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DIPROニュース

2005

11月号

2005.11.10

大きく進んだFEM「非構造型6面体メッシャ」開発

国際会議で注目を浴びたDIPROの論文

非構造型6面体メッシュ

3次元有限要素法解析(FEM)においては,6面体要素の方が4面体要素より優れた結果が得られるとされており,特に流れ解析では必須とされています。しかしメッシュ生成が難しく,「金太郎飴」のように押し出す方向の形が一定の「構造型」を組み合わせて,手切りされる6面体メッシュはメッシュ生成に大きな工数が発生しているのが実情です。

そこで,自由度が高くメッシュ作成工数を削減できる「非構造型6面体メッシャ」開発が世界各地で続けられていますが,実用化に成功していません。

今年9/13~9/15に米国San Diegoで世界最大のメッシング学会「第14回国際メッシング円卓会議」が開催されました。ここでDIPROは,東京大学,米国Sandia国立研究所と共同で「非構造型6面体メッシュ生成の基礎理論と実現方法」の論文を発表し,注目を浴びました。

6面体メッシュ位相生成問題を解決

6面体メッシュ位相生成問題を解決

Schneidersのピラミッド

6面体メッシュ位相生成問題を解決

表面が偶数個の4辺形メッシュで覆われる立体内部は内部を6面体メッシュで分割可能であることは証明されています。しかし,具体的な実現方法は知られておらず,Schneiders の未解決問題と呼ばれています。

6面体メッシュの内部では6面体要素は層を形成し,「内部曲面」と対応させることができます。三つの「内部曲面」の交点に6面体を配置すれば6面体メッシュを生成できることに着目します。

私たちは,位相数学における位数の理論を応用して,「内部曲面」を掃引面あるいはメビウスの帯(十字帽)の連結体として構成する方法を見いだしました。「内部曲面」の生成法が分かれば,DIPROが得意とするCADの技術を用いて「内部曲面」を生成し,その交点と配置を求めることができます。この方法で6面体メッシュの位相を生成できることを示し,6面体メッシュ位相生成問題の一つの一般解,「内部曲面直接配置法」を提案しました。

Schneidersのピラミッドは表面が16個の4辺形で覆われた4角錐です。この内部を6面体で埋め尽くす問題は,6面体位相生成の代表問題として知られています。私たちは,「貫通穴」と3重点をもつ向き付け可能な曲面が,この問題を解決する内部曲面であることを突き止めました。

この曲面を用いてSchneidersのピラミッドは,146個の6面体によって矛盾なく埋め尽くすことができることが分かり,「内部曲面直接配置法」は6面体メッシュ位相生成問題の一つの一般解であることが実例をもって示されました。

しかしこの解はJacobianが正になりません。したがって,Schneidersのピラミッド(の少なくとも一つの解)は,6面体メッシュ生成の位相解は存在しても,実用解が期待できない表面4辺形メッシュである代表例であることを私たちは示しました。

非構造型6面体メッシャの開発方針を転換

非構造型6面体メッシャの開発方針を転換

私たちは,従来のように「任意の表面4辺形メッシュを入力とする」のではなく,逆に「実用的な6面体メッシュが得られる表面4辺形メッシュ生成する工程を入れるべきである」ことを強調しました。従来の非構造型6面体メッシュ生成の研究は,立体表面に与えられた4辺形メッシュを入力としましたが,事実この開発方針は結果的に成功していません。

「第14回国際メッシング円卓会議」のもう一つの重要な論文は,米国Sandia国立研究所が発表した「非拘束型6面体メッシュ生成」に関するものでした。この論文の注目すべき点は,表面4辺形メッシュを拘束せず,6面体メッシュが生成可能な表面4辺形メッシュを生成する工程を含むことです。例えば右下図のハッチ無しの部分は,左下に示すように前線前進法によって6面体の層生成が可能であることが保証されています。残ったハッチの部分を適切なテンプレートで6面体の層が形成できるようにすれば6面体メッシュが作れると言うものです。私たちが提案する方法とこの方法の違いは,CAD技術を利用するかどうかだけです。

進むプロトタイプ開発

米国Sandia国立研究所は「非拘束型6面体メッシャ」のプロトタイプを作成し,若干の成果を第14回国際メッシング円卓会議で発表しました。一方,私たちはCADをベースにした「内部曲面直接配置法」による6面体メッシュ生成システムのプロトタイプを試作中です。DIPROは,CADに対する豊富な実務経験を持っており,非構造型6面体メッシュ生成システムの実現は意外に早いかも知れません。

(第一開発部 CSE 工学博士 鈴木 建彦)

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