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4歳からキッズモデルを始め、15歳で人気ファッション誌にスカウトされて以来、多くのメディアで幅広く活躍している人気モデルの浦浜アリサさん。そんな彼女が手書きのメッセージと共に、最近までコンプレックスと闘ってきたことをInstagramで明かし、話題を呼びました。

苦しかった時期を乗り越え、現在30歳になったアリサさんは、自身のコンプレックスと向き合い、等身大の自分をさらけ出して生きていこうと決意したそう。そんな彼女に、どうやってありのままの自分を受け入れられるようになったのか、じっくりとお話を聞かせてもらいました。

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――コンプレックスを感じるようになったのは、いつからですか?

思春期からつい最近まで、ずっとコンプレックスと闘ってきたかもしれないですね。モデルとして仕事が増えたり、大きな仕事を任されれば任されるほど、“モデルとしての自分”にしか価値がないような気がして。プライベートに戻ったときの自分はあまりに普通の人間すぎて、「無価値なのでは?」と悩み始めてしまいました。

――モデルの仕事とコンプレックス、どう折り合いをつけてきましたか?

ずっとそのせめぎ合いで、20代は本当にしんどかったです。私は芯が強くて、しっかりしてそうという印象を持たれがちで。“浦浜アリサ”は明るくていつもハッピー、でも服を着たらクールみたいな。みんなが求めるイメージ通りに頑張ってしまう自分がいました。

もちろんそれも本当の自分でそんな自分も好きですが、陰の部分は見せられないと隠している感じはありましたね。外では光の部分だけを見せている分、家に帰ってひとりになった瞬間、「本当の自分はどっちなんだろう?」という悩みが積み重なって、疲弊していた20代でした。

――“ある日誰かの一言”で解放されたとありましたが、そのときはどんな気持ちでしたか?

私の三白眼が好きと言ってくれたのは、共に歩んで13年になるマネージャーです。まるで催眠術をポンと解かれたような感じでした。コンプレックスの崩壊はこんな簡単なものなのかと、本当にビックリしました。

同時に人の言葉の力はすごいと感じましたね。たった一言で人生救われる人もいるし、たった一言で何年も苦しんでいる人もいる。私の場合は、誰に言われたのか思い出せないくらいなのに、言葉だけが根強く残ってしまったんです。私は、人からかけらられた1の言葉を10で受け取ってしまう繊細な部分があるみたいで。人との境界線がすごく淡くて、言われたことを深く掘りすぎて、どんどん解釈をねじ曲げて、自分で自分を傷つけてしまうんです。

特にSNSが発達した今、目に見えない人から届く言葉が多いので、言葉の力はよくも悪くも力があると実感しています。コメント欄にたった1件入っているような誹謗中傷は、肌でいうニキビだと思ってるんですよ。

たった1個でもできたら、そこにしか目がいかないし、このニキビのせいでその日の気分が下がってしまう。でも本当はケアの方法はいくらでもあるし、時間が経てばなくなるものだから放っておけばいいのに、なぜか気になりますよね。

――このタイミングで気持ちをオープンにしようと思ったのは、なぜですか?

今までは人からよく思われたくて、輝いている部分だけをなるべく見せて、不都合な部分はなるべく隠すというという概念に縛られてきました。けど“隠すことは美しさではない”ということにやっと気付いたからです。

あとは年を重ねたことも大きいかもしれませんね。30代前後は一番大きく価値観が動くときですし、コロナ禍という時代の変化も同時にあったので、意外とベストなタイミングで考え始めたように思います。

「私もみんなと同じ人間だし傷つくこともある。気持ちわかるよ」とどんなに言っても、「いやいや、悩みなんてないんでしょ?」と言われてしまうこのフィルターを取りたかったんです。

特殊な仕事はしているけど、決して特別な人間ではないですし、むしろ人の悩みや痛みを聞けば聞くほどわかるから、自分の気持ちをシェアしたくて。手書きのメッセージは、「みんな大丈夫、私だってそうだよ」という気持ちで書きましたが、泣きましたというコメントも多くいただいて…。こんなにも反響があるとは思ってもいませんでした。

――作品に込めた想いやメッセージを教えてください。

自分の理想としている姿になるために努力は必要だと思いますが、完璧な人なんていないし、完璧でないからこそ美しいものは世の中にいっぱいある。

「これこそが完璧!」という自分の理想にしがみついているだけで、完璧を目指す意味なんてないのかなと。違うからこそ美しいこともあるし、「みんなと同じにならなきゃという固定概念はなくそうよ、そうすれば楽だよ」ということを伝えたかったですね。

私の癖毛もそうですが、生まれ持ったものは誰にとっても個性で、それが好きでも嫌いでも他の人にはないもの。生まれ持ったものをそのまま愛することが、メンタルヘルスのファーストステップ。まずは自分を愛すること、セルフケアからですよね。

――コンプレックスの崩壊後、どうやってご自分を立て直しましたか?

