Associated Press/Charles Krupa
フロリダ州パークランド。
ネバダ州ラスベガス。
テキサス州サザーランド・スプリングス。
多くの犠牲者を出したアメリカの銃乱射事件には、少なくとも1つ、共通点がある。AR-15だ。
AR-15は、特に1994年に定められた攻撃用武器を禁止する連邦法が2004年に失効した後、アメリカで広く出回るようになった銃で、多くの乱射事件で使用されてきた。上に挙げた3つの場所で起きた事件だけではない。
どうしてこのような事件が起きるのか。Business Insiderでは、その歴史を振り返るとともに、アメリカ司法省のアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局の元 特別捜査官で、銃を使った暴力と戦うギフォーズ(Giffords)のシニア・アナリストでもあるデヴィッド・チップマン(David Chipman)氏に話を聞いた。
全米ライフル協会(NRA)にも我々はコメントを求めたが、回答はない。
AR-15の「AR」はアーマライト・ライフルの略だ。
ベトナム戦争中、M-16を携行する米兵(1965年)。
Associated Press
1950年代半ば、米軍は銃の製造会社アーマライト(Armalite)に、第二次世界大戦や朝鮮戦争で広く使用されたM1ガーランドに代わる装備として、AR-10の小型版を開発するよう依頼した。
その結果、生まれたのがAR-15だ。
だが、アーマライトはそのデザインをコルト(Colt)に売却、その後はコルトがペンタゴンにこの武器を売り始めた。1962年、アメリカ国防総省はAR-15をM-16へと名称変更した。
1963年、コルトはAR-15を「狩りの素晴らしいパートナー」として一般向けに販売。
Colt
1986年に銃所有者保護法が定められるまでは、銃の販売業者らは自動火器を合法的に販売することができた。一方、コルトの初期のAR-15は、半自動火器だった。
自動火器は、引き金を引くだけで連続で弾が発射される。半自動火器で連射するには、引き金を何度も引かなければならない。
だが、いずれにせよ当時は、民間人も自動火器を持つことができた。
AR-15は、このときすでに、驚くほど殺傷能力が高かった。
AR-15。
Joe Raedle/Getty Images
AR-15は、0.223口径(5.56mm)で秒速約3300フィート(約1000メートル)と、一般的なグロックの拳銃に比べ、その銃口速度は約3倍にもなる。
その有効射程は少なくとも1300フィート(約400メートル)以上と、グロックの160フィート(約50メートル)を大幅に上回る。
アメリカ司法省のアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局の元 特別捜査官で、銃を使った暴力と戦うギフォーズ(Giffords)のシニア・アナリストでもあるデヴィッド・チップマン氏はBusiness Insiderに対し、 AR-15はその威力の大きさから、屋内での攻撃に持ち込むことは禁じられていたという。あまりにも弾が速いため、銃を向けた相手だけでなく、壁や部屋にいる別の人間までをも貫通してしまうからだ。
しかし、1989年に5人が死亡、29人以上が負傷したカリフォルニア州ストックトンの学校での銃乱射事件が起こるまでは、一般人が半自動火器を購入することはまれだった。
カリフォルニア州ストックトンにあるクリーブランド小学校で、銃乱射事件の犠牲となった遺体を確認する警察(1989年1月17日)。
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「ストックトンの事件が起こる前は、こうした銃を買えることすら大半の人は知らなかった」2017年12月、『Black Rifle II(ブラック・ライフル II)』の著者クリス・バルトッキ(Chris Bartocci)氏はCNNに語った。
「こうした物がなくなることはないだろう。新しいテクノロジーではない」その上でバルトッキ氏は、事件がメディアによって報じられることで、半自動火器への注目が集まると指摘した。
ジャーナリストのC.J.シバーズ(CJ Chivers)氏によると、その後、この事件で使用された中国のAK-47だけでなく、AR-15の売り上げも増えた。
1994年、AR-15の複数のモデルを含む、攻撃用武器を禁止する連邦法が国会を通過。
Associated Press
だが、1994年の攻撃用武器を禁止する連邦法は複雑だった。特定のAK-47やAR-15モデルといった18種類の火器を禁止したが、半自動火器の全てを禁止したわけではなかった。
だが、2004年にこの法律が失効すると、AR-15の全モデルは再び、すぐに手に入るようになった。
Reuters
さまざまなカスタマイズも可能だ。スコープやより大きな弾倉、バンプストック(半自動火器を連射可能な自動火器に変える装置)などを加えることができ、これが銃の人気を高めることにもつながっている。
バンプストックを付けたAR-15を構える、銃のインストラクター。
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このうち、2017年にラスベガスで起きた銃乱射事件で、スティーブン・パドック(Stephen Paddock)容疑者が使用していたことでも知られるバンプストックについては、全米ライフル協会(NRA)やトランプ大統領ですら、その禁止を支持する考えを示している。
そして、州によって差はあれど、購入するのも簡単だ。
Reuters
例えば、フロリダ州では18歳以上で犯罪歴がなければ、誰でも待つことなくAR-15を購入することができる。同州議会では20日(現地時間)、攻撃用武器を禁止する法案について議論されたが、否決された。
一方、カリフォルニア州では最近、全ての攻撃用武器が禁止された。これには、AR-15の全モデルの他、弾倉の着脱が可能なライフルやピストル・グリップなどが含まれる。
銃乱射事件でAR-15がこれほどまでに頻繁に使用される理由は2つだと、チップマン氏は言う。人気と殺傷能力の高さだ。
simonov
「これには2つの要素がある。AR-15は、アサルトライフルにおける4ドアのセダンのようなものだ」チップマン氏は言う。「そして、これはアメリカの武器だ。アメリカ生まれという側面もある」
だが、銃乱射事件がこれほど大きな犠牲を生むようになったのは「AR-15が使われているからだ」と同氏は指摘した上で、拳銃に比べて、AR-15が人体に与えるダメージの大きさについて加えた。
「救急救命の医師に話を聞いたところ、ライフルの弾は人体に壊滅的なダメージを与える」
(翻訳/編集:山口佳美)