プエルトリコにあるアレシボ天文台の電波望遠鏡。左は2020年の崩壊前に撮影された写真。右は2022年10月に撮影された写真。
Arecibo Observatory/Paola Rosa-Aquino
- アメリカの自治領プエルトリコにあるアレシボ天文台のビフォーアフター写真は、宇宙研究の一時代を終わらせた大型電波望遠鏡の崩壊のすさまじさを示している。
- 天文学者らは電波望遠鏡が失われたことを嘆き悲しんでいる。アレシボ天文台は自然災害に見舞われたこともある。
- アレシボ天文台の電波望遠鏡は60年近く天文学に多大な貢献をしてきた。
プエルトリコにあるアレシボ天文台のウィリアム・E・ゴードン電波望遠鏡は60年近く宇宙を眺めるのに欠かせない存在だった。
小惑星の追跡から初めての太陽系外惑星の発見まで、アレシボ天文台はわたしたちの宇宙に関する知識に多大な貢献をしてきた。
天文台にある大型電波望遠鏡は地震やハリケーンなどさまざまな逆境を乗り越えてきたが、2020年12月1日にプラットフォームが下の主鏡に落下し、崩壊した。
あれから約2年、電波望遠鏡はどうなっているのだろうか?
アレシボ天文台の電波望遠鏡は、プエルトリコ北西部のシンクホールと呼ばれる自然の巨大な穴の中に作られた。
1980年代に上空から撮影されたアレシボ天文台の様子。
Arecibo Observatory
周辺地域の住民たちも天文台の建設を手伝った。
プラットフォームを支えるケーブルをつなぎ、持ち上げる労働者(1962年9月)。
Arecibo Observatory
天文台は1963年11月に完成した。望遠鏡の主鏡はもともと金網でできていたので、下のシンクホールが見通せた。
アレシボ天文台のウィリアム・E・ゴードン電波望遠鏡。写真は1973年に主鏡が交換される前に撮影されたもの。
Cornell University/Arecibo Observatory
アレシボ天文台は、天文学者らにとって頼りになる存在だった。
アレシボ天文台でパソコン画面を見つめる天文学者のラリー・ウェブスター氏とジル・ターター氏(1992年10月10日)。
Roger Ressmeyer/Corbis/VCG via Getty Images
1974年には初めて、宇宙人に向けたメッセージを電波信号として送った。メッセージにはDNA情報や、人間とアレシボ天文台のシンプルなイラストなどが含まれていた。
「アレシボ・メッセージ」。
norro
1992年にはパルサー(数秒以下の周期で規則的に電波を発する天体。超新星爆発で生じる超高密度天体の中性子星)を周回する太陽系外惑星を初めて発見した。
パルサーPSR B1257+12の太陽系外惑星(イメージ)。
NASA/JPL-Caltech/R. Hurt
その電波望遠鏡は、映画『007/ゴールデンアイ』(1995年)や『コンタクト』(1997年)にも登場した。
『コンタクト』より。
ostinatoscope/YouTube
直径305メートルの巨大な主鏡が特徴だ。
ケーブルの点検作業をする技術者(1989年7月)。
Roger Ressmeyer/Corbis/VCG via Getty Images
主鏡の上にある金属製のプラットフォームを複数のケーブルが支えている。
2012年7月9日。
Universal Images Group/Getty Images
重量約900トンのプラットフォームには受信機が乗っていて、約140メートルの高さに吊り下げられていた。
2012年7月9日。
Universal Images Group via Getty Images
2017年のハリケーン「マリア」や地震の被害を乗り越えてきたが、電波望遠鏡は2020年12月に崩壊した。
2本の重要なケーブルが切れたことがプラットフォームの落下、電波望遠鏡の崩壊につながった。
Paola Rosa-Aquino
プラットフォームが落下する瞬間をカメラが捉えていた。
主鏡にはもともと3万7000枚のパネルが使用されていたが、残ったのは1万9000枚だ。
多くのパネルが失われ、草木が目立つように。
Paola Rosa-Aquino
アレシボ天文台のビフォーアフター写真は、宇宙研究の一時代を終わらせた大型電波望遠鏡の崩壊のすさまじさを示している。
プエルトリコにあるアレシボ天文台の電波望遠鏡。左は2020年の崩壊前に撮影された写真。右は2022年10月に撮影された写真。
Arecibo Observatory/Paola Rosa-Aquino
アメリカ国立科学財団(NSF)は2022年10月、アレシボ天文台の電波望遠鏡を再建しないと発表した。ただ、そのレガシーは生き続けるだろう。
アレシボ天文台のエントランス(2022年10月)。
Paola Rosa-Aquino
(翻訳、編集:山口佳美)