自分を変えたいと思ったのは、コンプレックスの原点を振り返ったとき、自己肯定感がものすごく低いことが根本にあると思い至ったからです。家族や友達に愛されて、仕事でもまわりに大切にされていることはもちろんわかっていましたが、自分を愛せていないことがずっと悩みでした。

自分のことを愛してない人は、人にも本当の愛を与えられないし、自分のことを信じてない人が、人のことを心から信じるのは難しいですよね。まず自分をいたわるからこそ、人との接し方もわかるのかなと思い、自分のことを愛したいなというところに落ち着いたんですよ。それから全部が動き始めました。

――今はどうやって自分を愛することができているか教えてください。

私も最初はどうしていいかわからなかったけど、たどり着いた私の答えは「口に出して自分を褒めてあげること」なのかなって。たった一言で私が救われたように、人にかけられる言葉の力がすごいなら、自分にかける言葉の力も同じだけパワーがあると思うんです。

たとえば大きなミスをして上司に怒られたけど、その失敗を巻き返したなら「私、エライ!」みたいな感じで、どんなにねじ曲げてもいいから、寝る前にプラスの言葉を自分にかけてあげる。何でもモノは捉えようだと思うんですよ(笑)。

欲している言葉を、人から言われるのを待ち続けるより、自分で声をかけてあげたほうが手っ取り早いと思います。それにハッピーな気持ちでいることができれば、人からとやかく言われても受け流せると思うんです。結局、自分自身をご機嫌にできるのは自分しかいないから。

――髪を切ったのは、気持ちを切り替えたいと思ったからですか?

実は前々からヘアドネーションをしたくて、髪を切ろうと思っていたんです。頭髪に悩みを持つ18歳以下の子どもたちに、医療用ウィッグを無償で提供しているJapan Hair Donation & Charityという団体があって。切ったら捨てるだけの髪の毛が、誰かの役に立つならと思って寄付をしたいと考えていました。

31センチ以上という規定があったので、そこを目指して伸ばしていたのですが、何度も心折れかけましたよ。自分のためだけだったら、とっくに切っていました。本当に微力ですけど、自分のハッピーが誰かにとってのハッピーになる、そう思えたからできたことだと思います。

――チャリティだったんですね。同時にご自身も髪へのコンプレックスとさよならできましたか?

毎年6月になると、縮毛矯正のストレートパーマを受けていたんです。4、5年前に、今の美容師さんに担当が変わったのですが、「今年もよろしく!」のつもりで美容院へ行ったら、「もう縮毛矯正はやめたら? その癖毛、絶対に活かせるよ」と言われて。

学生時代から大変な思いをしてきた髪なので、「そんなはずはないでしょ」と思いましたが、プロが言うなら一回信じてみてもいいかもと思って、伸ばし始めました。それにショートヘアには一生できないと思っていたんですよ。ただ傷んでいるみたいな毛質でずっと悩んできて、ロングの重さでどうにか収まっていると思っていたので。切るときも不安でしたが、こんな綺麗にまとまる癖毛だったとは知らなかったです!

――長年の悩みから解放されて、いかがでしたか?

人の価値観を本当に変えちゃうんだって思って、さすがだなと思いました!友達にはもはやロングが思い出せないくらい似合っていると言われますし、むしろ癖毛だと気付かない人も多いですよ。

実際その美容師さんのところに、私の画像を見せて、このパーマをかけたいと言う人がいるらしくて。私がずっと悩んでいた“コレ”になりたい人がいるなんて…!」って、やっとこのコンプレックスから解放されたんですよね!

自分の持っているものが見方を変えるだけで、コンプレックスになるのか強みになるのか。月並みな言い方ですが、それを体現できたかなと思います。

――コンプレックスを克服したことで、ご自分の中にポジティブな連鎖が起きていると感じますか?

正直ずっと自分のことだけを考えて生きていたので、その矢印が全部外に向いた感じですね。そうなればなるほど、うれしい言葉やさりげない心遣いなど、人から返ってくる矢印もだんだん増えて、SNS上だけでない生の“いいね”を、受けることも渡すことも多くなった気がしています。

ヘアドネーションで、見えない誰かに喜んでもらうことをひとつ達成できたのも大きかったです。もともとサステナブルなことに興味がありますし、自分のひとつのアクションで誰かが幸せになっていくような行動をもっと増やしていきたいですね。

――仕事面での今後の目標を教えてください。

お芝居も好きなので、役者にももっとチャレンジしていきたいですね。それにラジオでナビゲーターもやっているのですが、言葉を伝えることも楽しいので、これからも継続してやっていきたいと思っています。

モデル業については、せっかく得たこの経験や知識を自分の中だけで持っておくのは違うかなと思い始めて、モデルを育成することにすごく興味を持つようになりました。引退したらやりたいなとぼんやり思っていたのですが、これは現役のうちにやるべきなのではないかと。

それがワークショップなのか、ゆくゆくはスクールになるのかはわからないですが、“現役モデルが教えるモデルスクール”に今、トライしようとしています。ウォーキングやカメラ前のポージングなど、技術的なことはもちろん、栄養学やトレーニング方法、ファッションの歴史などについて学べる場を提供できたらと思っています。

コロナ禍の中で大変なことを始めてしまったのはわかっていますが、直感型で考えているよりやってみようというタイプ。とはいえビビリで腰も重いのですが、「同じところにとどまっていても意味がないぞ」と、時代に後押しされた感じですね。

――では最後に、悩みやコンプレックスを抱えている人にメッセージをお願いします。

私でいうと目も髪の毛もそうですが、努力で変えられないものは絶対にありますよね。生まれ持ったから、それで生きていくしかないのに、悩んでくよくよするくらいなら、受け入れたほうが絶対にいい。自分だけに与えられた個性だから、消すのではなくて活かしてみてほしいな、と思います。

SMAPも歌っていましたが、セロリを好きな人もいれば嫌いな人もいるように、自分はとにかく嫌いなところでも、他の人はすごくうらやましいと思うかもしれないですよね。個性は自分にしかない武器! ないものねだりしていても仕方ないから、見る角度を変えて、愛していこうよと伝えたいです。


■浦浜アリサ

公式ホームページ

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Photographer:YOSHIHIRO SASAGUCHI
Hair:TAKASHI ONOZAKA