「カレー用」と名の付く福神漬はなぜ赤くないのか?
「しんしん」の(左)普通の福神漬と(右)カレー福神漬
カレーと言えば福神漬、福神漬と言えばカレー。というくらい、両者は切っても切れない関係。
代表的な福神漬といえば「赤色」だと思う筆者、ある日スーパーでふと気づいた。なぜか「カレー用」と名の付く福神漬は、どれも赤くない。茶色やオレンジ色ばかり。いったいどうしてなのだろう。

調査を始めてすぐに分かったのは、福神漬、元々は赤くなかったということ。福神漬を発案した東京・上野の漬物店「酒悦」さんによると、福神漬が初めて作られたのは明治10(1877)年頃。
流行作家の梅亭金鵞(ばいていきんが)氏が、七つの野菜が含まれることと、店にほど近い不忍池・弁天様にちなんで「福神漬」と名付けたという。純粋な醤油の茶色だったそうだ。戦後になって、チャツネ(インドでカレーの添え物にする漬物)にならって赤く着色するようになったのではないか、とのことだが、資料が残っておらず真相は不明。がともかく、以降、「福神漬は赤色」が一般的になったようだ。

では、「カレー用」が赤くないのはどうしてか。漬物の製造・販売を手がける、やまう株式会社さんに尋ねてみた。

「『カレーライスと調和する味付けと色』をコンセプトに、昭和44(1969)年、当社が業界で初めて、カレーライスに用途を特化した『カレー専用福神漬』を発売しました」
ルウの濃い茶色とご飯の白色との間に映える一方で、主張しすぎない色ということで、オレンジ色にしたという。
「発売当初は用途限定の商品名が受け入れられず、販売が伸び悩みました。しかし、2年後には高い販売実績を誇るようになりました。そのため各社が同様の商品を販売した結果、今ではカレー用の福神漬と言えばオレンジ色に定着しています」

「カレー専用福神漬」は、カレーとの相性を考え、普通の赤い福神漬よりもさっぱりとした、酸味の強い味付けにしているという。このあたり、らっきょうがカレーに合うことと共通するものがありそうだ。

しかし、やっぱり福神漬といえば、普通の赤い方が売れているのではないか……そう思う筆者、どっちが人気なのか尋ねてみた。

「『カレー専用』の方が若干人気のようです」
えっ、そうなのですか。「しんしん」の株式会社新進さんにも伺ってみたが、同様のお答え。健康ブームのせいもあってか、「福神漬は赤色」は、もはや常識ではない様子。元来の姿に戻ったというところでしょうか。
(R&S)

Yahoo!ショッピング-酒悦の贈り物-
やまう株式会社HP
株式会社新進HP