15年前の今日、「リーマンショック」はなぜ起きたのか。ビジネスパーソンが観るべき作品4選

世界の主要指数の下落を示す電光掲示板

東京にて、世界の主要指数の下落を示す電光掲示板(2008年9月16日撮影)。

Yuriko Nakao / Reuters

15年前の2008年9月15日、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻した。

負債総額約6000億ドル(約63兆円、当時)という、史上最大級の倒産を機に始まったのが、世界金融危機「リーマンショック」だ。

大手金融機関が次々と経営危機に陥り、アメリカ経済は破綻、世界同時不況に発展した。日本も、日経平均株価急落、派遣切りや雇い止めが多発するなど深刻な影響を受けた。

リーマンショックで一体何が起きたのか。その背景と影響について映像化した4作品を紹介する。

『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』

『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』予告編

ソニー・ピクチャーズ、2010年公開(日本公開は2011年)

リーマン・ブラザーズの経営破綻はなぜ起こったのか。

原因となったアメリカの低所得者向け住宅ローン「サブプライムローン」問題のからくりや破綻の舞台裏、その余波について、本作は当時の政府高官、政治家、経済学者、金融機関幹部などの証言、記録をもとに追ったドキュメンタリーだ。

彼らはサブプライムローンが抱えるリスクに気づいていたのに、なぜ防げなかったのか。一般の庶民を食い物にする「ホラー映画よりも恐ろしい」(ボストン・グローブ)事実が次々と語られる。

リーマンショックのあおりを受けて国の財政が破綻した、アイスランドのシーンから始まるところが興味深い。

余談だが、財政破綻に至った要因について、アイスランド政府は男性中心に経済運営を行ってきたためと分析。政治・経済両面で女性の登用に力を入れた結果、翌2009年には世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」で1位に躍進した。以降、2023年に至るまで、アイスランドは14年連続で首位の座を守り続けている。

主な配信サイト:Netflix、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ(レンタル)、Hulu(レンタル)(2023年9月15日現在)

『リーマン・ブラザーズ 最後の4日間』

BBC The Last Days of Lehman Brothers

『リーマン・ブラザーズ 最後の4日間』

BBC、2009年放映/Amazon

リーマン・ブラザーズが破綻する直前の4日間に、ウォール街で何が起きていたのか。本作は、その出来事をBBCが再現したドラマだ。

破綻4日前の9月12日、経営危機に陥っていたリーマン・ブラザーズCEOリチャード・ファルドのもとに「アメリカ財務長官が大手投資銀行幹部を緊急招集した」という一報が飛び込んできたところから物語は始まる。

政府主導でリーマン救済を話し合うものと見られたが、財務長官は「救済のために公的資金は出さない」と宣言。集まった投資銀行幹部で打開策を見出すよう迫る。

ファルドCEOの焦燥、リーマンの次の破綻候補と名指しされたメリルリンチら大手銀行幹部の思惑、破綻を決定づけたどんでん返し……。

緊迫したシーンの合間に、イギリスらしいシニカルな笑いを交え、倒産までの紆余曲折を描く。

主な配信サイト:Amazonプライム・ビデオ、Hulu(2023年9月15日現在)

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』予告編

パラマウント・ピクチャーズ、2015年公開(日本公開は2016年)

『リーマン・ブラザーズ 最後の4日間』がリーマンショックを内側から描いたドラマだとすれば、『マネー・ショート』は外から描いた作品だ。

サブプライムローン問題が表面化する前の2005年、あるヘッジファンドマネージャーが住宅相場の不可解な動きに気づいた。

調査の結果、彼は住宅バブルが崩壊し、世界的な金融危機が起こるのは時間の問題だと予測するが、周囲は耳を貸さない。

バブル崩壊に賭けて動き出した彼と、彼の動きを察知し同じ結論にたどり着いた金融トレーダー3人。彼らは2008年、アメリカ経済が大混乱に陥るなか、4000億円もの利益を叩き出す。

映画の冒頭に引用された、作家マーク・トウェインの「厄介なのは知らないことじゃない。知らないのに知っていると思い込むことだ」という言葉が印象的。また、徳永英明の名曲「最後の言い訳」が流れるシーンもあり、痛烈な皮肉として耳に残る。

原作は、投資銀行出身の作家マイケル・ルイスが書いた実話『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』。 ルイスは、メジャーリーグのアスレチックスが統計学的手法を用いて強豪チームにのし上がるまでを描いた映画『マネー・ボール』の原作者でもある。

主な配信サイト:Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、Hulu(2023年9月15日現在)

『ノマドランド』

『ノマドランド』予告編

20世紀スタジオ、2021年公開

リーマンショックは、人々の生活に大きな爪痕を残した。

先述の映画『マネー・ショート』によれば、アメリカ国内だけで800万人が失業し、600万人が家を失ったという。

『ノマドランド』はその1人、臨時教員だった女性を描いたロードムービーだ。

リーマンショックのあおりで職も住まいも失った主人公は、車上生活を送りながら季節労働の現場を渡り歩く「ノマド(放浪の民)」として生きることを決意する。

向かった先はAmazonの配送センター。彼女はそこで自分と同じ境遇の人々と出合い、ノマド初心者向けのブートキャンプ(講習)があることを知る。

原作は、アメリカのジャーナリスト、ジェシカ・ブルーダーのルポルタージュ『ノマド 漂流する高齢労働者たち』。2000年代に出現したアメリカの新しい貧困層の姿を浮き彫りにし、大きな反響を呼んだ。

リーマンショック後にガス自殺を考えたという女性、「社会から放り出された」者同士で助け合うしかないと語りかける、自身もノマドのブートキャンプ主宰者……。

映画には実際のノマドが数多く出演。原作には登場しない架空のキャラクター(主人公)を通した彼らの生きざまは、胸を打つと同時に、リーマンショックが引き起こした深刻な社会のひずみを映し出している。

主な配信サイト:Amazonプライム・ビデオ(レンタル)(2023年9月15日現在)

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