

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辻村深月
辻村深月さん

 辻村深月さんの『かがみの孤城』が、2018年本屋大賞を受賞した。辻村さんはこれまでに3作品がノミネートされていたが、本屋大賞は初の受賞となる。その辻村さんから受賞にあたっての喜びのコメントが届いた。

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 本屋大賞を受賞できて、本当に嬉しいです。
 直木賞受賞後に本屋大賞にノミネートしていただくようになって、その年ごとに頑張って書いたものを見てもらえているんだと思えて、いつも嬉しかったのですが、それでも、大賞は別格で、自分にいただけるものではないと思っていました。
 ただこの『かがみの孤城』に関しては、読者の方の感想が普段以上に熱かったり、お会いする書店員さんたちにかけていただくお声が普段とちょっと違う熱を持ったりしているように感じていました。
 今回の受賞で、自分が嬉しいのはもちろんですが、真っ先に思ったのは、『かがみの孤城』を大事に読んでくれた読者の皆さんがきっと喜んでくださる、ということでした。
 この作品の最初のオビには「あなたを助けたい」という言葉がありました。カバーの絵にある主人公が鏡をのぞき込んで自分に向かって言っているようでもあるし、作者から読者に向けて、ともとれる言葉です。どこかでうつむいている誰かにその顔を上げてもらいたい、そんな思いを込めて書いた本です。

 本屋大賞は、書店員さんたちが「いちばん売りたい」本を選ぶ賞ですが、全国の書店員さんたちがこの本を必要とする人が絶対にいると信じ、その誰かに「届けたい」と投票してくれたのだろうと思うと、胸が熱くなります。
 中学生が主人公の物語にしたのは、ポプラ社さんからの依頼だったからです。私自身が十代の多感な時期にポプラ社の本と出会って日々を過ごしてきたことへの、恩返しになるような小説にしたいと思いました。「初期の頃に書いていた作風に戻った」「辻村深月が帰ってきた」という言い方をしてくださる読者も多いですが、ある読者の方から、「戻ってきたけど、それはらせん階段を上がったようなもの。真上から見ると同じ位置でも、一段高い場所に戻ってきた」と言われたことがとても嬉しかったです。作者としても、一段高い場所からより広い景色が見えた小説になったという手ごたえがありました。
 登場人物は中学生ですが、読んでいただくと、どの年齢の方にとっても自分の物語だと感じていただけるのではないかと思います。
 代表作というのは、いろんな流れやタイミングもあって、自分では決められないものですが、今回の受賞を通じ『かがみの孤城』が自分の代表作になることが、とても幸せです。(談)

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 受賞会見では「『かがみの孤城』は子どもと、かつて子どもだったすべての人に向けて書いた作品」「自分が10代で逃げ場がないような気持ちでいた頃、私の傍らにいつもあったのが本の存在でした。私の部屋の鏡は光りませんでしたが、本がカバンの底や本棚の片隅で光って、扉をあけて、私をいろんな世界へ冒険に連れて行ってくれました。私が読んできた本に対しての恩返しができたらとても嬉しい」と本への思いを語った辻村さん。

「読んでくださった書店員さんのコメントには、“子どもの時間は常に大人とつながっているんだと思いました”と書いてくださっているものや、“読み終えて、子どもを助けるのはやっぱり大人じゃないといけなんじゃないかと思いました。だって私たち子どもだったんだから”というものも。『かがみの孤城』にこめた気持ちが誰かに届いて、そうやってバトンをつなげて、みんなにもらって、今この場所に立たせてもらっていると思います。その誰かのところに届けばいいなと願いをこめて送りだせたら嬉しいです。本屋大賞、本当にありがとうございました」と締めくくった。

ポプラ社
2018年4月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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