モルガン・スタンレーの最高投資責任者(CIO)は、2024年の株式投資について慎重を期するよう投資家に警告します。
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地政学的対立、先行き不透明な米大統領選挙、米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%を上回るインフレ率……それら全ての要因から、2023年10月末から続いてきた上昇相場にも陰りが感じられ、年始早々の株価下落は調整局面の始まりではないかと指摘する声もある。
しかし、実のところ投資家たちはそんな話には全く興味がない。
パウエルFRB議長が12月13日の記者会見で、「利下げの時期こそ次の問題であり、それを検討し、議論している」「政策抑制をいつ縮小し始めるのが適切かという問いが視野に入りつつある」(ロイター、12月14日付)と語ったことを、投資家たちはFRBのハト派転換のサインと受け止め、狂喜乱舞した。
S&P500種株価指数は会見直後から最終取引日の29日まで4700〜4800という高水準で推移し、史上最高値を更新する勢いを見せた(年始2日間は続落、1月3日の終値は4704)。
米金融大手モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン最高投資責任者(CIO)は、現在市場を覆っている高揚感に理解を示すだけでなく、FRBには市場予想より早い段階で利下げに踏み切るだけの理由があるとまで考えている。
ウィルソン氏は12月の顧客向けメールで以下のように指摘した。
「インフレ率はFRBの想定通りに低下軌道をたどっているように見えます。当社が注目するいくつかのミクロデータを基に考えると、実際のインフレ率は公表されている統計上の数字よりさらに抑えられています」
ただし、パウエル議長は前述の会見で「勝利宣言は時期尚早」(同前)とも語り、再度の利上げの可能性を排除しないスタンスを見せている。
FRBが置かれた足元の状況はそのくらい微妙で、困難なものだ。利下げに踏み切るまでの時間を長く取り過ぎれば、2023年初頭にウォール街のほぼ全ての専門家たちが予想していた景気後退入りを招くことになるかもしれない。
「それでも、FRBのリスクバランスは引き締めより緩和に、つまりインフレより成長鈍化の方が大きなリスクとの見方に傾いており、それは投資家にとって歓迎すべきニュースと言えるでしょう。
実際、FRBのハト派的な見通しに対する債券市場の反応、例えばブレークイーブンインフレ率(市場が予想する期待インフレ率)が2%強と良好に推移していること、債券利回りも利下げが市場に織り込まれるにつれて低下を続けていることなどが、投資家の受け止めを示しています。
別の言い方をすれば、市場はFRBの政策が間違っていないと考えていることが見て取れるのです」
投資家の期待は高まるものの、インフレ率はFRBの目標(2%)を上回る水準が続くことから、2024年は(インデックスファンドに資金を投じて放置するのではなく)個別銘柄を選択して投資する戦略に勝機があるとウィルソン氏は考えている。
同氏は投資家の銘柄選別の参考材料として、米株式市場の時価総額上位1000銘柄の中から、フリーキャッシュフロー(FCF)利回りで上位20%、1株当たり利益(EPS)成長率で上位20%、なおかつモルガン・スタンレーのアナリストチームが投資判断を「オーバーウェイト」とする銘柄のみから成るリストを作成した。
以下に32銘柄のリストを掲載する。各銘柄の分類されるセクター、業界、時価総額も付す。
コムキャスト(Comcast)
[セクター]通信サービス
[業界]メディア・エンターテインメント
[時価総額]1686億ドル
マッチ・グループ(Match Group)
[セクター]通信サービス
[業界]メディア・エンターテインメント
[時価総額]88億ドル
ライブネーション・エンターテインメント(Live Nation Entertainment)
[セクター]通信サービス
[業界]メディア・エンターテインメント
[時価総額]192億ドル
ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)
[セクター]通信サービス
[業界]電気通信サービス
[時価総額]1611億ドル
ボルグワーナー(BorgWarner)
[セクター]一般消費財
[業界]自動車・部品
[時価総額]79億ドル
USフーズ(US Foods)
[セクター]生活必需品
[業界]生活必需品流通・小売り
[時価総額]108億ドル
EQT
[セクター]エネルギー
[業界]エネルギー
[時価総額]164億ドル
バレロ・エナジー(Valero Energy)
[セクター]エネルギー
[業界]エネルギー
[時価総額]427億ドル
エンリンク・ミッドストリーム(EnLink Midstream)
[セクター]エネルギー
[業界]エネルギー
[時価総額]63億ドル
シェニエール・エナジー(Cheniere Energy)
[セクター]エネルギー
[業界]エネルギー
[時価総額]434億ドル
マラソン・ペトロリアム(Marathon Petroleum)
[セクター]エネルギー
[業界]エネルギー
[時価総額]5774億ドル
カーディナル・ヘルス(Cardinal Health)
[セクター]ヘルスケア
[業界]ヘルスケア機器・サービス
[時価総額]264億ドル
マッケソン(McKesson)
[セクター]ヘルスケア
[業界]ヘルスケア機器・サービス
[時価総額]626億ドル
CVSヘルス(CVS Health)
[セクター]ヘルスケア
[業界]ヘルスケア機器・サービス
[時価総額]874億ドル
ユナイテッド・セラピューティクス(United Therapeutics)
[セクター]ヘルスケア
[業界]製薬・バイオテクノロジー・ライフサイエンス
[時価総額]113億ドル
ハロザイム・セラピューティクス(Halozyme Therapeutics)
[セクター]ヘルスケア
[業界]製薬・バイオテクノロジー・ライフサイエンス
[時価総額]51億ドル
カーチス・ライト(Curtiss-Wright)
[セクター]資本財
[業界]資本財
[時価総額]82億ドル
デルタ・エアラインズ(Delta Airlines)
[セクター]資本財
[業界]輸送
[時価総額]237億ドル
ユナイテッド・エアラインズ(United Airlines)
[セクター]資本財
[業界]輸送
[時価総額]129億ドル
アナログ・デバイセズ(Analog Devices)
[セクター]情報技術
[業界]半導体・半導体装置
[時価総額]91億ドル
マイクロチップ・テクノロジー(Microchip Technology)
[セクター]情報技術
[業界]半導体・半導体装置
[時価総額]451億ドル
ジェン・デジタル(Gen Digital)
[セクター]情報技術
[業界]ソフトウェア・サービス
[時価総額]141億ドル
フォーティネット(Fortinet)
[セクター]情報技術
[業界]ソフトウェア・サービス
[時価総額]404億ドル
ピュア・ストレージ(Pure Storage)
[セクター]情報技術
[業界]テクノロジーハードウェア・機器
[時価総額]104億ドル
UDR
[セクター]不動産
[業界]不動産投資信託(REITs)
[時価総額]109億ドル
ゲーミング・アンド・レジャー・プロパティーズ(Gaming & Leisure Properties)
[セクター]不動産
[業界]不動産投資信託(REITs)
[時価総額]125億ドル
サイモン・プロパティ・グループ(Simon Property Group)
[セクター]不動産
[業界]不動産投資信託(REITs)
[時価総額]407億ドル
アトモス・エナジー(Atmos Energy)
[セクター]公共事業
[業界]公共事業
[時価総額]169億ドル
ネクステラ・エナジー(NextEra Energy)
[セクター]公共事業
[業界]公共事業
[時価総額]1200億ドル
PPL
[セクター]公共事業
[業界]公共事業
[時価総額]193億ドル
パブリック・サービス・エンタープライズ・グループ(Public Service Enterprise Group)
[セクター]公共事業
[業界]公共事業
[時価総額]311億ドル
ビストラ(Vistra)
[セクター]公共事業
[業界]公共事業
[時価総額]127億ドル