新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、2023年5月8日に2類相当から5類に移行し、行動制限に関する法的根拠がなくなりました。5月の大型連休も各地でにぎわいをみせ、「今年の夏休みはそろそろ海外旅行にでも」と思っている人も多いかもしれません。
改めて思い返してみると、人気の観光エリアや歴史的建造物の周辺、有名な美術館はどこも混雑して疲労困憊(こんぱい)が予測できるでしょう。それでもそんな中、インスピレーションや出会いを求めて芸術を求めに行く人もいれば、知識を蓄積するために訪れる人も少なくないでしょう。とは言え、海外の有名な美術館をめぐっても、もともと知識のあるお目当ての美術品ならともかく、日本語解説がない展示もあり、ただ眺めて知ったようなふりで終わってしまうなんてこともちらほら…。とあれば、ストレスフリーで国内でゆっくり過ごせる名案はないでしょうか?
日本国内にいても、実際に現地(スペイン)にいる旅行気分を味わいながら、知識を身に付けられる選択肢があります。それが、「ガウディとサグラダ・ファミリア展」です。東京(東京国立近代美術館)を皮切りに、 滋賀、愛知へ巡回予定とのこと。
スペイン、カタルーニャ地方のレウスに生まれ、バルセロナを中心に活動した建築家アントニ・ガウディ(Antoni Gaudí/1852-1926)。バルセロナ市内に点在するカサ・ビセンス、グエル公園、カサ・バッリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリア聖堂など世界遺産に登録された建築群は、一度見たら忘れることのできないそのユニークな造形によって世界中の人々を魅了し続けています。
ガウディの独創性は、西欧のゴシック建築やスペインならではのイスラム建築、さらにカタルーニャ地方の歴史や風土など自らの足もとを深く掘り下げることで、時代や様式を飛び越える革新的な表現に到達したことにあります。
今回開催されるガウディ展は、長らく「未完の聖堂」と言われながら、いよいよ完成の時期が視野に収まってきたサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞り、この聖堂に即してガウディの建築思想と造形原理を読み解いていくものとなっています。
図面のみならず膨大な数の模型をつくることで構想を練り上げていったガウディ独自の制作方法に注目するとともに、「降誕の正面」を飾る彫像も自ら手掛けるなど建築・彫刻・工芸を融合する総合芸術志向にも光を当て、100 点を超える図面、模型、写真、資料に最新の映像をまじえながらガウディ建築の豊かな世界に迫る展覧会となっています。
ここまで、ガウディやバルセロナ市内の魅力を説明されてしまったら…「百聞は一見に如かず」、やはり現地におもむいて実際に肌で感じなければと思った人もいるかと思います。
とあれば、本展覧会は予習として活用してみてはいかがでしょうか。知識をつけたうえで訪問すれば、自ずと観たいディテールが分かり、楽しみ方も広がることでしょう。現地では観ることのできない高精細映像やドローン映像も展覧会の魅力のひとつです。夏休みは国内派はもちろん、海外派の両者へおすすめしたいと思います。
《ガウディとサグラダ・ファミリア展》
- 会期:2023年6月13日(火)~9月10日(日)*会期中一部展示替えあり
- 会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
- 開館時間:10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
- 休館日:月曜日(ただし2023年7月17日は開館)、7月18日(火)
- 巡回情報:2023年9月30日(土)~12月3日(日)佐川美術館
2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)名古屋市美術館
展覧会公式サイト