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本居宣長、死の4日前記す? 高林家伝来の書簡展示 浜松・中央図書館

2021年4月23日 16時00分 (4月23日 16時01分更新)
高林家に伝わった、本居宣長が記したとされる書簡=浜松市中区の市中央図書館で

高林家に伝わった、本居宣長が記したとされる書簡=浜松市中区の市中央図書館で

  • 高林家に伝わった、本居宣長が記したとされる書簡=浜松市中区の市中央図書館で
  • 高林家の資料を紹介している展示=浜松市中区の市中央図書館で
 江戸時代の国学者本居宣長が死の四日前に記した書簡とされる資料が、浜松市中区の市中央図書館に所蔵されている。弟子の高林方朗(みちあきら)を出した東区有玉南町の高林家に伝わったもので、尾張の版木師に宛てた書簡の写しとみられる。開催中の「高林家文庫資料展」で初めて展示している。 (高橋雅人)
 資料は縦一五・五センチ、横二十六センチ。年号の記載はなく、九月二十五日付。十七日ごろから風邪をひいて食欲がなく、大いに弱って何もできないとし、急ぎで頼まれていた和歌の添削は養子の大平(おおひら)に任せたと伝えている。宣長は一八〇一(享和元)年九月二十九日に七十二歳で死去しており、同年のものであれば死の四日前に記されたことになる。
 一九五四(昭和二十九)年に高林家から同館に寄贈された資料の中の一つで、高林家が入手した経緯は不明。弟子の方朗宛てだった可能性もあるが、展示を担当した鳥居正俊さんは「高林家は明治になって書画などを収集していた」として、後年に入手した可能性もあると指摘する。
 一方、浜松で所蔵されている書簡(資料)と同じ文面が、八七年に刊行された「本居宣長全集 書簡集」の中にある。本居宣長全集では、「古事記伝」の出版に尽力した尾張の版木師植松有信に宛てた一八〇一年九月二十五日付の書簡として紹介されている。そこには宛名も記され、現物は愛知県春日井市で有信の子孫が所蔵しているとする。
 本居宣長記念館(三重県松阪市)によると、宣長の書簡で現存するのは千二百通ほど。複写したものも出回り「晩年の宣長は有名になっているので、有名人の物を手元に置いておきたいという思いで、同じ内容のものが写されることもあった」と説明する。
 高林方朗は宣長を敬愛し、一八一三年に開催した十三回忌にあたる十三年霊祭では、自ら神主を務めたほど。弟子の間で最後の書簡が共有されていた可能性もある。資料展は五月二十三日まで。二〇一三年に高林家から新たに寄贈された資料を中心に二十三点を展示している。

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