「多軌透」は『夏目友人帳』の登場人物で、妖怪への強い興味と関心を持った少女です。夏目が通う高校へ編入してきた時には他人との交友もありましたが、ほどなくして寡黙で人との関わりを避けるような生活を強いられるようになります。


 先祖が陰陽師をしていたことと、祖父が妖怪への強い関心を持っていたことに影響を受けて、多軌自身も祖父が残した陣を真似して書いた所、奇妙なものが陣を通過していくのを見て、これは妖怪なんだと認識するように。多軌はこの出来事をきっかけに、妖怪とのトラブルに巻き込まれることになりますが、「誰も巻き込みたくない」と孤独な戦いを強いられます。

 夏目との出会いによって多軌自身もかつての笑顔を取り戻し、それまで以上に解決に向けて乗り出していきます。今回は、そんなひたむきな想いを持つ「多軌透」の魅力に迫っていきたいと思います。

【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。


■孤独な戦いに挑む姿

 ある日、偶然にも陣を通った強力な妖怪を見てしまい、一年以内に捕まえなければ食い殺すという呪いを受けてしまいます。さらに、記憶を遡って最後に名前を呼んだ13人までを一緒に巻き添えにするというのです。このような状況でも、決して引かずに妖怪に挑む姿は、彼女の孤独と向き合う強さを感じます。そして、周りを巻き込まないために、今まで築いてきた人間関係を捨てなければならないことを考えると、彼女の芯の強さに心底感心させられます。

 呪いの成就までひと月あまりになった頃、陣を書いている途中で夏目と出くわし、過って名前を呼んでしまった多軌。陣を通った妖怪から夏目が妖怪を見ることが出来ることを聞き、協力してほしいと懇願します。
夏目は孤独な戦いをしてきた多軌の気持ちを察し、「勝つぞ」と、呪いを解くために尽力することになります。

■かわいいものが大好き

 夏目と出会った時、にゃんこ先生をみるやいなや「かわいい~!」と我を忘れて抱きつきます。本人曰く「可愛いものを見ると心が乱れてしまう」らしく、普段はブサイクちゃん、デブ猫などと言われているにゃんこ先生にとっても衝撃的なことでした。それからというもの、にゃんこ先生を見つけては抱きつくというパターンがお決まりになっています。

■夏目の友人として

 呪いを解いた後の多岐は、普通の女子高生としての生活に戻っていきますが、夏目が困難に出くわした時には彼女なりに協力しようとします。多岐の家に封印されていた妖怪の封印が解け、夏目がさらわれてしまった時には、かつて自分を苦しめる結果になった陣を持ち出して周囲に居る妖怪に助けを請うなど、夏目の力になりたいという意志が伝わってくる行動も。
また、物語を通して夏目のクラスメイトである笹田との親交も芽生え、行動を共にしている姿も度々見られるようになります。

 普通の人間として妖怪に関われる数少ない人間である「多軌透」。妖怪の容姿に対しても毎回驚きはするものの、すぐに受け入れる寛容な心を持ち、友人帳についても夏目に関わる人物の中で唯一その存在を知る人間でもあります(多岐は夏目の宝物と認識している)。そんな魅力溢れる「多軌透」の活躍、ぜひご自身の目でお確かめ下さい。

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★記者:もんきち(キャラペディア公式ライター)

(C)緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会